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舞いあがれ!』の主人公舞、第10週より(写真提供:NHK)

なんでNHK連続テレビ小説に出てくるごはんって、あんなにおいしそうなんだろう? それはドラマの作り手たちのこだわりが詰まってるから。あの忘れられない料理の作り方を朝ドラの料理指導者に聞きました。

「劇中、五島列島の食事のシーンでは、画面には映らなくても、五島の塩、麦みそ、あごだしなどを取り寄せて料理を作っています。俳優の皆さんに、“地元にいる”と思ってもらえるように心がけているのです」

そう語るのは、現在放送中のNHK連続テレビ小説舞いあがれ!』で、料理指導を行う広里貴子さんだ。’13年の『ごちそうさん』以来、『あさが来た』『まんぷく』をはじめ、NHK大阪放送局制作の10作品を手掛けてきた。

放送後、「今日、出てきた〇〇とってもおいしそう!」とたびたび話題になってきた朝ドラの料理。それもそのはず、一品一品に、広里さんのこだわりが詰まっている。

「どの作品でも、舞台となる地域の特産品や伝統野菜などの食材を使って、作品の時代背景も考えつつ、視聴者の皆さんにわかりやすい料理にしています」

岡山県が舞台の『カムカムエヴリバディ』(’21年)では特産品のにら、瀬戸内海の鯛やタコなどの海産物を、滋賀県甲賀市が舞台の『スカーレット』(’19年)では甲賀の新米と伝統野菜の赤かぶなどを使った料理を考えたという。

舞いあがれ!』でも、祥子ばんば(高畑淳子)が家でおろす魚を五島列島から取り寄せている。

撮影で使う料理だからこそ心がけていることもある。

「俳優さんはせりふを話しながら料理を食べるので、のどを詰まらせるようなものは避けています」

今作は大阪も舞台。お好み焼きたこ焼きなど、大阪の名物料理が、視聴者ののどを朝から鳴らしている。

「『うめづ』の大将の勝(山口智充)が近鉄バファローズの大ファンで、マヨネーズは伝説の投手にちなんだトルネード形という設定です。でも、現場で塗るときに手が震えて、マヨネーズが花模様みたいになったり(笑)。

舞の兄、悠人役の横山裕さんのシーンでは、豚玉がアツアツに焼き上がってしまって。やけどされないか心配しましたが、コテの使い方も上手で、食べ方も美しくさすが関西人! と感嘆しました」

そう笑う広里さんに特に思い出に残っている6品のレシピを紹介してもらった。ぜひ、朝ドラの味を家庭でも再現してほしい。

福原遥)の幼馴染みの梅津貴司(赤楚衛二)の父・勝(山口智充)と母・雪乃(くわばたりえ)が営むお好み焼き店「うめづ」で、岩倉家がいつも頼む豚玉。「3分ごとにコテでひっくり返し9分で焼き上げます。何度も返したり、コテでたたかないのがおいしく焼くコツです」(広里貴子さん、以下同)

【材料】2枚分

<A>
お好み焼き粉…75g
水…90g
長芋粉…1.5g

キャベツ…240g
青ねぎ…大さじ2
天かす…大さじ2
紅しょうが…大さじ2
卵(Lサイズ)…2個
豚バラスライス(3mm)…2枚
ラード…少々
お好み焼きソース、マヨネーズ青のり粉、かつお節…各適宜

【作り方】

(1)Aをよく混ぜて生地をつくり1時間ほど冷蔵庫で寝かす。
(2)キャベツは粗いみじん切りにする。
(3)ホットプレートを200度に設定し、ラードを溶かしておく。
(4)小さい容器に(1)の生地(80g)、キャベツ(120g)、青ねぎ、天かす、紅しょうが(各大さじ1)、卵(1個)を入れて空気を入れるように手早く混ぜる。
(5)ホットプレートに薄くラードをひいて(4)の生地を一気に入れ、軽く形を整える。豚バラスライスを丸く1枚のせる。
(6)約3分後一気にひっくり返す。このときコテで押さえつけず、周りを成形する程度にすると、ふんわりとした食感がキープできる。3分たち、豚肉の脂がにじみ出てくるころにふたたびひっくり返し、計9分焼く。
(7)ソースをたっぷり塗り、マヨネーズトルネード状(渦巻き状)にかけて青のりかつお節をのせる。

