朝鮮人民軍航空及び反航空軍(北朝鮮空軍)の苔灘(テタン)飛行場の無人機(ドローン)大隊の副大隊長が軍事裁判にかけられ、死刑判決を受けた。刑は今月10日に執行されたと、デイリーNKの軍内部情報筋が伝えた。

北朝鮮は2015年に無人機部隊を立ち上げ、韓国との軍事境界線に近い苔灘に、自爆型ドローンを配備してきた。副大隊長は部隊の立ち上げから関わり、ドローン技術運用分野の責任を負った貫禄のある指揮官だったという。

軍は今年10月に大規模な演習を行ったが、総参謀部と国防省の指示を受け、10月中旬から、演習の過程と、戦闘準備の実態に関する検閲(監査)を行った。その結果、坑道に格納されていた4機のドローンが、くず鉄同然の状態になっているなど、日常的なメンテナンスが行われておらず、稼働できないことが判明した。

その責任を問われた副大隊長は、空軍司令部検察所により逮捕。50日間の取り調べを受けた上で、処刑されたという。

逮捕から処刑まで50日しかかからなかったことは異例の速さだ。軍内部からはこんな声が上がっている。

「苔灘無人機部隊はまともな訓練を行ったことがなく、総参謀部や国防省装備総局も、今まで技術的な部分に全く気を使っていなかった。たまたま検閲で問題になったから、責任指揮官スケープゴート(いけにえ)にしたのだ」

総参謀部と国防省装備総局は大規模な演習後に、人員と装備について点検と報告を行うことになっているが、最高司令部、つまり金正恩総書記の大きな期待を受けていたドローンが、メンテナンス不足で錆びた鉄の塊と化していたことをもみ消すには、あまりにも政治的負担が大きいと考えたようだ。

そこで、責任を副大隊長になすりつけ、さっさと殺してしまったというのが、情報筋の説明だ。

責任は現場にのみあるのではなく、上級幹部にもあるが、責任が問われる事態となれば、自分たちの首が物理的に飛ぶことになりかねない。それを避けるために、下級幹部に罪をなすりつけて、重罰に処す。

自分が生き残るためには、部下の首を差し出す。それが北朝鮮の「処世術」なのだ。

北朝鮮軍の無人航空機(ドローン)