
2022年、日刊SPA!で反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。今年、色々な分野で話題になった人物に注目。有名人から、そうでない人も区別なく選んだ「話題の人」部門の第10位は、こちら!(集計期間は2022年1月~11月まで。初公開日2022年3月10日 記事は取材時の状況)
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アイドルにとってオタクの存在は、あくまで“いちファン”に過ぎない。一方、アイドルに本気で恋愛感情を抱く「ガチ恋」と呼ばれるオタクもいるが、決して結ばれることのない関係性だ。
しかし、そんな常識を覆す夫婦が今、TikTokで話題を呼んでいる。その名も「ともえとみっちゃん」。フォロワー数は25万人を超える。
元アイドルのともえさん(20歳)は、2020年に元オタクのみっちゃん(47歳)と結婚。年の差は27歳。一体どんな風にして結婚まで至ったのか? 交際当初には「誓約書」を書いていたのだとか……。
◆パフォーマンスに圧倒されて…
2人の間に多くの壁が待ち受けていたことは想像に難くないが、まずは交際のきっかけから振り返る。ともえさんが17歳、みっちゃんが44歳の頃だ。
「当時わたしは大阪で活動をしていました。みっちゃんはもともと他の子を推していたんですけど、私がグループに加入したことで推し変(※)して、ライブへ頻繁に会いに来てくれるようになったんです」(ともえさん)
(※)“推し”の相手を変えること
みっちゃんは、なぜ推し変してまでともえさんを追いかけるようになったのか。ともえさんを見た瞬間、「光る原石を見つけたような気持ちになった」と話す。
「元々彼女は『候補生』と言って、以前はグループのサブメンバーにいたんです。ステージデビューのときに彼女を初めて見て、びっくりしました。新人なのにパフォーマンスがすごいなと。見た目も可愛らしかったので“自分が推すしかない!”と思いましたね」(みっちゃん)
それからは毎週のように大分から大阪へ通うようになったそうだ。
◆彼のいない客席は「物足りない」
みっちゃんはライブやイベントにも足を運びつつ、ともえさんの「ライブ配信」も欠かさずチェックしていた。配信を通じて何度もコミュニケーションを取っていくうちに、ともえさんはみっちゃんに惹かれていった。
「みっちゃんは他のオタクと違って、“頼れるオタク”でした。他の人には言えないような悩みもよく聞いてもらっていました。とあるライブで、みっちゃんが来なかった時があったんです。いつも来ているのにおかしいなぁって……ステージ上から姿を探しました。みっちゃんのいない客席は、なんだかいつもより物足りなく感じて。その時に『もしかしたら好きなのかもしれない』と意識するようになりました」(ともえさん)
ともえさんはだんだんと気持ちが抑えられなくなり、「好き」と伝えることに。まさかアイドルから告白されると思わなかったみっちゃんは……。
「あくまでオタクなので、『好き』って言われてもオタクとして好きなんだろうなと思っていたんです。それが、一人の男の人として好きだと言うんで……じゃあ付き合おうって僕から言いました」(みっちゃん)
ともえさんの一言がきっかけで交際はスタート。それと同時にともえさんはアイドルも卒業したのだ。
◆友人からは「騙されてんじゃないの?」付き合ったときの周りの反応
当初ともえさんは17歳で、みっちゃんは44歳。周りは当然、驚いた。
「友人は『27歳も年上なの!?』と、やはり年齢には驚いていました。母はみっちゃんと同い年ということもあり、かなり動揺はしていましたね」(ともえさん)
娘が自分と同い年の彼氏を連れて来たら動揺するのも無理はないだろう。一方みっちゃんの周りの反応は……。
「オタク仲間からは『おお、やっぱりかぁ! やりおったな〜』と茶化されました(笑)。彼女と仲が良いことはオタクの間では周知の事実だったので。プライベートの友人や仕事仲間からは『ええ、大丈夫なの?』とか『そんなに若くて可愛い子と? 信じられない! 騙されてんじゃないの?』と羨ましがられつつも、心配されましたね」(みっちゃん)
◆誓約書を書いて本格的に交際がスタート