ワンポイント

「おいしく焼くポイントはホットプレートの温度をできるだけ下げないこと。一度に多くの枚数を焼くと温度が下がるので、ふっくら焼けず、表面が少しパサつきます。一度に焼くのは2枚までがオススメです」

■思い出に残る祖母の味 祥子ばんばの煮込みハンバーグ

幼少期の舞(浅田芭路)に祖母の才津祥子(高畑淳子)が作った一品。「舞がばんばのお手伝いをした後の設定なので、孫が喜ぶようにと、ジャムの入った煮込みハンバーグにしました」

【材料】2枚分

合いびき肉…200g
塩(できれば五島産)…小さじ1/4
パン粉…15g
牛乳…40ml
玉ねぎ…60g
ラダ油…小さじ2

<A>
ナツメグ…小さじ1/2
昆布茶…小さじ1/4
卵…1個
こしょう…適量

<B>
コンソメスープ…150ml
ケチャップ…大さじ3
とんかつソース…大さじ2
びわジャム…大さじ1
キャベツ…お好み
ピーマン…1/2個
ミニトマト(できれば五島産)…3つ

【作り方】

(1)パン粉は牛乳に浸しておく。玉ねぎみじん切りにし、サラダ油(小さじ1)を加えてしんなりするまで炒めて粗熱をとる。
(2)ボウルに合いびき肉と塩を入れ、粘り気が出るまでこねる。(1)の玉ねぎ、牛乳に浸したパン粉とAを加え、しっかりと混ぜる。
(3)(2)の生地を4等分にし、空気を抜くように形を整える。フライパンサラダ油(小さじ1)をひいて、中火で両面焼く。
(4)焼き目がついたらBを入れて蓋をし、中弱火で煮込む。
(5)約10分ほど煮込んだら(途中ハンバーグをひっくり返す)仕上げにびわジャムを入れる。
(6)お好みの量のキャベツ(角切り)とピーマン(細切り)を塩、こしょう(各
分量外)で炒めたものに五島産のミニトマトを添え、(5)とともに器に盛りつける。

ワンポイント

ジャムが入ると艶とコクがアップします。びわジャムにこだわらず、ブルーベリージャムマーマレードジャムなどご自宅にあるものでお試しください」

■みんなで楽しく大阪のソウルフード なにわバードマン特製たこ焼き

舞が入部する人力飛行サークルの名物のたこ焼き。先輩の刈谷博文(高杉真宙)が削るかつお節がおいしさの秘密だ。「撮影用の小道具の削りにくい削り器で、高杉さんが真剣に取り組んでくれました。一口大に切った野菜などを一緒に食べるのがバードマン流です」

【材料】約40個分

<A>
たこ焼き粉…100g
だし汁…430g
粉がつお…大さじ1/2
卵(L)…1個
ゆでダコ…150g(穴に入る お好みの大きさに切っておく)

<B>
青ねぎ…適量(刻んでおく)
天かす…適量
紅しょうが…適量
たこ焼きソース、マヨネーズ青のり粉、かつお節(できれば削りたて)…各適宜
サラダ油…適量

<C>
ブロッコリー(下ゆで)、にんじん(下ゆで)、ソーセージしめじ
なす、ミニトマト…各適宜(穴に入る大きさに切る)

【作り方】

(1)Aをよく混ぜて、たこ焼き生地を作る。
(2)たこ焼き器を温めておく(200~220度)。
(3)たこ焼き器の穴にサラダ油を塗って生地を穴から少しはみ出すくらい流し入れ、穴に1つずつタコを入れる。Bも入れる。
(4)縁が焼けてきたら穴からはみ出している具、生地を穴の中に収めるように、千枚通しや串で手早くひっくり返す。丸くなってきたころが焼き上がりの合図。仕上げにサラダ油を少し塗って転がし、皿に取る(外はカリカリ、中はトロッと仕上がる)。
(5)たこ焼きソースを塗り、青のりをかけて、削りたてのかつお節をのせてできあがり。お好みでマヨネーズをかける。
(6)Cをたこ焼き器の穴に入れて焼く。

