岡田将生が主演を務める「ザ・トラベルナース」(毎週木曜夜9:00-9:54※12月8日[木]放送の最終話は夜9:00-10:04、テレビ朝日系)の最終話12月8日(木)に放送される。その放送に先駆け、同ドラマで脚本を手掛ける中園ミホ氏にインタビューを行った。

【写真】美しすぎるフェイスライン…!「ザ・トラベルナース」で主演を務めた岡田将生

■「ザ・トラベルナース」とはどんな物語?

同ドラマは、手術場で医師を補助し、一定の医療行為を実施できる看護資格「NP(=ナース・プラクティショナー)」を持つ、一見感じが悪いけどアメリカ仕込みの優秀なナース・那須田歩(岡田)と、

柔らかすぎるほどの物腰なのに、ここぞという場面では痛烈な一言で理不尽な体制や思想を一刀両断する謎多きスーパーナース・九鬼静(中井貴一)が、患者ファーストで医療現場を改革していく痛快医療ドラマ。脚本は大ヒットシリーズ「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)の生みの親である中園氏が担当。

今回のインタビューで中園氏は、岡田将生演じる那須田歩のキャラクターや「ザ・トラベルナース」の誕生秘話などを語った。

■中園ミホ氏だけが知る「ザ・トラベルナース」の秘密

――歩と静というキャラクターはどのようにして誕生をしたのでしょうか?

歩くんと静さんは、岡田さんと中井さんをイメージしながら書いたことで生まれたキャラクターであり、完全に当て書きです。最初、打ち合わせをした時に、内山(聖子)エグゼクティブプロデューサーの方から「バディーものにしよう」とご提案いただきました。

「じゃあそうしよう」とは思ったのですが、私が書くドラマはキャラクタードラマが多く、キャラクターが“命”なので、「どういう人たちを書こうかな」と少し悩んでいました。

そんな時に、中井さんがオファーを受けてくださったと聞いて、そこから悩むことなくスムーズにキャラクターをイメージし、作り上げることができました。中井さんだからこそ、「普通の人」ではなく、ちょっと一筋縄ではいかない、くせ者のような人を演じていただきたいなと考えました。

ものすごく優秀だけど、性格的には皮肉屋だったり、いろいろなニュアンスを入れたいという思いを掻き立てられましたし、中井さんからイメージを触発された部分がすごく大きいです。

岡田くんに関しては、中井さんよりも早い段階で出演が決まっていました。格好いいナースであり、ヒューマンスキルも高いパーフェクト人間のようなキャラクターも作ろうと思えば作れたのですが、岡田さんを見ていたら、もう少し違う要素を入れたいなと思ったんです。

ちょっと生意気な部分だったり、その生意気な部分をへし折られるシーンが見たいなと思い、完成したのが現在の歩くんです。

――ここだけの秘密のお話があれば教えてください。

本当は裏設定として、歩くんは看護学校をトップで卒業してアメリカに留学までしたスーパーナースであり、顔もよくてルックスもいい、さらにはアメリカでも手術もしていたというのがあるのですが、日本で静さんと出会ったことで、おろおろしている姿がすごくチャーミングだなと思ったので、脚本を書いているうちに、翻ろうされる歩くんのシーンを増やしてしまいました(笑)。

■中園ミホ氏が取材の中で驚いたこととは?

――今回、女性ではなく男性ナースを描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

ナースの常識を覆したいという思いと、私自身が男性ナースのことをあまりよく知らなかったことが最初のきっかけかもしれません。今回、取材させていただいて、「逆差別」のようなことがあると知りました。

女性の患者さんは男性ナースに抵抗があるということを聞いて、「ナースというお仕事をするには、『男性』であるということがマイナスになってしまうのか」ということに衝撃を受けました。

逆に女性ナースの間では、男性ナースって大歓迎なんです。女性ではどうにもならない状況がたくさん起きるので、力もある男性ナースがもっと増えてほしいと思っていると取材で伺いました。

だけど、患者さんは抵抗があるんです。女性の患者さんはもちろん男性の患者さんでも、ナース=女性だと思っている所があるので、「何で男のナースが来るの?」と無意識に差別をしてしまっているようです。

取材をしていく中で、私自身、男性ナースがどれだけ役立っているかを知ったので、この作品では、視聴者の方にそれを分かってもらいたいなという思いが大きいです。私も取材をするまでは何も知らなかったので、「ザ・トラベルナース」という作品で男性ナースの必要性が世の中で認識されるきっかけになるといいなと思っています。

――取材の中で、一番驚いたことは何ですか?

