「ポケモン」のストーリークリア後の楽しみといえば、やはりランクバトル。『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット(以下、ポケモン S・V)』では、新ポケモン・アイテムの登場に加え、自由にタイプを変えられる新システム「テラスタル」が登場したことで、前作『ソード・シールド』とはまた違ったバトルが楽しめる。すでにポケモンを育成し、ライバルたちとの熱い戦いに挑んでいる人も多いだろう。

参考:【画像】ランクシーズン「シリーズ1」で活躍中のポケモンたち

 なお、12月2日から開始した本作初のランクシーズン「シリーズ1」では、いわゆる「準伝説」ポケモンなどの使用が禁止されている。そのため、ランクバトル解禁前には活躍すると思われていた強力なポケモンが使えない代わりに、それまでは評価が低めだったポケモンが活躍しているようだ。

 まだ育成が十分ではない人にとっても、どのポケモンが活躍しているかは気になるところだろう。そこで本稿では、そんなポケモンバトルのシングル戦の現環境や、バトルをプレイしてみた所感をお届けする。バトルの手助けになれば幸いだ。

ドラパルトミミッキュの強さは健在

 前作『ソード・シールド』でも採用が多かったドラパルトミミッキュなどのポケモンは、本作でも強力だ。ドラパルトは現環境トップを誇る高い素早さを活かし、先制を取れるアタッカーとして人気。一方のミミッキュは、特性「ばけのかわ」で攻撃を耐えられる安定性から、本作でもトップクラスに人気なポケモンとなっている。

 この2匹はテラスタルを使用して火力を上げられるのが強力で、ドラパルトドラゴンテラスタルからの「ドラゴンアロー」で相手の受け(HPや防御力などが高い)ポケモンを比較的ラクに倒すことが可能。一方のミミッキュは「つるぎのまい」を使用した後、ゴーストテラスタルから先制技の「かげうち」を使用することで、3匹抜きも狙うことができる。

 ほかにも「きのこのほうし」を使用できるキノガッサモロバレル、「ちょうのまい」を積むことで3匹抜きを狙えるウルガモスなども、本作では強力。特にキノガッサは『ソード・シールド』では未登場だったため、本作でその強さを知ったという人も少なくないだろう。

 また、自分より素早さが低いポケモンにめっぽう強いサザンドラも、現在行われている「シリーズ1」のルールでは活躍中。前作でも一部のポケモンが使用できなかった初期環境で活躍したが、本作では「はがねテラスタル」で、弱点のフェアリータイプに強く出られる安定性を得たことで、より脅威となっている。サザンドラは本稿執筆時点でかなり流行しているため、今後はサザンドラに強く、はがねタイプが弱点ではないマリルリなどのポケモンが環境に増えていきそうだ。

 また本作で強化されたポケモンのなかでも、新しく「すてゼリフ」を覚えるようになったオーロンゲは強力。特性「いたずらごころ」を活かした「リフレクター」&「ひかりのかべサポート」として前作でも活躍したが、相手の火力を下げながら退場できる「すてゼリフ」を得たことで、安定性が上昇した。

 また、過去作のポケモンのなかでもテラスタル+先制技の動きが強力なハッサムカイリューも注目されている。ちなみに筆者は今後、「テラバースト」で技範囲が広がったパルシェンや、テラスタルでタイプ一致「じしん」が放てるようになったオノノクスが注目されるのではないかと予想している。どちらのポケモンも、積み技でステータスを上昇させられれば3タテが見えてくるポケモンなので、新たに攻撃技の選択肢が増えたことで、評価が上がってくるのではないだろうか。

キョジオーンサーブゴー……新ポケモンが活躍する条件は”強力な特性”?

 一方、今作から登場した新ポケモンでは、やはり強力な特性をもつものが活躍している。なかでも特に強力なのが、特性「きよめのしお」で状態異常にならず、ゴーストタイプのわざを半減するキョジオーンと、「おうごんのからだ」で変化技を無効にするサーフゴーの2匹で、多くのトレーナーに使用されている。

 キョジオーンは高い防御・特防を生かした受けポケモンで、毒状態にならないため「どくどく」などを受けてHPを削られることがない。さらには専用技「しおづけ」で相手のポケモンに毎ターンダメージを与えたり、「てっぺき」で防御力を上げてから「ボディプレス」を使用したり、「じわれ」で相手の受けポケモンを一撃で沈めたり、挙句の果てには「じこさいせい」まで覚えるなど、とにかく強い。過去作の序盤に手に入る「いわタイプ」の最終進化ポケモンといえば、ゴローニャセキタンザンなどバトルではパッとしないポケモンばかりだっただけに、キョジオーンの強さには驚かされた人も少なくないだろう。

