タクシーのEV化が一気に加速しそうです。タクシーアプリ「GO」を展開するモビリティテクノロジーズが、まず2500台のEVを導入支援。2030年には約4万台に拡大し、日本のタクシーの「5台に1台」がEVになる計画です。

「GO」がタクシーEV化の旗振り役に

タクシーのEV化が一気に加速しそうです。タクシーアプリ「GO」を展開するモビリティテクノロジーズ(以下MoT)は2022年12月12日(月)、「タクシー産業GX(グリーントランスフォーメーション)プロジェクト」について記者会見を開催。環境大臣を務めた小泉進次郎丸川珠代両議員のほか、タクシー事業者約100社が集まり大々的に行われました。

MoTはこの12月から、プロジェクトへの参画を表明しているGO加盟業者およそ100社に対し、トヨタ「bZ4X」、日産「アリア」「リーフ」といったEVを最大2500台、事業所などへ急速充電器400台と普通充電器2500台の計2900台を提供します。車両については政府の基金交付などにより最大3分の2が助成され、充電器については事業者の実質負担なしで設置。事業者は充電量に応じたチャージサービス料をMoTに支払うそうです。

黒いボディに行灯のついた「アリア」と「bZ4X」タクシーの前で、MoTの中島 宏社長は次のように話しました。

「運輸業界のCO2二酸化炭素)排出量は全産業中17%と大きな割合を占めています。街なかで日常的に目にし、日常的に使うタクシーをEV化、タクシーの脱炭素化は間違いなく人々の意識を変えます。量・質ともにインパクトが大きく、日本の脱炭素化のきっかけになります」と胸を張ります。

小泉進次郎議員は、「仮に自分がEVをもってなくても、タクシーに乗ったらEVだった。誰もがEVに乗ったことがある状態になることが、自動車業界のEV化を加速させる」、全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長は「タクシー業界がどの産業よりも真っ先にカーボンニュートラルを達成する」と、それぞれ意気込みを語りました。

タクシー2500台がEV化することによるCO2削減量は、年間およそ3万トン。これは、東京ドーム800個分の面積の森林を新たに作るのと同等の効果だとか。また、「GO」アプリにはEVの指定機能を追加するほか、1回利用あたりのCO2排出量と削減量も可視化することで、ユーザーの行動変容を促すといいます。

MoTは、2030年にはEVタクシーが4万台まで拡大すると試算しています。これは全国のタクシーの5台に1台に相当する規模です。

タクシーが「走る蓄電池」に?

今回のプロジェクトには、東京や名古屋、福岡といった大都市圏だけでなく、地方の会社も参画しています。MoTの中島社長によると、タクシーの燃料として主に使われているLPG(液化石油ガス)の価格が高騰しているほか、LPGスタンドの数も減少。地方では、自社エリアから片道30分かけてLPGを補給しにいくタクシーもあるといいます。

こうした状況からEVを導入しているタクシー事業者もあるものの、日本においてはEV普及率が低く、インフラもなかなか整いません。世界では全車両に占めるEVの割合が10%に達しているのに対し、日本ではわずか2%。タクシーに至っては0.1%という状況だそうです。MoTが旗振り役となって国の制度を活用しながら事業者を支援することで、この状況を打破していく狙いがあります。

EVタクシーの運用コストとしてはLPGのタクシーと同等になるとのことですが、そこでキモになるのが、電力がひっ迫する時間帯を避け、いかに安価な電力を供給するかという「エネルギーマネジメント」だといいます。MoTはこれを構築するとともに、東京電力ホールディングスがEVタクシーを導入する営業所の脱炭素化を進め、あいおいニッセイ同和損保が設備不具合などによる経済損害などを補償するEVタクシー向けの保険メニューを用意するそうです。

「街なかにEVタクシーが普及すればするほど、EVタクシーが電力の調整役をも担うようになります。かんたんにいえば統制がとれた「蓄電池が走っている」ということで、万が一、電力がひっ迫すれば、それを吐き出す(一般の電気に活用する)こともできます」(MoT GX部部長 佐々木将洋さん)

なお、東京ではまず2023年1月より、「アリア」のタクシー3両が走り出すそうです。「bZ4X」については4月に兵庫から運行を開始、東京には2023年度中の導入予定だそうです。

左が日産アリア、右がトヨタbZ4Xのタクシー(乗りものニュース編集部撮影)。