大金を失う投資家がいる一方、資産倍増、3倍増に成功する投資家がいます。「先読みができる人とできない人の差」は何か? 成功する投資家はどこを見ているのか? 投資のなかでも特に株式投資について「不動産投資、暗号資産などに比べ、少ない労力でリターンを得やすい」と指摘するストラテジストの菅下清廣氏が、優良株を見極めるポイントについて解説します。

投資歴の浅い人には困難極まる波乱相場

かつてない世界情勢の不安定化で市場は大混乱しています。相場は乱高下を繰り返す。プロサーファーたちのように、波動の荒い株価の波をうまく乗りきることができるかどうか、個人投資家のみなさんには極めて困難な局面が続いていることでしょう。

こういう相場では、一度深手を負ってしまうと致命傷になりやすく、あっという間に市場の舞台から振り落とされかねません。下がったときに買ったとしても、さらに下落して追い買い出動。ところがその瞬間に下がりはじめて、最後は狼狽売りという悪循環にはまる。こんなことを何度か繰り返せば大切な資産は目減りしていく一方です。

補足すると、狼狽売りとは株価が急落する様子を見て、保有している株式を慌てて売却してしまうことです。

ウォール街の格言「落ちてくるナイフはつかむな」

狼狽売りは悪手です。むしろみんなが狼狽売りをしているとき、逆に買いに出る。暗号資産の投資も同じで、暴落してきたところが本当は買い。

ただし、「落ちてくるナイフはつかむな」ウォール街のこの格言が教えるように、下降している株に不用意に手を出すと大怪我をします。ナイフをつかもうとして刃で手や指を切ってしまう。怪我をしないで落ちてくるナイフ(下落する株)をつかむには、一定レベル以上の投資技術と経験が不可決です。

「買うタイミング」を体得すれば強力な武器に

乱高下の激しい相場で、最も難しいのが「買う」タイミングでしょう。一般的には、いったん底入れをして、上がってくるまでは手を出さないというのがセオリー。しかしある程度の投資歴と経験がないと、タイミングを見極めるのは困難です。

ただ単に「下がったときに買えば儲かる」という問題ではありません。そんな簡単なことなら誰でも買えて誰でも儲かるでしょう。単に下がったときに買うのではなく、下がった後に底入れし、そこから上がりはじめるタイミングを狙うのです。そのタイミングが体得できると見違えるような成果がついてくるようになります。

「底入れした」ときがわからないと、下がってさらにまた下がる場合もある。そうなると地面にまだ落ちてない、落ちる途中のナイフをつかんでしまうことになります。

手を出せば怪我をすることは明白。気をつけなければなりません。チャートを毎日見ていても、ここが理解できていないと「買い」のタイミングをはずすでしょう。

投資のプロは「悪材料で買い」「好材料で売る」

「買い」と「売り」、どちらのタイミングでも、参考にする情報、判断の根拠にする材料(情報)の選別が大切です。みなさんは材料(情報)を新聞やテレビ、各種メディアから得ていると思います。無数の情報のなかから何を選ぶか、何を選んで参考にするか。その判断基準が投資の成否に大きく影響します。

そこで決め手となるのが、買い材料(情報)、売り材料(情報)の選別です。買い材料はいい情報で、「買い」の根拠。売り材料は悪い情報で、「売り」の根拠となる。

ただし投資のプロは、悪材料で買い、好材料で売るという方法で成功することが多いのです。逆張りは基本的な投資手法ですが、一般の投資家には「言うは易く行うに難し」でしょう。

悪材料で買い、好材料で売るとは、たとえば戦争で相場が値崩れし、下落トレンドのとき、有力株も同調下落して超安値となったところに買いを入れるのです。戦乱で仮に停戦合意が成立したならば、これは材料としては「売り」。好感していったん上がってもその後調整して下がるためです。

また「停戦しそうだ」という前情報で株価はいったん上げますが、停戦交渉が難航、延期、あるいは失敗すれば再び下げます。日経平均もダウもナスダックもこれは同じ。有事の際はそれを繰り返します。

波高き相場では全力投球しない。「休むも相場」…

現在のような波乱含みの相場は、波高き相場です。上がったり下がったりの繰り返しで投資家は揺さぶられっぱなし。

私は個人投資家のみなさんには、波高き相場では全力投球で投資しないよう、講演会などで注意を促しています。相場の格言にあるように、「休むも相場」だからです。

腕とお金に自信のある人は波乱相場でもチャレンジしていいでしょう。投資の上級者は、波乱相場は株価が動くので、利幅を取りやすいことを経験から熟知しています。つまり上級者は、悪材料で買って好材料で売れる人なのです。だから儲けることもできる。

菅下 清廣

スガシタパートナーズ株式会社 代表取締役社長