2022年11月28日(月)、下北沢CLUB Queにて、第7回目となるGrasshopperが開催された。今回は、アカネサスとchef’sによる熱いツーマンを見に、学生から大人まで様々な人々が週頭からライブハウスに集まった。

アカネサス

ロックな曲調のSEと共にアカネサスのメンバーが登場する。初めに歌ったのはこの日出演予定だったサバシスター(※メンバー体調不良により出演キャンセル)の『ジャージ』のワンフレーズ。「アカネサスです!よろしく!」という威勢のいい掛け声でぐっと観客の温度も高まる。そうして始めた最初の1曲は『リアル』。愛(Gt/Vo)のストレートで勢いのある歌声がフロアに響く。サビの熱いシンガロングにつられて、観客の拳が突き上がった。2曲目の『愛ある世界』では、始まった途端に手拍子が起こる。声量がより上がってステージからあふれ出した熱気を観客が受け取る。

MCでは、はきはきと話す様子から愛のまっすぐさが窺えて、その人となりが歌のまっすぐさにも表れているように思える。次に演奏したのはこのライブで初披露となる新曲。歌のテーマはあまりよくない恋愛とのこと。それを表すかのように、ギターのアルペジオの音がたっぷりと歪む。少し怒りを含んだように、そして叫ぶように歌った。

頭を揺らしてギターを弾き、髪を乱したまま歌い出したのはアカネサスが初めてリリースした楽曲『アサガオ』。サビではコーラスがピッタリとはまり、3人で一緒に歌った。曲が終わるとリバーブの効いたドラムから『明日、世界が終わればいいのに』が始まる。勢いがあった今までの曲とは雰囲気がガラリと変わり、ゆったりとした曲調と力強い歌声に聴き惚れた。続く、最新リリース楽曲『0927』でも、今まで通りの力強い声のままではあるが、どこか切なく感じる愛の歌の力を不思議に感じながら、観客はステージをじっと見つめた。

曲が終わると、百華(Dr/Cho)のドラムが元気よく鳴り始める。再びバンドは勢いを取り戻し、ラストスパートを駆け抜けるように、『brain』を演奏し始める。愛と梨代菜(Ba/Cho)の2人がステージの前に出て観客を盛り上げる。その疾走感にたくさんの拳が上がった。曲が終わると「バイト行きたくなーーーーい!」と叫び、最後の曲『バイト行きたくない!』を始めた。アカネサスは楽しくて短いこの曲でライブを締め、最後の最後まで観客を元気づけてくれた。

chef’s

パーティーの司会のようなナレーションが入り、chef’sのメンバーが続々とステージに現れる。SEに合わせて観客は手拍子をする。楽器隊は皆シェフコートを着ており、ギターボーカルのアヤナも白ブラウスに黒のパンツを履いている。入場した瞬間から、chef’sというバンドの世界観が色濃く表れており、これからどんなライブが見られるのかと非常に興味をそそられた。

開演のブザーが鳴るのに合わせて、ゆっくりとアヤナがワンフレーズを弾き語る。そこに楽器隊が加わってテンポをあげた1曲目『ヒーローコンプレックス』は疾走感あふれる1曲で、観客の拳も自然と上がる。ブツ切れのベース音だけが残り、怪しい雰囲気を醸し出す。次は何が演奏されるのかとソワソワしていると、アヤナが小さく『エイプリル』と呟く。気持ちよく通るギターリフが現れて、怪しい雰囲気を断ち切った。ミディアムテンポでの多彩なリズムを楽しみつつ観客は体を揺らした。

曲が終わるとフルギヤ(Gt)は素早いカッティングでライブの表情を一変させる。まろ(Ba)のスラップベース、いぶき(Dr)の軽快なドラム、楽器隊の技術の高さが目立つ、おしゃれインスト曲『entrée』を挟み、『スピンオフヒロイン』が始まる。緩急のあるこの曲でもメンバーは息の合った演奏を見せ、アヤナは可愛らしい声で曲を彩る。

曲が終わってそのまま、ギターのおしゃれなコードが続く。ドラムの金物の音がキラキラと響いて心躍った。ジャズらしい要素をchef’sというバンドの文脈に混ざり込ませた『Ci(n)der era』。彼らは異なるジャンルをうまく自分たちの曲に落とし込み音で料理する。chef’sのキャッチフレーズである”おいしいおんがく”を体現する1曲だった。

間でMCを挟み、続く『チャップリン』では、軽やかなリズムの音楽に、表情豊かなアヤナの歌声がのった。『Hamlet』はリズムの変化が楽しい1曲だ。ステージ前に乗り出し、簡単そうに難しいリフを弾きこなすフルギヤのギターソロが光った。軽く残響音の残るギターの音が気持ち良い。最後の1曲は新曲『いとをかし』。chef’sの世界観、音楽性が詰め込まれたような曲だ。笑顔で伸び伸びと歌い、演奏する彼らの姿につられ、観客も手を上げて楽しんだ。

アンコールでは『huit』という曲を演奏した。まろがchef’sを初めて見たかどうかを聞いたところ、半数ほどが初見の観客だったことが判明した。しかし、初めて聞いたかどうかには関係なく、多くの手が高く上がり、最後までフロアは大きく盛り上がった。

Text by らいれいな
Photo by 稲垣ルリコ

イベント公式サイト:
https://fan.pia.jp/grasshopper/

『Grasshopper vol.7』11月28日@下北沢CLUB Que Photo by 稲垣ルリコ