体力的にすごく厳しい仕事だということです。きついシフトの中で精いっぱい働いて、どんなに疲れていても、いつも笑顔でいなければいけないし、白衣の天使でいなければいけないんです。ナースは常に「完璧さ」を求められているというリアルな部分にすごく驚きました。

――立場が弱い方の目線に立った作品を書かれている印象があります。そういった題材や人物を見つけるために、常にアンテナを張っているのでしょうか?

アンテナといわれるとちょっと違うかもしれませんが、「ハケンの品格」を書いた時、すごく取材をしたんです。毎週、派遣社員の皆さんとお酒を飲んで話を聞いていました。

取材で出会った派遣社員さんに、「お友だちの派遣さんを連れてきて」と頼み込んで、毎週金曜日の夜に取材をしていました。その頃の友だちや知り合いがたくさんいるんです。

彼女たちが、明日が見えないような状況で仕事をしていたり、大変な思いをしているのを間近で見てきたので、「どうしても彼女たちを元気づけたい」「ドラマを見て元気になってほしいな」と思って出来上がっているのが私のドラマなんです。

いつもドラマを作る時は、そういった誰かの背中をそっと押すような気持ちが前提にあります。なので、朝ドラを書く時も、大河を書く時も、彼女たちはどんな作品を見たら元気になってくれるかなと考えて書いていました。

ドクターX」もフリーランスでありつつ、めちゃくちゃスキルの高い大門未知子(米倉涼子)が、組織に入って、弱い立場の人を権力で抑え込もうとする「教授たちを黙らせる」くらいのスキルを持っていたら気持ちいいな、そして患者さんを救えたらいいなと思って書いた作品です。

■中園ミホ氏は「元気が出るドラマ」担当

――「ザ・トラベルナース」はどのような思いが込められていますか?

今回の「ザ・トラベルナース」では、男性ナースは必要なんだよという思いと、作品を見て男性も女性も関係なしに元気になってくれたらという気持ちで書いています。

女性ナースに比べたら、職場での肩身が狭かったり、患者さんにも「来ないで!」といわれてしまう彼らだけど、絶対に現場には必要なんです。患者さんにも、ドラマを見たことで、「こんなナースのいる病院に行きたいな」と思ってもらえたらいいなと。

一見、病院に行くというのはネガティブに聞こえてしまうかもしれませんが、病院に行くことで自分のことを相談できる誰かがいる、自分よりも自分を分かってくれる人ができるかもしれないし、皆さんにとって病院へ行くということが、ポジティブなイメージにつながっていたらうれしいです。

――病院嫌いな方っていますよね。

いますいます。岡田さんや中井さんをはじめ、「ザ・トラベルナース」のキャラクターがいたら病院にちゃんと通おうと思いますよね(笑)。あんなに格好いいナースさんがいたら、元気ももらえますし!

――中園さんの中では「元気になってほしい」という部分が作品を描く中での軸になっているんですね。

いろいろなドラマがあっていいと思いますし、脚本家の数だけドラマはあっていいと思っているのですが、私は、「元気になってほしい」「元気が出るドラマ」という担当です(笑)。

だからこそ、爽快感のあるスカッとしたストーリーや笑顔になれるようなドラマが多いです。そんなドラマを見て、少しでも皆さんに「明日も元気に会社へ行こう」と思ってもらえたらこれ以上の喜びはないです。

――多くの方が中園さんの作品に元気をもらっていると思います。そういった声は届いていますでしょうか?

