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史上最軽量、蘇った純粋な一滴

今回が自動車メディア初仕事だという20代の写真家、村田研太郎くんがケータハム・セブンを目の当たりにして「宇宙船みたい!」とつぶやいた。世代が違えばそんな新鮮な見方もあるんだなぁと感心させられた。

【画像】生きた化石!? 車重たったの440kg ケータハム・セブン170Rをみる【ディテール】 全41枚

1957年製から現行車まで65年ほどの間に登場したセブンのほぼ全てに触れたことがある筆者にとっても、今回のセブン170Rは「単なるセブンの新車」ではない。

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ケータハム・セブンの車重170Rは、史上最軽量、僅か440kgしかない。一時生産が途絶えていた軽規格のセブンが、より純度を高めて復活した。標準の「S」と今回から追加されたサーキット狙いの「R」から選べる。

プレスリリースによれば、その車重は史上最軽量、僅か440kgしかないという。いや待てよ、1957年の初代ロータス・セブンは400kgを切っていたはず! と思って確認すると「ケータハム史上」と書いてあった。ナルホド、さすが。

軽自動車規格のセブンが初登場したのは2013年のこと。スズキ・ジムニーのパワートレイン(660cc、3気筒エンジン+5速MT)とエブリィのリアアクスルを装備した日英合作のライトウェイトスポーツカーケータハム人気を再燃させた。その理由はパワーや軽さが原初のセブンのそれに近かったから。

だとすれば今回のセブン170Rは純粋さという点で先代の160を凌ぐ1台といえるのかも。一時生産が途絶えていた軽規格のセブンが、より純度を高めて復活したことは大いに歓迎すべきことだといえるだろう。

軽セブンが消えた空白の2年間、なぜ?

先代のセブン160は2019年に生産を終えている。なぜか?

ジムニーの代変わりでエンジンの生産が終了したから。

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カーボンブラー製のシートは、その薄さゆえ光を透かす。試乗車はカーボン系のオプション(ノーズコーン、前後フェンダー、シート等)がテンコ盛り。おそらく440kgよりさらに軽い個体なのである。

それから170登場までの空白の2年間は、スズキが新型ジムニーの生産に追われ英国にコンポーネンツを送る余裕がなかったという理由による。

170の心臓は現行ジムニーをベースにチューンされた660ccの3気筒ターボで、最高出力は160より5ps増しの85ps。

また170は標準の「S」と今回から追加されたサーキット狙いの「R」という2つの仕様から選べるようになった。

今回の試乗車は170「R」で、しかもカーボン系のオプション(ノーズコーン、前後フェンダー、シート等)がテンコ盛り。おそらく440kgよりさらに軽い個体なのである。

最高出力は85psなので1t当たりの出力は193ps! 速さは必要にして充分なはずだが、セブンの価値は「軽さ」によって決まるもの。バイクのような車重がセブン170にどのような可能性を与えているのだろうか?

カーボンブラー製のシートはタイトだが、そもそもコクピットの幅がタイトなのでシートはその寸法に従っただけなのだろう。

ドライバーの眼前のカーボン製レーシングスクリーンがあまり良い仕事をするとは思えないので、乗員は防弾スペックゴーグルが必須となる。

さあ走り出してみよう!

軽さ、あらゆるネガティブを払しょく!

Rの文字が刻まれたシフトレバーは左右の動きが規制され、素早いシフトを可能にしている。

加速は今どき珍しいくらいの「ドッカンターボ」で、シフトアップの度に突き刺すようなパンチが繰り出される。

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155幅ゆえ最大過給の瞬間にホイールスピンすることもあるが、コントロールは容易い。乗り心地は記憶の中にある粗野なレーシングセブンのそれではなく振動をスッと吸収するフレームと良く動くアシの存在がパラレルに伝わってくる。

だが誉めるべきはやはり軽さだ。必然的にターボが効かない低&高回転域も、車体の軽さのおかげで加速感がほとんど鈍らないのである。

ブレーキも強烈に効くが姿勢変化は最小。タイヤが155幅と細いので最大過給の瞬間にホイールスピンすることもあるが、そのコントロールは容易い。これもタイヤが細い→車重が軽いことによる恩恵なのである。

とはいえ車重が軽いからこそ路面が少し粗いだけでバタバタ跳ねてしまうという性格もセブンは含んでいたはず。ところが170Rの乗り心地は記憶の中にある粗野なレーシングセブンのそれではなかった。

170Sとは異なるスポーツサスが組み込まれているにもかかわらず、振動をスッと吸収するフレームと良く動くアシの存在がパラレルに伝わってくる。

また「軽トラ」のリジッドアクスルを流用したリア足回り形式であるにも関わらず、左右に切り返したときの姿勢変化がとても滑らかで驚かされた。以前のセブン160はその部分がもっと曖昧かつ突っ張っていたような?

見えにくい部分に退行的進化の跡あり

車体下からリアサスを覗き込んでビックリ。160では斜め1本棒のパナールロッドだったリアアクスルの左右位置決めが、ロータス伝統のAブラケットによる中央支持に変わっていたのだ。最新のセブンは構造的な先祖返りも果たしている(?)

しかも重要なのは、それが技術的な退化ではなく、コーリン・チャプマン由来の理想形であるという点だろう。

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160では斜め1本棒のパナールロッドだったリアアクスルの左右位置決めが、170はロータス伝統のAブラケットによる中央支持に変更。技術的な退化ではなく、コーリン・チャプマン由来の理想形といえる。

また以前は日本のクスコLSD軽トラが泥濘地から脱出するための強固な設定)が組み込まれていたが、それが170Rではイギリス、クワイフ社製の専用LSDに置き換わっている点もマニアックなポイントだ。

イギリスの小規模メーカーの作品の中には懐かしさを愛でるものもあるが、セブンは「ガラパゴス」とはいえ65年もの間ずっと進化を模索し続けてきた歴史がある。

一時はハイパワーに活路を求めたスタイルが称賛されたが、急速に「雷雲」が発達している今になって、軽さと伝統的な構造にフォーカスを当て、根源的な進化を成し遂げたというわけである。

撮影の最後、セブン未体験だという写真家の村田くんを助手席に乗せ、彼の絶叫を大いに楽しんでみた。

そう、真のスポーツカーは乗り手の心拍数を限界まで引き上げ、笑顔を引き出すようなものであるべきだ。

ケータハム・セブン170Rのスペック

価格:599万5000円
全長:3100mm
全幅:1470mm
全高:1090mm
ホイールベース:2225mm
最高速度:168km/h
0-100km/h加速:6.9秒
燃費:-
CO2排出量:-
車両重量:440kg
パワートレイン:直列3気筒658ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:85ps/6500rpm
最大トルク:11.8kg-m/4000-4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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ケータハム・セブン170R

軽規格のセブン復活! ケータハム・セブン170Rに試乗 車重440kg 待望R仕様