朝晩の冷え込みが厳しくなり、温かい紅茶やコーヒーがうれしい季節となりました。これからティーバッグやインスタントコーヒーを購入する人も多いのではないでしょうか。ところで、自宅の台所や職場の引き出しを整理していると、箱が開いたティーバッグや開封済みのインスタントコーヒーが見つかることがあり、飲んでもよいのか迷うことがあります。箱を開けたティーバッグや開封したインスタントコーヒーは、いつごろまでに飲むべきなのでしょうか。メーカーに聞きました。

紅茶は光の当たる場所に保存しないこと

 まず、「日東紅茶」ブランドの製品などの製造・販売を手掛ける三井農林(東京都港区)のシニアティーインストラクター、村野かをるさんに聞きました。

Q.紅茶のティーバッグが保存できる期間や開封後の注意点について教えてください。

村野さん「保存が可能な期間は開封の有無や包装形態によって変わります。開封前の製品は箱や袋に記載している賞味期限を参考にしてください。

開封後の製品は包装形態によって異なります。アルミで密封個包装されている製品は賞味期限内であれば、問題なく消費できると思いますが、紙で個包装されている製品や大袋に直接ティーバッグが入っている製品の場合、保存状況によっては品質が劣化している恐れがあるため、早めに飲むことをおすすめします」

Q.どのような場所で保存すべきでしょうか。

村野さん「紅茶の保存は『光・におい・湿気』の3点に注意が必要です。

(1)光に当てない
紅茶は光に弱く、例えば、透明な容器に入れて日光の当たる場所に置いておくと品質に影響が出ます。屋内でも、蛍光灯の光などに長時間さらされると品質の劣化が起こります。

(2)においを避ける
紅茶は周りのにおいを吸着する性質があります。においの強い物の近くに置くのは避けてください。

(3)湿気に注意
湿度の高い所に置いておくと茶葉中の水分量が多くなり、品質劣化が早まるだけでなく、カビが生えることもあります。カビが生えた製品を飲むと健康被害の恐れもあります。

先述のように、紙で個包装した製品や大袋に直接ティーバッグが入っている製品は特に注意しましょう。また、アールグレイなどの香料を添加したフレーバーティーの場合、お茶そのもの以外に香料の劣化が起こる可能性があります。アルミ袋などで密封されていないティーバッグは光を通さずに密閉できる物、例えば、封のできるアルミ袋や缶に入れた上で、光の当たらない場所での保存をお勧めします」

Q.自宅の台所や会社の引き出し、給湯室にティーバッグを置きっ放しにしていた場合、飲んでも問題ないのでしょうか。

村野さん「ティーバッグの賞味期限は包装形態により異なりますが、1年から3年が一般的です。未開封の場合、賞味期限内であれば、飲んでも問題ないと思います。当社が製造するティーバッグの賞味期限は紙の個包装の製品で2年、アルミ個包装の製品で3年が基本です。

ただし、繰り返しになりますが、開封後の製品は注意が必要です。大袋に直接ティーバッグが入っている製品や紙の個包装の製品は保存状況によっては劣化している可能性があります」

Q.ちなみに、ティーバッグ1袋で何杯分の紅茶を入れられるのでしょうか。

村野さん「一般的に、ティーバッグは1袋で1杯分の紅茶を入れられるよう設計されていることが多く、同じティーバッグで2杯目を入れて色が出たとしてもその香味は1杯目より劣ります。そのため、紅茶をおいしく飲んでいただくためには、1袋につき1杯をおすすめします。

もちろん、紅茶は嗜好(しこう)品でもあるため、好みで一度に2杯以上飲んでも問題ありませんが、その際は2袋以上のティーバッグを使用してください。

なお、一度使ったティーバッグをカップやポットから取り出し、再度使うのは、味や香りも楽しめませんし、衛生上おすすめできません」

Q.ティーバッグでおいしい紅茶を入れるコツについて、教えてください。

村野さん「一般的に、ティーバッグはティーカップで入れることを想定しており、使用するお湯の量は約150ミリリットルです。おいしく入れるためにはお湯の温度と蒸らしの時間が大切です。紅茶のおいしさの一つであるタンニン(紅茶ポリフェノール)は高い温度帯でよく出ることが分かっているため、完全に沸騰した熱湯で入れるとおいしくなります。

