京急大師線で地下化工事が進められていますが、もう1か所さらに別の地下化工事も計画されています。どんな計画なのでしょうか。

ほぼ”ミニ地下鉄”と化すはずだった大師線

京急川崎駅から海側の工業地帯へ走る京急大師線は、沿線に川崎大師も抱え、ラッシュ時も休日も乗客で賑わう支線です。その京急大師線で、連続立体交差事業が進行中。すでに産業道路駅(現:大師橋駅)周辺が2019年に地下化され、7車線の産業道路を大跨ぎする踏切も解消しました。

さらにその続きとして、川崎側の1.2kmも計画があります。東門前駅川崎大師駅を地下化して、鈴木町駅の手前で地上に出る計画で、さらに6か所の踏切が除却される見込みです。

のこる京急川崎川崎大師間については「2期区間」として、現在と完全に別の南側ルートへ移設のうえ、宮前・港町・鈴木町の3駅を途中に設置して地下化する計画となっていました。しかし、こちらは2016年に事業休止となり、翌年の公共事業評価審査委員会の答申を受け、正式に中止となっています。

ただ、この2期区間には、川崎市としてどうしても除却しておきたい踏切が1か所あります。それが、京急川崎~港町間にある「本町踏切」です。

川崎駅にほど近い深刻な踏切

この踏切で京急と交差するのは、首都高川崎線の地上道路でもある国道409号です。アクアラインから西進して京急大師線と並走し、この「本町踏切」を抜けるとJR・京急の西側へ抜けて、JR南武線と並走して高津方面まで伸びています。

アクアライン~第二京浜~国道246号むすぶネットワークのため交通量が多く、2018年の調査では1日あたり約3万台が本町踏切を横断しています。

この交通量に踏切遮断時間を掛けた”遮断影響係数”とも言うべき「踏切自動車交通遮断量」は67737。この数値は、国が「改良すべき踏切」に指定する要件の50000を超えています。まだ国による指定は受けていませんが、指定されると連続立体交差事業などの事業化がスムーズになります。

川崎市はこの「本町踏切」の除却方法について、2019年に「鉄道が高架でまたぐ」「鉄道がトンネルでくぐる」「道路が高架でまたぐ」「道路がトンネルでくぐる」の4案を比較検討。その結果、「鉄道がトンネルでくぐる」方式がコスト面や環境面、事業の進めやすさなどで有利だと判断しています。

この案でいけば、大師線京急川崎駅を出るとすぐトンネルに入り、第一京浜国道15号)の下をくぐるあたりで地上に出る予定で、事業費は約300億円と試算されています。

では、いつこれが実現するのでしょうか。昨年12月の市議会答弁では、「1期事業が完了してから着手する」としています。とはいっても、先述の1期事業の続き工区(大師橋~鈴木町)はまだ都市計画決定も完了していません。2期区間の中止にともない、鈴木町駅付近の地上へ上がる部分をあらためて追加決定する必要があるからです。「本町踏切」地下化工事が実際に始まるのは、もう少し先のことになりそうですが、その頃までには国の「改良すべき踏切」に指定されているかもしれません。

ところで、第一京浜をくぐる地点には、過去に大師線にあった「六郷橋駅」のホーム跡が、今でも残っています。地下化工事の際には、この“遺跡”が見納めになる可能性もあります。

地下化事業が進行中の京急大師線(画像:写真AC)。