お手紙をもらったりするので、皆さんの声は届いています。元気をもらいましたなどさまざまな感想をいただき、私自身も、皆さんから元気をもらっています。

――書いていて楽しかったキャラクターは?

歩くんも静さんも書いていて楽しかったですが、私は安達(祐実)さん演じる吉子さんが大好きで、書いていてすごく面白かったです! 私、ちょっとくせ者が好きなので、あんまり素直になれない吉子さんは特に筆が乗ったかもしれません(笑)。

あんなに仕事ができるのに、どこか欠落していていたりする歩くんのこじらせ方も好きなんです。謎過ぎてよく分からない静さんも、面白かったです。

みんな書いていて楽しかったですけれど、あえて一人挙げるなら吉子さんですね。私の頭の中で、どんどん動いてしゃべってくれる感じで。

――(笑)。安達さんも「第5話を読むまでは、吉子さんがどういうキャラクターなのか分からない」とおっしゃっていました。

最初は皮肉みたいなことしか言わないし、「(第2話で静へ向けたせりふ)ナースが患者殺すってよくありますよね」などの不吉な言葉を言うので、キャラクター的にすごくシニカルな人物。でもあの人もすごく仕事ができて、プロフェッショナル

一方で、過去に切ない話もあって、吉子の今につながっていたりするので、そういう所も含めて楽しんで書きました。

吉子さん以外も最終回に向かうにつれて、どんな人なのかが分かっていったかと思います。ナースって名前をすぐに覚えてもらうことってあまりないらしいんです。なので、ドラマでも最初はみんなまとめて白衣を着たナースだったと思います。

でも、回を重ねるごとに、「この人はこういう人」「こういう失恋をした」「こういう過去があった」と視聴者の皆さんが少しでもそれぞれのキャラクターについて詳しくなってくれていたらいいなと思っています。

■中園ミホ氏から最終話に向けたメッセージ

――医療ドラマだからこそ、難しいなと思う点はどこでしょうか?

医療ドラマは難しいですが、資料集めは「ドクターX」から一緒の医療チームがいるので、そこは皆さんにお任せしています。すごく頼りになる方々なので、私はそういったものをきちんと読ませていただいています。

私の取材は、医療ではなく人間関係などがメインです。一緒にご飯を食べてリラックスしながらお話を聞いたり、忙しい中にできた休憩時間をいただいてリモートで取材したりと、本当に参考になりました。

私の書くものは「お仕事もの」と言われることが多いのですが、「お仕事もの」ではないと自分では思っているんです。確かにテーマに仕事があるかもしれませんが、そこではなくて、仕事の先にいる仕事をしている人に興味があるので、その人たちがどんな悩みを抱えて、どんな葛藤があって、どんな人間関係のトラブルがあるのか、そういったことを描きたいなと思って書いています。

――内山さんとの関係性を改めて教えてください。

戦友ですね。「ナサケの女」(2010年、テレビ朝日系)からずっと米倉さんとの作品を一緒にやってきましたし、最近では木村文乃さん主演の「七人の秘書」(2020年、テレビ朝日系)をやりました。私が「やりたい」と思ったことを形にしてくれるのは彼女です。私にとって彼女は、かけがえのない存在であり、なくてはならない人です。

――視聴者の方にメッセージをお願いします。

このドラマを見たらポジティブな気持ちで病院へ行きたくなると思います。例えばナースの仕事という枠を越えてお世話になっているところとか、彼女、彼らが善意でしてくれているからこそ、日本の医療が成り立っているということを思い出してほしいなと思います。

ナースたちの人間ドラマになっていると思いますし、その中の誰かに自分を投影できるキャラクターがいるんじゃないかなと。またお仕事している人に見てほしいです。

歩くんと静さんの活躍をぜひ最後まで見届けてください。

「ザ・トラベルナース」脚本家・中園ミホ氏にインタビューを実施/(C)テレビ朝日