新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形が、2022年12月23日(金)~2023年1月3日(火)上演される。2017年から毎年披露するウエイン・イーグリング版は華やかでスピーディーな踊りの数々が目を惹く。2022/2023シーズンは昨季に続いて大晦日~正月にも公演を行い、オペラパレスに観客を迎え入れる。12月25日(日)と2023年1月1日(日・祝)に主演する柴山紗帆速水渉悟に、パートナーシップの深め方やリハーサルの様子、公演に向けての抱負を聞いた。

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より  /撮影:長谷川清徳

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より /撮影:長谷川清徳


 

■重ねてきたパートナーシップ、信頼の絆で魅せる

――お二方は、こどものためのバレエ劇場 2021『竜宮 りゅうぐう~亀の姫と季の庭~』でプリンセス 亀の姫&浦島太郎を演じ主演として共演したほか、『ライモンダ』タイトルロールとアブデラクマン、『眠れる森の美女』フロリナ王女と青い鳥、『パキータ』パ・ド・トロワなどで共演を重ねてきました。そこから感じているお互いの印象を教えてください。

柴山紗帆(以下、柴山) 渉悟くんと組む機会は多いのですが、力も強く頼りになります。一番印象に残っているのが『竜宮 りゅうぐう』の時で、初めて全幕作品の主演として組んだにも関わらずスムーズに物語をつくっていくことができました。私の気が付かない部分に対して「こうするのはどうですか?」と提案してくれたり、相談しながらつくりあげていきました。

速水渉悟(以下、速水) 2018年に入団して最初の演目だった『不思議の国のアリス』や『くるみ割り人形スペインでも一緒に組ませていただきました。その時から優しくて頼りにできる先輩です。僕は人見知りなので、優しく声をかけてくださったことが印象的でした。ここ数年、主役も含めて一緒に踊る機会が多いのですが、テクニックが強く、パートナーリングも組みやすくて安心感のあるパートナーです。

柴山紗帆&速水渉悟 リハーサル風景  /撮影:阿部章仁

柴山紗帆&速水渉悟 リハーサル風景 /撮影:阿部章仁


 

■満を持して『くるみ割り人形』の主演として共演!

――今回初めて『くるみ割り人形』で主演同士として組みます。昨シーズンも柴山さんがクララ/こんぺい糖の精、速水さんがドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子を踊って主演する予定でしたが、速水さんが怪我されたためお預けになり、今回満を持しての再挑戦です。『くるみ割り人形』では、これまでに柴山さんは主役のクララ/こんぺい糖の精のほか、雪の結晶、スペインの踊り、ルイーズ、蝶々、花のワルツ ソリストなどを、速水さんは青年や歩兵隊長、スペインの踊り、花のワルツ ソリストを演じてきました。新国立劇場バレエ団が2017年から上演しているウエイン・イーグリング版『くるみ割り人形』の魅力・特徴はどこにありますか?

柴山 イーグリング版ではどの役も男性に持ち上げてもらっているところが多いので、自習も一人では難しく、男性の負担が結構大きいのではないかと。今回渉悟くんと主役の練習をしていても、二人で息を合わせなければいけない部分が多いですね。スタンダードな『くるみ割り人形』よりも音に対して振りがさらに詰まっているので凄く難しいです。

速水 全体的に振りが多くて、体が慣れるまでは大変です。全部の音に全部振りが入っているようなイメージ。忙しいのでとても大変ですが、その分見応えはあるのかなと思います。

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より 柴山紗帆  /撮影:長谷川清徳

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より 柴山紗帆 /撮影:長谷川清徳

――今回のリハーサルの手ごたえはいかがですか?

柴山 振りが体に入って慣れるまでに時間がかかりますが、第1幕でクララドロッセルマイヤーの甥と踊る場面は、二人のタイミングが合うと華やかで見どころのあるものになると思います。

速水 難しいリフトなどが散りばめられていますが、それを全体の流れの中で効果的に見せていかないとといけない。一つひとつは感覚をつかんできたので、それを音にはめて感情と一緒にという点で研究中です。

速水渉悟 リハーサル風景  /撮影:阿部章仁

速水渉悟 リハーサル風景 /撮影:阿部章仁

――イーグリング版では、クララの現実と夢が対比され、「少女クララが内面的に成長していく物語」として構想されています。第2幕になるとクララの家族が別のキャラクターで表れてくるなど独特な趣向もあります。役作りに関して、お二方ならではのものをと考えている点は?

柴山 この『くるみ割り人形』は演技だけで進む部分が少なく、振りや音と一体化しながら感情や物語を表現する必要があります。昨年踊らせていただいた経験を踏まえて、クララの成長の部分や踊りと踊りの間の演技をさらに研究していきたいです。

速水 一度踊っているだけで経験値が全然違うと感じていて、今は紗帆さんに頼りながら模索中ですが、おのずと二人ならではの舞台になると思います。まだ通しでリハーサルはしていない段階ではあるのですが、身体の疲れは感じてしまうので、スタミナ面でも工夫が必要そうです。昨年、衣裳合わせはしたんです。王子の衣裳が、シャンパンゴールドのカラーで丈も長めで素敵でした。あのエレガントな衣裳を着て踊ることができるのが楽しみです。

リハーサル風景  /撮影:阿部章仁

リハーサル風景 /撮影:阿部章仁


 

 ■2023年正月は、新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』で観劇始めを!

――昨シーズンに続き、年末年始をまたいで上演されます。吉田都舞踊芸術監督が長年活躍した英国ロイヤルバレエ団と同様ですね。今回は1月1日(日)に主演しますが、お正月に踊る気持ちはいかがでしょうか?

柴山 昨年は大晦日に特別なカーテンコールがあったりして盛り上がりは一段と違いました。いままで舞台をやることが無かった時期なので、なんだか不思議な気持ちですね。でも、バレエ団の皆で新年を迎えられるのは一年の始まりとしてとても嬉しいことです。

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より  /撮影:長谷川清徳

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より /撮影:長谷川清徳

――速水さんは今回初めて年を越しながら踊る未体験ゾーンに入りますよね?

速水 うれしいです!

――公演に向けての意気込みをお願いします。

柴山 音と振りを体に入れ込んで、本番ではクララとして自然に舞台に立つことができたら。クリスマスとお正月という日に、お客様と劇場でお会いできるのが楽しみです。

速水 紗帆さんがおっしゃったように、振付を体で覚えて、音が流れればすぐに反応できるような状態に早くもっていきたいです。その上で皆さまに喜んでいただけるような味付けを考えていけるよう、頑張ります。

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より  /撮影:長谷川清徳

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より /撮影:長谷川清徳

取材・文=高橋森彦

柴山紗帆(右)、速水渉悟(左)