米労働省は12月16日、米アマゾン・ドット・コムの6つの倉庫施設で、従業員のけがや病気に関する情報を報告していないことが判明したと明らかにした

JBpressですべての写真や図表を見る

労災データ記録義務を怠った疑い

 米労働安全衛生局(OSHA)はサイテーションと呼ばれる「召喚状」を発行した。アマゾンは15営業日以内に2万9008ドル(約395万円)の罰金を支払うか、労働安全衛生審査委員会に異議を申し立てることになる。

 OSHAは2022年7月、ニューヨーク州南地区の連邦検事局からの照会を受けて、フロリダ州デルトナやイリノイ州ウォキーガン、ニューヨーク州ニューウィンザーにあるアマゾン倉庫の調査を開始した。22年8月にはコロラド州オーロラ、アイダホ州ナンパニューヨーク州キャッスルトンでも同様の調査を始めた。

 OSHAよると、アマゾンのこれらの施設では労働災害データの記録義務を怠っていたという。具体的には、従業員のけがや病気について、記録しない、義務付けられている時間内に記録しない、誤分類する、期限内にOSHAに報告しない、など計14の管理違反があった。OSHAによる調査は現在も進行中だという。

 労働安全衛生担当次官補のダグ・パーカー氏は「職場での健康と安全の問題を解決するには、けがと病気の記録を正確かつ透明にする必要がある」とし、「アマゾンのような規模の企業では、多数の労働者に重大な結果をもたらす可能性があり、正しく記録しなければ再発防止策を講じられない」と指摘した。

アマゾン、「体系的なものではない」と反発

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンの広報担当者は「長年にわたって少数の管理ミスがあった可能性があることは認めるが、当局に報告した数字には自信がある」とし、「アマゾンでは安全性が最優先事項であり、OSHAが言及した問題は体系的なものではない」と反論した。

 アマゾンは近年、荷物の保管や仕分け、発送に使用される施設での安全手順について複数の規制当局から調査を受けている。カリフォルニア州ニューヨーク州も独自に調査している。21年12月に発生した竜巻がイリノイ州のアマゾン倉庫を崩落させ、6人の従業員が死亡した事故の後にはOSHAの調査にも直面した。だが、このときOSHAはアマゾンの安全対策について問題をいくつか指摘したものの、罰金は科さなかった。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この数年間、アマゾンの倉庫では同業他社の倉庫よりも高い労災発生率が示されている。同社は以前、他の企業よりも慎重に事故を報告していると述べており、同社の労災発生率が他社に比べ高く見えている可能性もあるという。

 ただし、アマゾンの一部の従業員は、一定時間にこなすべき仕事量の多さに不満を漏らしている。従業員は通常、1時間に数百もの商品を仕分けしたり梱包したりする必要があり、多くの場合反復動作になる。

カリフォルニア州で倉庫ノルマ規制法

 カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は21年、アマゾンなどの雇用主に対し、州内の労働者に適用されるノルマや職場生産性施策を開示することを義務付ける州労働法の改正案に署名し、法が成立した。

 倉庫ノルマ規制法とも言われるこの州法「AB701」では、休憩やトイレ利用の制限を含め、従業員の健康と安全に影響を及ぼすノルマや罰則を設けることを禁止している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は22年初め、同社の労災発生率は「時々誤解されている」と述べたが、「改善する」と明言した。

 その一方で、アマゾンはオートメーション化への投資を拡大している。同社は22年11月、世界18の国・地域から報道陣を招き、マサチューセッツボストン市郊外のロボット開発・製造拠点を公開した。同日初公開したのは、倉庫で商品の仕分けを行う最新のロボットアーム「Sparrow(スパロー)」だ。

 AI(人工知能)を活用し、異なる商品の形や色などを瞬時に認識。アームの先端で吸い上げて、仕分け用の箱の中にそっと置く。アマゾンによれば、Sparrowは同社総在庫の約65%に相当する数百万点の商品を取り扱える。このロボットはいずれ倉庫での一部の仕事に取って代わる可能性があるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  アマゾン、コスト削減も倉庫ロボットへの投資は続行

[関連記事]

Amazon、大規模な人員削減を認める 1万人に影響か

アマゾン、物流業務の自動化加速 ベルギー企業買収

Amazonのフルフィルメントセンター(写真:ロイター/アフロ)