交際を始めて1週間。付き合うならいち早く挨拶したほうがいいだろうと、ともえさんの両親へ会いに行った。母親はみっちゃんと同い年だったこともあり、かなり緊張したそうだ。
「お母さんからは『まず、結婚する気はあるんですか?』と聞かれて、そりゃすぐにでもできるならしたいけど、まだ付き合って1週間だったので。考えてはいるけどすぐには……と、ちょっと遠慮して答えたんです。すると『え? 結婚する気ないのに付き合うの?』と言われてしまって。逆にいいんですか? って、ちょっと慌てましたね」(みっちゃん)
両親はみっちゃんがどれくらい真剣に考えているのか知りたかったようだ。ともえさんはまだ未成年だったこともあり、「誓約書」を書くことに。
「誓約書には、会う時は必ず親へ連絡するなど、付き合っていく上での約束事を書きました。両親は、わたしのことを尊重してくれていますが、やっぱり不安も少なからずあるようでしたので。こうして、両親に見守られながら交際はスタートしました」(ともえさん)
最初はあまり良い顔をしなかった両親も、一緒に食事へ行ったり、何度もコミュニケーションを取ったりするうちに、みっちゃんを受け入れるようになってきたという。
◆年の差はあってもなにも変わらない
交際をするなかで苦労したことはあるのか。
「まあ、いちばんの苦労はやっぱり距離ですよね。超遠距離恋愛だったので会いに行くのが大変でした。大分から大阪まで新幹線を使っても片道5時間。車だと8時間以上かかるので。なんとか仕事の段取りをつけて会いに行ってました」(みっちゃん)
ともえさんは寂しがりやな性格だというが、遠距離恋愛は平気だったのか?
「よくテレビ電話をしてくれていたので、そこまでは寂しくなかったです。仕事で移動する合間も、寝てる時もずーっと繋がっていて。近距離のカップルよりも顔を合わせていたかもしれませんね」(ともえさん)
二回り以上の年齢差によるジェネレーションギャップはなかったのだろうか。
「年の差婚なのでよく苦労してそうと思われるのですが、そこに関しては特別な苦労はないです。普通のカップルと同じく、親に認めてもらうために頑張ったり、結婚に向けて準備を進めたりしていました」(ともえさん)
「女優さんや俳優さんの名前を知ってるとか知らないとかのジェネレーションギャップはありますけどね。あとぼくはニュースをよく見るけど、彼女はバラエティが多いとかテレビ番組の好みなどですかね。年下だから話が通じないとか、そういうのはないです」(みっちゃん)
27歳差でも価値観が似ているからか、特にこれといった問題はなかったそうだ。
◆GPSをつけても怒らない夫
お互いに好きなところを聞いてみたところ、ともえさんは優しくて一途なところ、みっちゃんは顔と答えた。
「とにかくわたしを安心させてくれる行動をいつも取ってくれるところです。仕事の合間に電話をしてくれたり、“GPSでお互いの位置を把握する”ことを受け入れてくれたり。普通だったら嫌がるようなことも、みっちゃんはしてくれますね」(ともえさん)
「これ言うと叩かれそうですが、やっぱり推しを選ぶ時って顔から入るじゃないですか(笑)。笑顔がかわいいところも癒されます。あとは僕のことを好きでいてくれるところですかね」(みっちゃん)
二人が目指す理想の夫婦像は?
「夕方に近所を歩いてると、おじいちゃんとおばあちゃんのご夫婦が手を繋いで散歩しているのを見かけるんですよ。その姿を見て自分たちも、お互い年をとってもああやって手を繋いで買い物に行ったり散歩したいよねって話はしていますね」(みっちゃん)
「何年、何十年経ってもお互いを心から信頼し続けられる関係を築きたいです」(ともえさん)
ともえさんとみっちゃんは、終始笑顔で優しい視線を交わし、仲睦まじい様子だった。「オタク」が推しの「アイドル」と付き合い、結婚することも遠い夢ではなかったようだ。
<取材・文 /桃沢もちこ>
【桃沢もちこ】
神奈川県在住、’93年生まれのフリーライター。社会問題からトレンド、体験取材まで幅広く書きます。アイドルオタクに詳しい。Twitter:@mochico1407

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