冬季に流行することで知られているRSウイルス感染症ですが、特に2022年は夏場から大きな流行しています。本記事ではRSウイルス感染症について解説します。

RSウイルスとは?

RSウイルスの「RS」は、その特徴から、呼吸器の(Respiratory)合胞体を作る(Syncytial)ウイルスというところから名付けられました。気道の感染症を引き起こす代表的なウイルスで、3歳までにほぼ100%の乳幼児が感染すると言われています。

感染しても完全な免疫が獲得できるわけではなく、一生のうちに何度でも感染しますが、一般的には初めて感染したときに一番症状が重くなり、その後、感染を繰り返すうちに普通の風邪と見分けがつかなくなっていきます。RSウイルスの初感染の年齢が小さいほど、重症化するリスクが高くなります。

RSウイルスの症状は年齢や月齢によって、大きく異なる

◆RSウイルスの症状:新生児から生後3ヵ月程度まで

多くは家族から感染してしまうこの時期は、母親由来の抗体があるとはいえ、発病してしまうと重篤になりやすいので細心の注意が必要です。

一般的にRSウイルス感染症は、鼻水が多く出やすく、特に幼い時期は哺乳に影響します。鼻をすすったり、かんだりといった処理ができないので、鼻が詰まってしまうだけで、母乳やミルクが飲めなくなってすぐに脱水に陥ってしまいます。

RSウイルス感染症は、通常5日程度の潜伏期の後、数日鼻水が続いたあとから微熱あるいは38℃から40℃の発熱が見られます。生後3ヵ月以内は、発熱があれば基本的に入院が考慮されるべき月齢でもあるため、この時点で多くが入院することになります。

さらに、特に新生児では呼吸中枢に直接関与して、呼吸を止めてしまう「無呼吸発作」を起こす可能性があります。こうなってしまうと、ウイルスの影響がなくなるまで、人工呼吸器で呼吸を補助しなければいけないこともありますので、新生児のRSウイルス感染症は特に注意が必要です。

◆RSウイルスの症状:生後3ヵ月から1歳前後まで

この時期からは、無呼吸発作は起こしにくくなりますが、まだまだ哺乳でしか栄養が摂れないので、鼻水や鼻づまりでしんどくなりやすい時期です。

また、RSウイルスは他のウイルスよりも、気管支がたくさん枝分かれした先の細い部分、つまり「細気管支」に炎症を起こしやすく、だいたい2割から4割くらいの子どもで細気管支炎や、肺実質の炎症である肺炎を合併します。

気管支炎になると、激しい咳と、喘息様のゼイゼイとした苦しい呼吸となり、血中の酸素の濃度が下がって酸素投与が必要になったり、ひどい場合には呼吸の補助が必要になったりすることもあります。

また、乳児早期にRSウイルス感染症にかかった子どもは、その後喘息のような症状を繰り返す「反復性細気管支炎」の状態になったり、5歳くらいまでに気管支喘息と診断されるリスクが高まったりすることも分かっています。

◆RSウイルスの症状:1歳以降

1歳以降でも、2~3歳くらいまでは細気管支炎でゼイゼイしたり、肺炎になったりすることもありますが、子どもの体力も付いてくるのと、初感染の子どもが減ってくるので、重症化する頻度は減ります。

それでも高熱が出たり、微熱が長く続いたり、長引く鼻水から中耳炎や副鼻腔炎を起こしたり、など、通常の風邪ウイルスよりも症状が重く、合併症の頻度も高いと言えるでしょう。

小学生以上になれば、通常普通の風邪とほとんど見分けがつきませんが、心臓や呼吸器の持病があったり、早産で生まれたりする子どもは、やはり抵抗力が低いので重症化しやすく、注意が必要です。こうしたリスクの高い子どもは、0歳から2歳くらいの間、月に1回接種する、予防のための抗体注射が適応になることがあります。

RSウイルス感染症の診断と受診の目安

RSウイルス感染症は比較的感染力が強く、しばしば保育園などでも低年齢児の間で大流行します。主な感染経路は飛沫感染で、子どものよだれや排泄物などにウイルスが含まれています。

「周りでRSウイルスが流行している」という情報があれば、鼻水や細気管支炎といった臨床的特徴からRSウイルス感染症の診断をつけることができますが、確定診断のためには、鼻咽頭のぬぐい液からRSウイルスの抗原を検出します。

最近は1回の検査で新型コロナウイルスやRSウイルスなど複数のウイルスをPCRで検出できる検査機械を導入している施設もあります。ただし、健康保険でRSウイルスの検査をできるのは1歳未満の子どもか、前述の抗体注射を行っている子ども、または入院治療が必要になる子どものみで、それ以外は行うとしても自費検査となります。また、現時点では特効薬もなく鼻水吸引や去痰薬などの対症療法でしか治療ができないため、検査で診断確定してもあまりメリットがありません。

RSウイルスであっても、他の風邪であっても、大事なのは子ども自身の状態で、呼吸が苦しそうにしていないか、水分は摂れているか、ぐったりしていないか、ということです。いつもの風邪と違う様子があれば、今のままのケアでいいのかも含めて、小児科医にアドバイスを求めるとよいでしょう。