画像はイメージ

会社に毎日のようにかかってくるサラ金からの取り立ての電話。でも、まったく本人は平気な顔。周囲も「いま席を外してます=vと居留守に全面協力するのが当たり前……。都内在住の男性(出版社勤務・40代)が遭遇したのは、そんな職場の同僚だった。男性は「あんなに毎日取り立ての電話が掛かってくるのに平気な顔をして飲みにいけるとは、相当神経が図太かったんだと思います」と回想する。(取材・文:広中務)

1日3回の電話がかかってくるが「常に居留守」 社長も公認

男性がこんな体験をしたのは、20年ほど前のこと。雑誌や書籍の編集を請け負う編集プロダクションに勤務していた時のことだ。

「今でもそうですが、編集プロダクションは激務。かつ当時請け負っていたのはアダルトな媒体が多かったので、働いている人間はみんなどこかネジが抜けていたとは思っています」

激務ゆえに泊まり込みは当たり前。風呂は近くの銭湯で済ませて、会社の床にマットレスを敷いて寝る毎日だったと男性は語る。

「自分もアパートの家賃を払うのがもったいなくなって引き払い、家財道具をレンタル倉庫に保管して、会社に住んでた時期があります。住民票も会社に移したら、社長に怒られました。自分も頭のネジが切れていたんだと思います」

社員たちはみんな、どこかクレイジー。そんな会社の固定電話に毎日最低3回掛かってきていたのが、1人の先輩社員宛の電話だった。

「最初は当たり前に取り次ごうとしたら別の社員に『彼宛の電話があったら、絶対に席を外していると答えるように』と止められました。理由は、その先輩宛の電話はほぼすべてが”サラ金の取り立て”だからだというんです」

一日に何度も取り立ての電話を掛けてくるくらいだから、かなり切羽詰まった状態のハズ。ところが、当の本人は涼しい顔で「ボク宛の電話の時はよろしくね!!」というばかりで、まったく気にしていなかったのだ。

「取り立てといっても怒鳴るとかではなく、すごく丁寧な口調です。でも何度かに一度は”いったい、いつ帰社されるのでしょうか”と、すごんだ口調で聞かれました。自分もビビりながら、わかりませんというしかなかったんですけど」

とりわけ月末が近くなると取り立ての電話が鳴る回数も多くなり「いい加減、返済しれくれないかなあ」と愚痴る先輩もいたが、それ以上のアクションを起こすものはいなかった。

ついに「捕まった」

事態が変わったのは、取り立ての電話が1年ほど続いた後のことだ。

「その借金先輩が『まいったなー』といいながら会社にやってきたんです。聞けば、ついにアパートの前でサラ金の人に鉢合わせをしてしまい、返済の約束をさせられたというのです。それまで1年以上、逃げ切っていたというのもすごいですが……」

その後、給料日のたびに「また半分、入金しなきゃいけないのか。どこかで借りられないかな」と話していた先輩は、ある日突然会社を辞めた。

「その編プロの雇用形態は個人事業主の扱いで、売上の4割を会社の収めることになっていました。その4割分を返済に回したかったんだと思いますよ。もっとも、それまで会社の看板で請けていた仕事がフリーランスになっても続いたかはわかりませんけど」

先輩もいなくなって、ようやく取り立ての電話も止んだかと思いきや数日後、今度は社長の怒声が社内に響いた。

退職した先輩が会社の備品を「持ち逃げ」

「その先輩、パソコンカメラなど会社の備品を返却しないまま辞めてしまい、社長の電話も着信拒否にしていたんです」

怒り心頭の社長は警察署に出向き相談。警察官が代わりに電話をして「窃盗になる」と警告したところ、先輩は慌てて警察署に備品を返却しに来たという。

「最低でもパソコンがなければ仕事にならないと思うのですが、その後どうしたのかは、わかりません」

ちなみに、その編プロは最後は業績が悪化し倒産。話を聞かせてくれた男性が、退職金のかわりに受け取ったのは「大量の文房具」だったそうだ。

「既に20年経ちますが、いまだにセロテープとホチキス針は使いきっていません」

ペーパーレスが進んでいる時代、ホチキス針はもしかしたら、もう使い切れないかも。

サラ金から逃げ回る先輩と、居留守に協力する同僚たち。ぶっ飛び編集プロダクションのカオス