また、お茶の成分を抽出するためには一定の時間が必要で、ティーバッグの場合は1分から3分ほどです。熱湯を注いで、すぐ色が出てもおいしさはまだ十分に出ていないため、ティーバッグを振らずに待ちましょう。時間がたったら、ティーバッグを軽く2、3回振ってカップから取り出します。このときに激しく振ったり、スプーンなどで絞ったりすると余計な渋味が出ます」

インスタントコーヒーは?

 続いて、インスタントコーヒーなどの製造・販売を手掛ける味の素AGF東京都渋谷区)コーポレートコミュニケーション部企画推進グループの担当者に聞きました。

Q.インスタントコーヒーは購入してから何カ月ほど保存できるのでしょうか。また、賞味期限が過ぎた製品を飲んでも問題ないのでしょうか。

担当者「当社のインスタントコーヒー製品の場合、未開封であれば、賞味期限までは保存したり、飲んだりすることができます。当社製品の賞味期限ですが、瓶製品は製造日から37カ月、袋製品は製造日から19カ月、箱入りのスティックタイプの製品は製造日から19カ月、または25カ月です。

賞味期限は食品の品質特性を十分に保証できる期限に余裕を持って設定しており、おいしく飲める期限を表しています。なお、賞味期限が過ぎた製品は風味が落ちて、おいしく飲めないことが予想されるため、おすすめしておりません。また、安全性について当社で確認できておりませんので、飲用はお控えください」

Q.インスタントコーヒーを保存する際の注意点について教えてください。また、賞味期限内ではあるものの、会社の引き出しなどに置きっ放しにしていたインスタントコーヒーは飲んでもいいのでしょうか。

担当者「開封後は高温多湿を避け、開け口を密封して保存してください。保存状況にもよりますが開封後、長期間置きっ放しにしていた場合、風味が落ちて、おいしく飲めない可能性があります。袋タイプの製品は上部を2回以上折り畳んだ上で、バンド、クリップなどでしっかりと閉じて保存し、開封後は1カ月以内を目安に飲んでください。

瓶入りの製品の場合、瓶口の紙(内ぶたシール)は、ふちより内側の部分を完全に切り取ってから使うことをおすすめします。瓶口の紙が内側に折り返した状態で使用すると、紙が瓶の中に入る恐れがあります。袋タイプの製品と同様、開封後は1カ月以内を目安に飲み、毎回しっかり、ふたをしてください。なお、コーヒーを入れる際は乾いたスプーンを使用してください」

Q.瓶入りのインスタントコーヒーが固まってしまうことがあります。塊を崩して飲むことはできるのでしょうか。

担当者「賞味期限内で、瓶を振る程度で粉がサラサラになるようであれば飲むことができます。ただし、通常より風味が低下している可能性があります」

Q.長期間保存していたインスタントコーヒーで健康被害が生じる恐れはないでしょうか。

担当者「インスタントコーヒーの味や風味は開封後、時間とともに劣化しますが、通常の保管方法であれば健康被害が生じるリスクは低いでしょう。また、インスタントコーヒーは水分の割合が非常に低く、カビや細菌が繁殖する可能性は低いと考えられます。

なお、開封したインスタントコーヒーを長期間かけて使用した場合、コーヒーに含まれるカフェインがインスタントコーヒーの表面に白い針状の結晶となって析出する場合があります。カビやクモの糸のように見えることがありますが問題なく飲めます。ただし、味、風味は劣化していると思われます」

オトナンサー編集部

ティーバッグの適切な保存方法とは?