 一方のサーフゴーは「ゴースト・はがね」タイプであるため、防御側では3つのタイプを無効、9つのタイプを半減にできるという堅さが魅力。高火力の専用技「ゴールドラッシュ」や、もともと高いとくこうをさらに上げられる「わるだくみ」を覚えるのもポイントだ。

 また、さまざまなアイテムと組み合わせた複数の“型”を持っており、現環境では「こだわりスカーフ」「こだわりめがね」を持ったアタッカー型や、「たべのこし」や「ふうせん」を持って有利なポケモンに対して「みがわり」を使用し、「わるだくみ」で火力を上げていく型、さらには流行しているキョジオーンの「しおづけ」対策に、新アイテム「おんみつマント」で技の追加効果を無効にするような、環境メタ型なども存在する。

 どのアイテムを持っても強力なサーフゴーだが、キョジオーンに比べると隙も多く、ドラパルトサザンドラなどのアタッカーと殴り合いをすると、分が悪くなりがちという弱点はどの型にも共通している。

 そのほかの新ポケモンでは、特性「てんねん」で相手のステータス上昇を無視できるラウドボーンヘイラッシャドオーなども一部のパーティーで使用されている。

 また、前評判ではそこまで注目されていなかったポケモンも、今回のレギュレーションでは活躍している。特に高い素早さに加え、特性「へんげんじざい」「はたきおとす」「とんぼがえり」などで小回りがきき、キョジオーンに対して「トリックフラワー(必ず急所に当たる技)」で弱点をつけるマスカーニャや、攻撃を受けるたびに火力が上がる専用技「ふんどのこぶし」の効果が、手持ちに引っ込めても持続されるコノヨザルも流行を見せている。

 筆者が注目しているのは、環境に多いゴースト・ドラゴンフェアリーに強くでられる「あく・はがね」タイプのドドゲザンだ。ステータスも高く、タイプ一致の「ふいうち」の火力をテラスタルで上げられるだけでなく、倒された味方ポケモンの数だけ攻撃力が高まる特性「そうだいしょう」で一発逆転も狙えるからだ。ドドゲザンは現在のランクバトルでも徐々に見られるようになってきたので、ぜひ使ってみてほしい。

■環境で強いゴーストタイプに対するあくタイプと、キョジオーンの存在がカギ

 今回の内容をまとめると、ドラパルトミミッキュサーフゴーを筆頭にしたゴーストタイプと、そのゴーストタイプの弱点をつける、あくタイプサザンドラマスカーニャ、そしてゴーストタイプの技で受けるダメージを特性で半減できるキョジオーンなどのポケモンが強力な環境だといえるだろう。

 また、『ソード・シールド』と同じく「りゅうのまい」や「ちょうのまい」といった、素早さと火力をあげる積み技を使用できるポケモンも強力で、その対策に「てんねん」持ちの受けポケモンが人気を集めている。

 他方、はがねテラスタルサザンドラが流行したり、キョジオーンの「じわれ」をうけないように、ひこうテラスタルの受けポケモンを使用したりと、テラスタイプの活用についてもさまざまな検討がなされている。

 強力なポケモンとテラスタイプの組み合わせができたことで、”対面不利のポケモンテラスタルして逆に有利にする動き”をさらに読んで控えのポケモンに交換したり、相手にテラスタルを使用させることによって、後続のポケモンで弱点をつけるようにするといった風に、テラスタル絡みの立ち回りも奥深くなっており、筆者はランクバトルを非常に楽しめている。

 環境で強いポケモンが固まってきたからこそ、今後はそれらに強くでられるテラスタイプをもったポケモンが研究されていくのではないだろうか。

 現環境での一番のネックは、ポケモンのテラスタイプ変更に必要な「テラピース」入手のために、レイドをそれなりに周回する必要があることだ。まだランクバトルに挑戦していない人の中には、レイド周回が面倒くさい・時間がないという人も少なくないだろう。

 この点に関しては、今後のアップデートでテラピースが手に入りやすくしたり、必要な量を緩和してもらうことを期待したいが、テラスタイプを変更する必要のないミミッキュなどを中心にパーティを組んだり、SNSなどで公開されている実力者のレンタルパーティを使用すれば、気軽にバトルに挑むことも可能だ。特にレンタルパーティはすぐに強力なポケモンを使用できるので、ランクバトルが気になっている人はぜひ試してみてほしい。
(堀江くらは)

『ポケモン スカーレット・バイオレット』より