カルト教団

2022年は、テレビ・新聞・ネットと至るところで「宗教」が話題になった1年だった。それでも、カルト団体や悪質商法を行なう者達は今も我々を付け狙っている。

特に、若者を勧誘する手口は非常に悪質で…。


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■旧統一協会だけじゃない「勧誘」

安倍晋三元首相の銃撃事件を機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が注目され、国会でも議論された。ただ、悪質な勧誘は旧統一教会に限ったことではない。かねてから、怪しい活動に誘い込んだり、高額商品を売りつけるカルト団体は問題視されてきた。

特にターゲットになりやすいのが大学生だ。キャンパス内でOBを装って親しげに声をかけ、「就活に役立つから今度このイベント来てみなよ」など、言葉巧みに誘い込む──。コロナ禍で人と人のつながりが希薄になる中、こうした心の隙間に入り込む行為が懸念される。


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■巧妙化する勧誘の手口

大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターでカルト団体の予防、啓発をしている太刀掛俊之教授は、宗教やカルト団体の勧誘の手口についてこう解説する。「キャンパス内やその周辺で偶然の出会いを装って記念写真の撮影に協⼒してもらう、⼤学⽣の将来の夢についてのアンケート調査を⾏なう、留学⽣向けのスピーチコンテストなどを装っての勧誘がありました」(太刀掛教授)。

カルト教団

将来について考える若者に巧みに近づこうとする卑劣な手口である。コロナ禍で大学への入構が制限されると対面での勧誘は減ったものの、新たな形で学生に接触を試みているようで…。

「SNS を利⽤した勧誘⽅法も知られており、それらも含めて注意する必要があります。例えば、新入生が『#春から〇〇⼤』と投稿し、(カルト団体等の)相⼿からいいねや DMをもらって、それに返信することによって⼈間関係が構築されます。また、⼤学で予防啓発がなされる機会が次第に増えてきたためか、『⼤学⽣になったら何をすればよいか』等のキャリアに関するテーマを設定して、⼤学⼊学前の⾼校⽣などをターゲットにしているケースもあるので、⼤学⽣だけではなく、⾼校⽣やそのご家族も注意してほしいと思います」(前出・太刀掛教授)。


■大阪大学の画期的呼びかけ

大阪大学では、5年前から公式YouTubeチャンネルでそうした勧誘に注意喚起する動画を投稿している。内容も堅苦しいものではなく、一人で歩く学生に後ろから声をかけて連絡先を聞き出す手法を「追付ノ術編」と題して、ミニドラマ仕立てでその手口や対処法を紹介しており、分かりやすい。

カルト教団

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前出の太刀掛教授によると、オリエンテーションやキャンパス内に看板を設置するなどの呼びかけだと学生が具体的にイメージしにくいため、身近な動画を使ったのだそう。

「実際に学内であった勧誘の事例をベースに、3分から5分程度の動画を学内の広報担当の協⼒を得て4種類作成しました。学内の⾷堂やバス停近くに設置されている画⾯で放映しています。すべて、実際にあった勧誘の⼿⼝を参考にしながら当時の学⽣に出演の協⼒を得て作成されたものになっています。キャンパスの中に設置してある画⾯で放映を繰り返すことで、勧誘しにくい環境を作るという意味において効果を発揮しているのではないかと考えています」(前出・太刀掛教授)。


■勧誘を受けたら…

前出の太刀掛教授はそうした勧誘を受けた際の注意点について語る。「相⼿は学校構内でもウェブ 上でも親しく声をかけてきます。勧誘のきっかけとなるボランティア活動やスポーツ活動、SDGs の理念に沿った活動そのものは魅⼒的かもしれませんが、それらの活動を通して⾃分の⽣き⽅を考えたり、理念や教義の実践といった観点から活動していることが⾒え隠れしているようであれば、活動から離れることを検討して下さい」(前出・太刀掛教授)。

対面であれ、SNSであれきっぱり断ることが大切だという。「相手は多くの⼈に声をかけているので、断ると相⼿が困るのではないかと考える必要はないですし、断れなくする親密な⼈間関係を作ることが相⼿のやり⽅です。スポーツ、⾳楽、SDGsを掲げたボランティア活動など、いろいろなきっかけがありますが、少しでも違和感があれば本⼈や家族を含め、親しい⼈に相談や情報を共有して、客観的な意⾒をもらうことが⼤事です」(前出・太刀掛教授)。

よく知らない相手に魅力的な話を持ちかけられた時こそ、注意しなければならない。

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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人

旧統一協会だけじゃない カルト団体、若者を付け狙う「卑劣な手口」に愕然