大金を失う投資家がいる一方、資産倍増、3倍増に成功する投資家がいます。「先読みができる人とできない人の差」は何か? 成功する投資家はどこを見ているのか? 投資のなかでも特に株式投資について「不動産投資、暗号資産などに比べ、少ない労力でリターンを得やすい」と指摘するストラテジストの菅下清廣氏が、優良株を見極めるポイントについて解説します。

江戸時代の投資分析法「酒田五法(さかたごほう)」は現在も有効

ここでは投資に役立つ相場の重要な格言、投資のセオリーが詰まった格言について解説します。

「相場のことは相場に聞け」と言われるように、投資で成功するには何よりも市況を注視し、かつその時々のチャート(ケイ線)の動きの分析が必須になります。

江戸時代後期、出羽国(でわのくに)(現在の山形県酒田市)の本間宗久(ほんまそうきゅう)が編み出した投資分析法、通称「酒田五法(さかたごほう)」は、いまもって株価のチャートを分析するうえでは欠かせないツールのひとつです。

私が開発した波動理論は、「酒田五法」も参考にしながら、現代の相場に適した「時間の波動」と「価格の波動」を両輪として株価の動きを分析、予測しますが、その際、大変参考になるのが相場の極意とも言うべき「相場格言」です。

ここでは比較的簡単な内容のものから難しい、ベテラン投資家に必要な格言まで、最重要の言葉をまとめて紹介します。

投資のセオリー①「国策に売りなし」

政府の施策、方針、経済対策は、常に相場全体に影響を与えます。国の経済政策にのっとった事業を展開する企業の株は「買い」です。国策の方向性に適合したセクター、業種は常に要注目。

「中央銀行に逆らうな」という格言もありますが、国家の経済政策を政府と一体化して推進する日本銀行の金融政策(金融緩和、利上げ、金融引き締め、利下げなど)にも逆らうなという意味です。

金融緩和、利下げは「買い」金融引き締めや利上げは「売り」です。逆に言えば投資は経済政策、日銀の金融政策に逆行する企業の株価は低迷する確率が高くなるでしょう。常日頃から経済誌などで金融政策に十分注意をはらっておく必要があります。

投資のセオリー②「本場寄一は物の始めなり」

本場とは前場のこと。現代風に解説すると、たとえば1,000円で寄り、寄った後にすぐ上がるのが「本場寄一」。1,000円で寄ってすぐ900円になったらだめ。1,000円で寄ってすぐ1,100円、1,200円と上がって行くのが買い。そういう極意を表す格言です。

「本場寄一は物の始め」の「始め」とは、上昇相場のはじめという意味。「本場寄一」とは寄ってすぐ上がること。それが買いのサイン。逆に寄ってすぐ下がる株は売りです。

なので「本場寄一は物の始め」とは買いのサイン。昔は株が1円刻みだったため寄ってから1円、2円、3円、4円と上がり、10円ぐらいでパッと大きく上がることがよくありました。これが買い。寄り付ききの値段と、寄った後の値段に注目しなければなりません。

実際はもっと複雑ですが、相場のプロはそこを必ず見ています。私もいつも寄り付き前の板、気配と、寄った後の値動きは必ずチェックします。

株市場における好手と悪手とは?

投資のセオリー③「指値(さしね)はチャンスを逸する」

これもかなりテクニカルな格言であり、酒田五法の定石ではありますが、個人投資家にはショックを与える内容かもしれません。

指値(さしね)とは、売買を委託するときに値段を指定すること。具体的に、買いの場合は上限価格、売りの場合は下限価格を指定して発注する方法です。

指値する人は素人レベル、プロはそういうことはあまりしません。売り買いは成行(なりゆき)が基本。利確も損切りも成行で行うのがプロです。

プロは寄り付きで成行を売り買いします。ザラ場で取引はあまりしません。

寄り付きとは、取引所の売買が開始される午前9時に行う、最初の売買のことです。

これに対してザラ場とは、寄り付きから引けまでの間の取引時間のことをいいます。ザラ場では値段優先で、条件が同じであれば発注が早いものから売買を成立させる方法を採用しています。(また、寄り付きから引けまでの間に成立する取引そのものを指す場合もあります)

なぜプロがザラ場であまり取引しないかというと、ザラ場は高値、安値があるので下手をしたら高値で買ってしまったり、安値で売ったりしてしまう危険性があるからです。

しかし、寄り付きは決まっているから妥当な値段で売りと買いを寄せられる。しかも成行でです。指値ではおいしい株は買えないことが多いのです。指値をして買えるような株は悪い株です。指値する人はほとんどが安いところで指値をします。前日の安値に指値する。安いところで買いたい気持ちがあるためです。

指値をする人には、「指値取り消すべからず」という格言も覚えてほしいもの。1回指値をしたら取り消しは厳禁。「取り消すべからず」です。取り消すなら完全に取り消すこと。上がってきて指値を上げるのは悪手です。

逆に下がってきたら指値を下げるというのもだめ。投資の素人がやりがちな手です。だから「指値はチャンスを逸する」。誰もが一度ならず失敗をする手法ですが、とくに投資初心者は、これを肝に命じてほしいと思います。

投資のセオリー④「高値売ろう、安値買おうは損のもと」

高値で売ろうとすると株価がどんどん下がっていく。安値で買おうとすると株価がどんどん上がっていく。こうした場面で、下手な指値は売り買いのタイミングを失います。

「高値で売りたい」「安値で買いたい」というのは無理もない投資家心理ですが、これをいつもやっていたら損をします。腹八分目を心がけていたほうがよいでしょう。「頭(高値)と尻尾(安値)は他の投資家にくれてやれ」という格言もあるように、余裕を持って投資をしていると相場全体をフラットに見ることができます。

「高値で売ろう」ではなく「新高値を買おう」ぐらいの狙い。「安値を買おう」ではなくて「安値はもう売ろう」ぐらいのスタンス。素人はこの逆を常にやって損をします。

補足すると、新高値とは相場が上昇してそれまでの高値を越えたときの値段のことを指します。比較する期間により「証券取引所上場以来」「昨年来」「年初来の3種類」があります。加えて、新高値を更新した銘柄は、さらに株価が上昇する可能性があります。

投資のセオリー⑤「波高きは天底の兆し」

波高き相場とは、最近のニューヨークダウのように、今日500ドル上げ、次の日は逆に400ドル下げ、翌日今度は800ドルも上げたというような乱高下の相場を指します。

日経平均も一時期を除いてほとんど波高き相場が続いています。もちろんロシアウクライナ侵攻という戦火も影響しています。相場では投資家の強弱感が対立すると、こうした波高き相場を形成します。

大きく上がったり下がったり。こういう市況では高値圏で高い波が出たら天井近し。下落トレンドのサインと見るべき。逆に底値圏で強烈な下げの波が出てきたら大底近し。上昇トレンドへの兆しともとれます。

菅下 清廣

スガシタパートナーズ株式会社 代表取締役社長