2022年9月1日(木) より102日間にわたり開催してきた『東京芸術祭 2022』が、12月11日(日) 閉幕した。

「ひらく」「きわめる」「つながる」をテーマに、演劇やダンス、アートプロジェクト、映像配信、人材育成事業など、全36のプログラムが豊島区池袋エリアを中心に実施され、来場・参加者数約40,143名、オンラインプログラム視聴者数・視聴再生回数の合計は5,025リーチを記録した。

また、今年度は「この秋、観劇デビューしない?」を合言葉に、ワンコイン(500円)で気軽にハイクオリティな観劇を体験できる野外劇や国内外で注目を集める舞台作品、まちを舞台に繰り広げるアートプログラム、オンライン・オフラインを併用した国際的な人材育成プログラムと幅広い事業をが実施された。

東京芸術祭は、今後も東京の文化の魅力をわかりやすく見せると同時に東京における芸術文化の創造力を高めることを目指し、社会課題の解決や人づくり、都市づくり、そしてグローバル化への対応を視野に入れた事業を展開していく予定だ。

■東京芸術祭実行委員会委員長 近藤誠一「東京芸術祭」閉幕あいさつ
2022年の『東京芸術祭』は、9月1日より12月11日までの102日間にわたり開催いたしました。
鶴屋南北の『桜姫東文章』をもとにルーマニアで作られた『スカーレット・プリンセス』、タイからの『An Imperial Sake Cup and I ― 恩賜の盃と私』、野外公演『嵐が丘』や35回を迎えた『としま能の会』、また生誕400年を迎えたモリエールの作品『守銭奴 ザ・マネー・クレージー』と多彩なプログラムを提供いたしました。
国内若手の公演・豊島区内の街中プロジェクト・アジア諸国から来日したアーティストを迎えての共同作業など無事に全ての事業を終えることができました。
2022年の東京芸術祭の開催にあたってご尽力いただきました皆様に心より厚く御礼申し上げます。
今後とも『東京芸術祭』へのご支援、ご鞭撻よろしくお願いいたします。

東京芸術祭ディレクター 宮城聰 コメント
この一年間痛感させられたのは「日本人はバブル崩壊以後、自分の人生を何に使えばいいかわからなくなっているのではないか」ということでした。
バブル期までは、多くの日本人が「豊かになるために働くのだ」と考えていたでしょう。豊かになれば、いろいろといいことがある。なので人生を「豊かになること」に使えば、結果としていろいろと報いられる、と。
しかしこれは、個々人が自分で選択した人生の目的ではありませんでした。いわば「いつのまにか国が(上から)決めてくれた」人生の過ごし方です。そしてそれは、日本が近代国家となって以来、ずっと続いていたことでした。
バブル崩壊は、すでに30年も前のことです。しかしどうやらこの30年間、日本では「なんのために生きるのか、人生の使い道をおのおのが自分で選ぶ」とはならなかった、ということが、コロナ禍以後に明らかになったように感じました。「上が決めてくれないので、周りに合わせていた」のかもしれません。
この先、この国に住む人々が自己肯定感を持って生きるためには、自分の人生を何に使うかを自分で選ぶことがいちばんのポイントになるのではないでしょうか。そして、多くの市民にとって、(例えばテレビでしか見られない特別な存在ではなく)自分の身近に、人生を何に使うかを自分で選んだ人がいる、ということが励ましになるのではないでしょうか。
これはつまり、アーティストが、それもエスタブリッシュされた成功者ではなく、若く多様な、成長過程の途上にいるアーティストが、市民のただなかに入って思い思いの活動をしていることこそ、市民の活性化(そして社会の安定化)につながるということだと思います。
東京芸術祭は、そのような、あるべき近未来の東京のイメージに向かって、微力ながらも歩を進めているところです。まだまだ緒についたばかりですが、東京芸術祭の活動にこれからも関心を寄せていただければ幸いです。

<イベント情報>
『東京芸術祭 2022』

会期:2022年9⽉1⽇(⽊)〜12⽉11⽇(⽇)
会場:東京芸術劇場/GLOBAL RING THEATRE(池袋⻄⼝公園野外劇場)/豊島区⽴芸術⽂化劇場(東京建物 Brillia HALL)/ほか 東京・豊島区池袋エリア

東京芸術祭 公式サイト:
https://tokyo-festival.jp

「東京芸術祭 2022」メインビジュアル