もやし

2022年は食品や日用品など身の回りのあらゆるものの値段が上がり、懐が寒い1年だった。そんな値上げラッシュの中でも、もやしは変わらない安さでスーパーに並んでいた。

だが、もやしの生産者からは”悲鳴”があがっていて…。


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■もやしの窮状を訴える広告

「安さばかりを追求していては、もう続けていけない状況です」──。11月7日、工業組合もやし生産者協会が日本経済新聞の朝刊にもやし生産者の窮状を訴える広告を掲載した。

広告によると、もやしの原料種子の価格は30年前に比べて3倍以上、最低賃金は1.7倍と様々なコストが上昇。一方、もやしの全国・平均価格は2割以上下落しているとのこと。

この影響でもやし生産者は8割減少し、今も減り続けているという。つまり、我々がスーパーで安いもやしを手に取る裏で、ひそかに廃業している業者もあるということだ。


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■ネット上では激励する声続出

焼いても茹でても美味しく、肉や他の野菜との相性もよく、それでいて安いとまさに「優等生」と言えるもやし。そのもやしの窮状を訴える広告はSNSでも話題に。

ネット上では、「絶対に値上げしてほしい」「こんなことになってるとは…ちょっともやし買ってくるわ」「今まで頑張ってくれてたんだから、値上げしても私は買って応援する」「この広告見て、スーパーでなるべく高いもやし買うようにしてる」など、もやしの生産者を応援する声が続出。

一体、もやしに何が起きているのか、また長らく厳しい状況にも関わらずなぜ値上げしないのか。広告を出した工業組合もやし生産者協会に取材したところ、驚くべき「裏側」が明らかになったのだ…。


■もやしは特殊な野菜だった

件の協会で理事長を務める林正二さんによると、もやしは特殊な野菜だという。「通常の野菜は豊作であれば値段が下がり、天候異変等で不作になれば値段が上がります。ただ、もやしは計画生産できる野菜のため、需要と供給のバランスが関係なく、1年中値段が変わらないめずらしい野菜なんです」(林さん)。

もやし

たしかに、もやしはスーパーの売り場でも春・夏・秋・冬いつ見ても20~30円、お店によってはさらに安く売られていることもある。とはいえ、厳しい状況であれば5円でも値上げするよう生産者が小売店に交渉できないのだろうか。

「生産者側は小売り価格を操作できず、あくまでも小売業者が値段を決定します。小売業者にとっても、もやしは特別な存在のようです。もやしはスーパーの野菜売り場で買上げ点数が多い商品の一つ。小売店側からすると1円でも安く売るほうがいいですし、お客さんも『もやしが安いから他のものも安いかも』というイメージを持ってくれるかもしれません」(前出・林さん)。

■値段が上がらない「事情」

前出の林さんは、値段を少し上げてほしいという依頼はしており、それに対して小売店側が全く聞く耳を持たないわけではないことを強調する。

「小売店側も店頭で安く売りたいこともあって、私達が希望する価格まではなかなか上げてもらえないのが現状です。今回、広告を出したのも一般の消費者に向けてではなく、小売店に少しでも現状を知ってもらいたかったからなのです」(前出・林さん)。

何かと厳しいこのご時世、小売店側ももやし業界の現状を理解はしても、「明日から5円高くしよう」とはできないのだろう。それでも、今回の広告は少なからず効果があったようで…。

「すべての小売店が見ていたわけではありませんが、今回のようにメディアで紹介され、新聞広告のページを実際に手に取って見ていただくことで理解を示してもらうことには役立っています」(前出・林さん)。


■消費者にできることはある?

先述したネットの反応からも分かるように、今回の広告に対して消費者から大きな反響があった。組合には『買う側はどうすればいいのか?』といった問い合わせも来ているという。

我々買う側が何かできることはないのだろうか。この質問をしたところ、林さんは「まだどうなるかは分かりませんが、もし5円・10円もやしの値段が上がっても、業界の現状をご理解いただいた上で買い控えしないようにしていただければうれしいです」と笑顔を見せた。

奇しくも、今の時期は鍋にはうってつけ。肉や野菜、魚と食材を買う中で、ぜひもやしも購入してほしい。

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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人

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