2022年、日刊SPA!で反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。恋愛・結婚に関する記事の中から、男女の駆け引きに注目。数々の体験談から選ばれた「恋愛」部門の第8位は、こちら!(集計期間は2022年1月~11月まで。初公開日2022年4月16日 記事は取材時の状況)
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 コロナ禍で人との関わりが減り、恋人をつくるのが難しくなったと感じている方も多いのではないでしょうか。

 そんななかで、「しかも僕は40代後半でバツイチ。たいしてお金があるワケでもないし、カッコよくもない」とため息をついていた井上貴博さん(仮名・47歳・会社員)だが、不意に“モテ期”がやってきたそうで……。いったい、なにがあったのか。今回は、そんな出会いのエピソードをご紹介しましょう。

子どもの頃に好きだった趣味に没頭

 貴博さんはここ5年程、子どもの頃や学生時代に好きだった漫画やアニメ、映画などのグッズフィギュアを収集するという趣味に没頭していました。

子どもの頃に手が届かなかったものが、やっぱり今でも心に引っかかっていて欲しいものなんですよ。手にした瞬間の喜びが半端ないんですよね」

 バツイチの貴博さんには子どもがおらず、「子どもの頃の自分におもちゃを買ってあげている感覚」とのことでした。

◆元妻との不仲の原因

 今から約10年前、貴博さんは36歳のときにひとつ歳下のN実さんと社内結婚しました。

「N実は、ファッションに無頓着な僕をおしゃれにしようとして、よく服や靴を買ってきてくれました。服は本当に何でもいいので言われるがままに着ていましたが、靴だけは学生時代からずっとコンバースオールスターの黒が好きで譲れなかったんですよね」

 同じスニーカーを何度も買ってきては、履き潰してまた買ってくる……そんな貴博さんの行動がN実さんには理解できなかったそうで、何度も喧嘩になったとか。

「僕が古いおもちゃや映画のグッズなど買い集めるようになったら、さらにN実の機嫌が悪くなっていったんですよ」

◆「ガラクタを全部捨てろ」

 貴博さんは、N実さんに怒られるのが怖く、隠れて買っていました。しかし、全部バレていたそうです。

「同世代の妻は常にアップデートしていて、現代の感覚で生きている。一方、過去に執着し続ける僕。呆れてしまったんだと思います。ある日突然、『あのガラクタを全部捨てて、気持ちを改めないなら離婚だ』と言われてしまったんです」

 貴博さんは悩みましたが、どうしても大事なコレクションを手放すことができず、2年前に離婚が成立しました。

◆気づけば“インスタ大好きおじさん”に

「離婚して部屋が広くなると、やはり寂しくて。その気持ちを埋めるかのように、さらにヤフオクメルカリ思い出の品を買い漁るようになっていきました」

 そして、コレクションが増えるたびにインスタグラムアップするようになりました。貴博さんにとって、それは日課でした。

「懐かしい物好きの同世代の仲間たちが次々とフォローやいいね!をしてくれたんです。それが嬉しくて、すっかりハマってしまいました。気づくと“インスタ大好きおじさん”になっていましたね(笑)

◆女性から好意的なコメントが…

 そんなある日、貴博さんは学生時代から好きだった楳図かずお先生の美術展に足を運び、その様子や感想、購入したグッズなどをインスタアップしたそう。すると、めずらしく女性と思われるアカウントからコメントが。それが、レトロ好きなA香さん(26歳・契約社員)でした。

「A香さんの『周りに楳図かずお先生の良さを語れる友達がいないので、美術展も1人で行きました。ホント最高でしたよね!』とのコメントに丁寧に楳図情報を入れつつ返信したら、とても感謝されて」

 さらにA香さんは「実は、ここにアップされているものは私の憧れのものばかりなんですよ」と貴博さんの過去の投稿にもいいね!コメントをいっぱいくれたそう。

「しかもA香さんは『ゴーストバスターズ』や『グレムリン』『チャイルドプレイ』など、昔の少しだけ怖くて可愛いキャラが出てくる映画が大好きだというので、リアルタイムで観てきた僕は語りたくてウズウズですよ(笑)

 インスタのDMで夜中まで映画談義で盛り上がった2人。

「僕がずーっと前から好きな作品を、すごく新鮮に面白がってくれて『あの映画最高ですよね!大好きなんです』って褒められると……なんだか自分のことを全肯定してもらえているような心地よい気持ちになってきて」

◆彼女とレトロ喫茶店に行くことに

 A香さんは、昔ながらの喫茶店クリームソーダナポリタンを食すという、貴博さんのもうひとつの趣味にも興味を持ってくれました。

子どもの頃からずっとナポリタンクリームソーダが大好物なんです。だから自分の好みに合う味を探して喫茶店巡りをするのが楽しみで。そういうときの写真もインスタアップしていたんです」

 そして「私も一緒に喫茶店巡りさせてくれませんか?」とお願いされた貴博さんは、少し戸惑いながらも、勇気を出して自分のいちばん気に入っている喫茶店に彼女を連れて行くことにしました。

◆趣味が合うことの大切さ

「初めてA香さんに会ったのですが、“聖子ちゃんカット”って言うんですか? あの懐かしいヘアスタイルにしていて。でもそれが、はつらつとした彼女にすごく似合っていて、かえって新鮮に感じました」

 A香さんは昔ながらの喫茶店特有の無駄にきらびやかな雰囲気を楽しんでくれたそうで、ナポリタンクリームソーダの写真を嬉しそうに撮りながらぺろっと完食。

「昔の映画や漫画の話もいっぱいして本当に楽しかったんですよね。年代関係なく趣味や感覚が合うのは大切なんだなと思いました」

 ただ自分の気に入っている店に連れて行き、趣味の話をしただけなのに……まるで若い女のコを相手に気の利いたデートができる男になったような気持ちになれたんだとか。

◆まさかの交際に発展

「それ以来、自然と毎日のように連絡を取り合う仲になり、付き合うことになりました」

 決め手はA香さんの「こんなに話の合う男性に出会えて幸せ」という言葉でした。

「離婚して以来、女性と接することに少し臆病になっていたのですが、A香さんと話していたら自信が湧いてきたんですよね。今はおそろいでコンバースオールスターの黒を履いています。照れ臭いですが、楽しくてしょうがないです」

 もしかしたら、あなたにも、世代は違うけれど、趣味がピッタリ合う恋人との出会いが待っているかもしれませんね。

<取材・文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラー棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。

―[2022年トップ10「恋愛」部門]―


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