土星の衛星「タイタン」は、地球を除けば唯一、太陽系で海・川・湖を持つ天体だ。不思議なことに、そうしたものは水ではなく、メタンなどの炭化水素でできている。
カッシーニ探査機の運用が終了した現在、このユニークな衛星の観測は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)や地上のケック天文台が担ってくれている。
このほど、この世界最高クラスの2基の望遠鏡は、そんな私たちの期待に応えてくれた。タイタンに存在する海と雲の姿をとらえてくれたのだ。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の画像は11月4日に撮影されたもので、北極付近に雲が2つ浮かんでいるのを確認できる。
研究チームは、その形の変化を観察するべくケック天文台で追跡を試み、30時間後および54時間後に同じ雲を再び観測することに成功した。
カリフォルニア大学バークレー校のイムケ・デ・ペイター教授は、「1日後と2日後にケックからタイタンを見上げるとき、もう雲はないのではと心配しましたが、嬉しいことに同じ位置にありました。形が変わっているようにも見えました」と、プレスリリースで述べている。
30時間以上にわたる雲の変化。上段は11月4日の画像(JWST撮影)、下段は11月6日の画像(ケック天文台撮影)/Image credit: NASA/STScI/Keck Observatory/Judy Schmidt
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宇宙からの画像と地上からの画像は、素人目にはそれほど変わらないようにも思える。だが、JWSTにはケックにはないさまざまな観測機器が搭載されており、大気の組成、雲の高さ、もやの高さなど、より詳しい情報をもたらしてくれる。
「JWSTの分光器とケックの高品質光学画像を合わせることで、タイタンの完全な画像を得られます」と、デ・ペイター教授は説明する。
さらにタイタンの秘密を探るべく2027年、ドラゴンフライ発射
2027年、NASAはそこへ向けて新たな探査機を打ち上げる予定だ。
「ドラゴンフライ」と呼ばれる探査機は、8基のローターでドローンのように離着陸しながら、タイタンに生物が生存可能な環境があるかどうか調査する。
ドラゴンフライの主任研究者である、ジョンズ・ホプキンス大学のジビ・タートル氏は、今回の観察について、「2017年に終了したのカッシーニに搭載されタイタンに投下された「ホイヘンス・プローブ」のミッション以来となる素晴らしいデータ」と評価している。
観測データは現在分析中だが、ここからタイタンの大気と気象についてたくさんのことが判明するだろうとのことだ。
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References:Webb Space Telescope, Keck team up to study Saturn’s moon Titan | Berkeley News / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2022/12/11)タイトルを訂正して再送します。
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