現役プロ野球選手のほとんどが通る人生の一大イベント、それはドラフトです。10月に終わったドラフトで、わがヤクルトは社会人の即戦力投手を指名しましたが、事前の情報戦を含めて、どの選手を1位指名するかわれわれ野球ファンの興味は尽きませんでした。

ということで、本日のテーマは「ドラ1」。いつの日か誰かに単独1巡指名されたい、野球大好き山本萩子がお送りします。

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「ドラ1」。それはプロを目指す野球選手にとって最高の名誉です。しかも、その冠はずっとついて回ります。プロになったらどんな活躍をしてくれるのだろうとファンは夢を膨らませます。「ドラ1なんだから」の言葉とともに、選手は大きな期待を背負うことになります。

かくいう私も、ドラ1には期待してしまいます。本格派の投手でしたら、願わくばローテーション入りしてほしいですし、将来性を期待された打者でしたら、数年後には主軸を担ってほしい。

今年の流行語大賞にも選ばれた村上宗隆選手もドラ1でした。しかし、村上選手のように期待を裏切らず、まっすぐに成長するドラ1は稀有です。ドラ1の多くは、プロの水に慣れるまで思うように活躍できなかったり、あるいは怪我をしたりと、遠回りしながら、それぞれ苦労を重ねます。それでも、いずれ結果が出ればめでたしめでたしなのですが......。

今年の契約更改では、多くの選手が0円提示をされましたが、その中にはかつてのドラ1もいました。そのニュースを聞いて胸が苦しくなりました。

ドラ1という名誉があって大きな期待をされたとしても、将来が保証されるわけではありません。学校を出たばかりの若者でも、プロとして一人で戦わなくてはいけません。それはとても大きなプレッシャーでしょう。結果が出ずに寝れない夜を過ごす選手もいると聞いたことがあります。

すっかり寒くなりましたね。春の訪れ(キャンプイン)まで皆さま風邪など引かぬようお気をつけください
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ドラ1という重圧に押しつぶされてしまった選手もいたかもしれません。もしかすると、2位や3位だったらその後の人生が変わっていたのかもと考えると、社会に出たばかりの若者に与えるには、なんと酷な試練なんだろうと思います。

自分の過去を思い返すと、高校卒業と同時にそれまで所属していた馬術クラブを引退した私は、大学に入ってからサークルにも入らずのんびりと過ごしていました。私がマイペースに青春を謳歌していたその一方で、勝負の世界で戦っている若者がいた。本当に尊敬の念しかありません。

ドラ1は、期待と同時にチャンスも与えられます。長い目で育成をしていく中でも、他の選手に比べたら比較的早い段階から結果を求められ、何度も試練を与えられます。大きな重圧ではありますが、大きな糧にもなります。

首脳陣は、ドラ1には大きな期待と重圧を背負わせて、それに打ち勝ってもらいたいと思っているはず。それはきっと愛ゆえの試練なのでしょう。

ドラ1=チームを担うスター候補ということで、いつか名実ともに球団の顔になってほしいと思います。ただし、過度なプレッシャーはかけずに、温かい目で見守ることも大事。

最近、どうにも涙もろくて、小さな背番号と大きな重圧を背負ってプロの世界に飛び込んだドラ1を思うと、涙が出そうになります。これからも保護者のような気持ちで若い選手たちを見守りたいと思います。

早く来シーズンが始まらないかな。それではまた来週。

★山本萩子(やまもとしゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

「ドラ1」にかける期待について語る山本キャスター