今年9月、防音Bluetoothマイクmutalk』が発売され、そのユニークな見た目とともに話題となった。「ネットを通して音声を発信する人」をターゲットに作られたというが、こうした「防音」の需要は昨今、より大きく広がっている。

【写真】発表されて話題を呼んだ、片手で持てる防音室『Voicease』

 新型コロナウイルス感染症の拡大により世界的に「一人で楽しむ趣味」の需要が拡大したのは記憶に新しい。動画配信や楽器の演奏が個人の趣味として人気を博し、2021年は楽器の売上が大きく向上したり、オーディオインターフェイスが全国的に品薄になったりと、趣味の新たなトレンドが産まれた。

 「巣ごもり需要」におけるトレンドの変化・拡大は現在に至るまで続いており、特に動画投稿・配信を楽しむユーザーはこの2年で大きく増えている。TikTokをはじめとする動画SNSが普及し、配信系のプラットフォームもスマートフォン1台で投稿できるものなど選択肢が増え、「投げ銭」のようなシステムもこの数年で整備されてきた。動画投稿や配信を楽しむことのハードルが大きく下がったのだ。

 このような状況下で度々語られるのが、「騒音」にまつわるトラブルだ。「歌枠」のように歌唱や演奏を伴うコンテンツはもちろん、ゲーム実況などにおいては熱っぽい配信者が叫ぶような動画もたくさんある。特に日本の住宅事情を考えると、こうしたコンテンツの制作には気を使うことが必須だろう。実際、深夜に生配信をするVTuberの近隣トラブルがSNSで話題になった事例もある。家を借りる際に一軒家を選ぶゲーム実況者も居るようだ。防音・静音を実現するソリューションの需要は、こうした状況で高まり続けている。

 冒頭で触れた『mutalk(ミュートーク)』は2万円程度の防音Bluetoothマイクで、装着するだけで-20dB~-30dBの消音効果を実現する。マスクのように耳にかけて顔に固定でき、両手がふさがっていても使えるところが特長だ。VRグラスを着けた状態での利用が想定されている。

 また、ミュート機能やイヤホンジャックも搭載しており、PCやスマートフォンと合わせて使うさいに必要な機能は一通り揃っているという印象だ。口に触れる部品や声を通すクッションは水洗いができるところも嬉しい。

 「片手で持てる防音室」というコピーで今月発売を開始した『Voicease(ヴォイシーズ)』もこうした需要に応える製品だ。『mutalk』がゲーム配信やVRアクティビティと合わせて使えるように最適化されているのに対して、『Voicease』は音楽家と工学博士が開発した製品で、「歌うこと」に特化している。ハンドマイクに装着する防音カバーのような形をしており、価格は2万5000円程度。一般的なダイナミックマイクを別途購入・装着することで防音効果が期待できる。シンガーが自分の歌い慣れたマイクで歌えるところが魅力だ。

 公式の動画では、日本の住居シーンを想定した活用例をユーモラスに紹介している。

 川上産業株式会社が今月1日に発売を開始した『G-ZONE 00(ジーゾーン)』はゲーマー用の「ゲーミングブース」だ。畳2畳弱のスペースにはモニターを複数台設置でき、家の中にリッチなゲーミング空間を作ることができる。川上産業はエアクッション、いわゆる「プチプチクッション」を作っている企業で、この素材の長所を応用する形で『G-ZONE 00』を製作した。定価は30万円台とこの手の防音室のなかでも安価なほうであり、『東京ゲームショウ 2022』での先行展示も大いに話題になった。

 『G-ZONE 00(ジーゾーン)』よりもさらに安価なダンボール製の防音ブースが「だんぼっち」だ。こうした「簡易防音室」の世界では古株で、2013年の初代発売以降、昨今の需要拡大により、いまあらためて脚光を浴びている。複数あるラインアップの中でも、一番小さなタイプは10万円を切る低価格。紙製でありながらハニカム構造を採用し、軽量と頑丈さを両立している。ライブ配信やレコーディングなど、様々な用途での活用が想定されている。

 「防音」の需要は大きく、これからもさらに拡大していくことは間違いないだろう。安価に自分だけの「ゲーミング部屋」を作ったり、家に録音ブースを設置したりといったときにはきっと力強い味方になってくれるはずだ。ぜひ導入を検討してみてほしい。(白石倖介)

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