猫が死んだら訪れる場所、そこは猫の天国。ここでは次の新しい命を得るまでに一度、白猫に戻るという。真っ白な姿に戻った猫たちは「シャム猫がいいなぁ」など、次の新しい柄を楽しそうに話している。そんな死んだ猫たちが再び転生する未来を描いた『猫の柄の話』に「温かくていい話」、「自分の愛猫もそうだったらと思う」などのコメントが届いている。

【漫画】猫も転生する?

■天国で白猫に戻って神様から再び新しい柄を与えられる

真っ白な姿戻った猫の天国。そこに現れたのが、くまの姿をした「神様」だ。新しい柄をテーブルに置かれてボトルから選ぶことができるという。「俺は、シャム!」「俺はペルシャだ」と猫たちが次々に意見を言い合っている。

瓶の中にはそれぞれの遺伝子が入っていて、シロップをかけることで新しい姿になる。転生を迎えた猫にシロップをかけると、かっこいいハチワレになった。期待通りか新しい人生にワクワクしているのか、猫の足取りは軽い。そして、地上へ向かうトンネルをくぐった。

■「いつか生まれ変わって帰ってくるかも」という思いを込めて描いた作品

元々は「便利屋」をやっている白熊と、捨て子熊のお話「白熊便利軒」を描いている白熊便利軒ホセさん。本作はイベント出展用に描いた9ページほどの短編漫画だというが、猫を飼っている(飼っていた)人には、何度も読み返したいと心に響く声が多く届いている。今回、本作の制作の裏側について白熊便利軒ホセさんに伺った。

――猫の柄が選んだ瓶によって決められるというお話。もう一度、飼い主とつなげてくれる温かいエピソードにコメントが届いていますが、いかがですか? 

コメントについては「世の中に数多のSNS漫画がある中で、見つけてくれてありがとうございます」と五体投地しながら全て読ませてもらっています。愛猫を亡くした方から「うちもいつか帰ってくるといい」というコメントをいただくと、「帰ってきますよ」と思いながらコメントを返しています。

もう会えないと思っているより、いつか生まれ変わって帰ってくるかもと思って暮らしていた方が楽しいじゃないですか。作中に登場する「お前の縞々は世界で一番かわいいね」というセリフを気にいってくれて、ご自身の愛猫のお気に入りダンボールにそのセリフが書いてある写真を送ってくださった方もいました。

――死んだら一度白猫に戻るというのがとても面白いと思いました。今回、猫漫画を描こうと思ったきっかけがあれば教えてください。

猫が天国で一度白猫に戻るという設定のもとはラジオで猫の柄について研究している方のインタビューを聞いたのがきっかけです。猫は白毛が基本の色で、柄の遺伝子のシロップを耳や尻尾の先からたらして染まっていくという話でした。シロップがたっぷりだったら柄が満遍なく入るし、少し足りないと白足袋、半分ぐらいならハチワレになるというのがとても面白くて覚えていたのです。

作品を描こうと思ったのは、友達が長年一緒に暮らした愛猫を亡くしてしまった事がきっかけです。直接励ますのは恥ずかしかったし、おこがましいので、作品で何かできたらなと。なので主人公の猫は友達の愛猫と同じキジトラ(作中でいう”しましま”)猫なのです。

「前任者」の方は「猫の柄」と同じ世界で”猫の天国へ行きたくない子”を描いてみようと思ったのが発端です。猫がたまに空間を凝視している事がありますけれど、人には見えないものを見ているとしたら、仲間の幽霊なんじゃないかなと。妖怪は別として、人も人型以外の幽霊をあまり見ないですよね?なので猫も猫の幽霊を見ているのかな?と。

――「猫の柄の話」「前任者からの伝達事項」など猫にまつわる温かい話ですが、実際に飼っているんですか?

飼っていないのです…。夫婦二人暮らしなのですが、年に何回か数日、家に誰もいなくなることがあり、一緒にいないとご飯を食べないような子だと可哀想だなと――。仕事をリタイアして、家にいるようになったら保護猫と暮らしたいです。

――見どころやこだわったところがあれば教えてください。

「猫の柄」の方は、やはり猫が神様にお願いするシーンですね。あのコマを描きたいがために描いたようなものです。あの子は幸せだった記憶を思い出せて満足しているので、泣き笑いな表情をしています。

「前任者」の方はショート作品ですので、少ないセリフでどうやって去りたくない子の思いを伝えようかと。ただ、ぶっきらぼうなセリフでも猫なら違和感がないので、そこは助かりました。そういえば「背景がないのはこだわりですか?」と聞かれた事がありますが、違います。背景描けないんです。AI絵師が話題ですが女の子の美麗な絵より、いい感じの背景描けるようになって!と切に願います。私が背景を描けるようになるか、背景専用描画AIが開発されるか勝負です。

――その他にどんな漫画を描いていますか?

猫の漫画以外に人間の世界で「便利屋」をやっている白熊と、捨て子熊のお話「白熊便利軒」を描いています。そちらはAmazon Kindleインディーズマンガで電子書籍化していたり、BOOTHで紙の本を販売したりしています。どちらかというと熊漫画の方がメインなのです。

猫の漫画は「地上に帰りたい子」と「天国に行きたくない子」は描いたので、「地上に帰りたくない子」を描きたいと思っています。その他にもいくつかプロットがあるので、それらをまとめて猫の話だけの自費印刷本が出せたらと考えています。

猫の思いがこうだったら、と思いを馳せて読める愛らしさたっぷりの漫画は、温かい気持ちで満たされる。自分の愛猫を思い出して、何度も読んでみて欲しい。

取材協力:白熊便利軒ホセ(@sasadebris)

またしましまに生まれ変わりたいなぁ/画像提供:白熊便利軒ホセ(@sasadebris)