ワンポイント

「削りたてのかつお節は断然香りが違う。ぜひたこ焼きパーティなどで試してみてください。残った本節は空気に触れないようにペーパータオルにくるんで袋に入れて密閉し、冷蔵庫で保存すると風味が落ちないですよ」

■多くの朝ドラを彩った名わき役…関西おせち田作り

「日本人が大切にする習わしが、朝ドラでは節目節目に出てきます。お正月のシーンは特に多いので、これまで多くのおせちを作ってきました。そのなかから、今回は田作りごまめ)の作り方をご紹介します」

【材料】

田作りごまめ)…30g

<A>
濃口醬油…10ml
酒…40ml
砂糖…大さじ1/2
みりん…数滴
一味唐辛子…少々
サラダ油…少々

【作り方】

(1)田作りオーブン(130度)でポキッと折れるくらいまで煎る。
(2)フライパンにAを入れて火にかける。
(3)煮立ってしばらくして泡が大きくなり、煮汁が焦げる寸前になったところで、(1)を加えて火を止める。しっかり絡めて薄くサラダ油を塗ったバットに広げて一味唐辛子を振ったらできあがり。

ワンポイント

調味料も少ないので、焦げるのではないか? と心配になると思いますが、ぐっと我慢してください。おいしい田作りができあがります」

■ダメ夫を妻がフォロー『カムカムエヴリバディ』鯛のあら炊き

結婚し京都で暮らし始めた大月るい(深津絵里)が「イワシを買ってきて」と頼んだところ、夫の錠一郎(オダギリジョー)は鯛を買ってきて……

【材料】2人分

鯛のあら…1尾分
ごぼう…1本
しょうが…10g
酒…150ml
水…150ml
砂糖…大さじ3
みりん…大さじ4
濃口醬油…大さじ4

【作り方】

(1)ごぼうは、たわしで土を洗い流し、4cm長さ、割りばしくらいの太さに切る。しょうがは薄切りにする。
(2)鯛のあらは80度くらいの湯をかけてヒレが立ってきたら水につけて急冷する。ウロコ、血の塊など汚れをしっかり取って水気をふき取る。
(3)鍋に(1)、(2)、酒、水、しょうがを入れて、落とし蓋をして中火にかける。
(4)煮汁が煮立ってきたらアクをとり、砂糖とみりんを加えて煮る。
(5)煮汁が1/3量くらいまで煮詰まってきたら、落とし蓋を取って濃口醬油を加え、鍋を傾けて煮汁をかけながら煮る。煮汁が焦げないように注意。照りがついてきたら器に盛り、煮汁をかけてできあがり。

ワンポイント

「るいなら、おつくりや焼き物にしたあと、あらも無駄なく使うはずと考えました。おいしく作るコツは下処理をしっかりすること」

■別れの涙の味がした『スカーレット』ちや子さんのお茶漬け

下宿屋「荒木荘」で働いていた川原喜美子(戸田恵梨香)が、仲よくなった住人・庵堂ちや子(水野美紀)に、別れの手紙にしたためたレシピ。ちや子は泣きながら作った。「疲れぎみのちや子のために、喜美子が心を込めて考えたものです。実山椒の香りと梅干しの酸味で疲れているときでも食欲が出ますよ」

【材料】

ごはん…茶碗1杯分
緑茶…適量
梅干し…1つ
実山椒…小さじ1/4
三つ葉…少々
塩…1つまみ

【作り方】

(1)湯を沸かしてお茶を作る。三つ葉の大きさは指2本分くらい(3cm)に刻む。
(2)お茶碗8分目までご飯をよそう。
(3)ご飯の上に梅干し、実山椒、三つ葉をのせ、塩を振る
(4)熱いお茶を上から注いでできあがり。

ワンポイント

「塩の代わりに砕いたおかきをのせてもおいしいです。実山椒の代わりにお好みでしょうが、ねぎ、ゆずなどを加えてもいいですね」

【教えてくれたのは…】

広里貴子(ひろさとたかこ)さん

ごちそうさん』(’13年)以来朝ドラ10作で料理指導を務める。料理教室講師、料理番組のフードコーディネーターとして、大阪を中心とした食の魅力を発信し続けている

(写真提供:NHK広里貴子さん)