スポーツ界で2022年に起こった印象的な出来事を『CoCoKARAnext』のヒット記事で振り返るこの企画。今回は、プロ野球からキックボクシングに転向した相内誠のインタビューだ。格闘技界で1年目を迎えた悪童が、西武ライオンズ入団当時を振り返り、衝撃の事実を語った。記事初掲載:2022年1月14日

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 いよいよ本気を見せる。キックボクシングの「RISE FIGHT CLUB」(2月16日、新宿フェイス)の記者発表が14日、都内で行われた。注目はRISEに1年ぶりの参戦となる元プロ野球選手の相内誠(27)。対戦相手は元Jリーガーの安彦考真(43)と元野球選手と元サッカー選手という異色の経歴どうしのぶつかり合いが注目を集めそうだ。

 元西武ライオンズの投手・相内誠がキックボクサーとしてデビューしたのが2021年2月。それ自体が仰天のニュースだったが、もうすぐ丸1年というタイミングで組まれたマッチメイクは、VS安彦考真という元Jリーガー!! つまり元野球選手と元サッカー選手キックボクシングルールで闘うなんて奇想天外な話が実現する。いったいどーなっているのか。かつて「房総のダルビッシュ」と呼ばれた相内を直撃した。全6回の第3回。(聞き手=Show大谷泰顕)

【動画】わずか25秒!相内誠が衝撃のクロスカウンターで失神KO勝ち「BreakingDown」


――相内選手って、ネット上にある略歴を読んでいくと、いわゆるやらかし系ですよね(笑)。
「そう思います」

――非常に楽しみが広がります。
「褒められているのかわからないですけど」

――素朴な疑問ですけど、子どもの頃からプロ野球選手になりたかったんですか?
「なりたくてもなれると思っていなかったので。結構、早い段階から現実を見ていたんですよ。もちろんなれるものならなりたいとは思っていましたけど、自分の能力と現実を照らし合わせた時に無理だなっていうのは感じていたので。それが何か、運も重なり、とんとん拍子でそうなったんですよね」

――もしプロ野球選手になっていなければ、何になっていたんですか?
「うーん…、もしかしたら少ない可能性で社会人野球をやっていたか。『プロに行かなかったら、ウチに来てくれ』っていう企業さんは多かったので」

――社会人野球に。
「もしくは、格闘技には挑戦していたと思います」

〔高校時代に相内が通っていたジムの会長曰く、「必ずチャンピオンになれる」と太鼓判を押されていたという。ただ、相内が入団した2013年はまだRIZINもなく、格闘技のテレビ中継もなかったことから格闘技への挑戦よりもプロ野球行きを決めるのは当然の選択だった〕

――全くの門外漢なので質問しますけど、ドラフト会議で指名されるかどうかは事前に教えてもらえるんですか?
「分かる人と分からない人がいるんですよ」

――どういうことですか?
「調査書っていうのが届かないと指名はされないんですけど、それが11球団から来ていて」

――12球団中の11球団から!!
「調査書が届いても指名されない場合もあるんですけど、可能性がありますっていう感じで、1位に指名される人以外は、もしかしたら指名されないかもしれないっていう状況でその日を迎えますので、指名されるのかは分からなかったですね」

――ドラフト会議のテレビ中継を見ていると、記者会見の場が用意されたりするじゃないですか。
「一応、用意はされていましたよ。嫌でしたね。いろんな人が指名される度に、カメラを顔に向けられて。もし指名されなかったらどうするの? って思って。あれは緊張とかっていうよりも、単純に嫌でしたね。ヤメてくれと思いました」

――結果的に西武ライオンズから2位で指名されました。1位指名もありえた選手だったとか。
「そういう話もありましたね。でも早い段階で指名されて良かったと思いましたね」

――そういう時って、『これで自分の就職先が決まったぞ』って思うものなんですか?
「どうだったんですかね。その時は18歳ですし、プロ野球の球団から自分の名前が出たっていうところで、『え? ホントに?』っていうか、なぜか疑いがあったんですよね(笑)」


――ネット上には相内選手が「2013年に西武ライオンズに入団した時の契約金が7千万円、年俸が700万円」と書かれていました。もの凄い金額ですよね。
「18歳からしたら、意味がわからない金額ですよね」

――通帳にその金額が振り込まれるわけじゃないですか。
「ええ」

――その数字を見て、どう思うんですか?
「僕、その時に口座を作って、そこに振り込んでもらったんですけど、本当に振り込まれるのかなって銀行に記帳しに行ったんですよね。そしたら、まだその段階では税金を引かれる前の7千万円っていう金額が見られたんですよ」

――おお!
「それを見て、本当に振り込まれた…」

――話を聞いていくと、苦労もなくと言ったら失礼ですけど、あまり努力して、という感じには思えないんですけど、もちろん高校時代に野球をやっていた頃は、充実感があったわけですよね?
「充実感…もなく、本当に『無』で野球をやっていたので。それが当たり前だと思っていたので。それが大きな間違いだって事に、後々気づくんですけど」

――どういうことですか?
「『充実』じゃなくて『無』でやっていたら、たまたまうまく行っていたんですよね。だから工夫とかしていなかったんですよね。ホントに楽しく野球をやっていただけだったので。それが良かったんですけど、プロ野球ってなるとお仕事なので考えないといけなくなってしまい…。それが自分の感覚とズレてしまった所ではあったんですけど」

――仮の話、相内選手がたまたまだったとしても、たまたまなりたくてもなれない人がいっぱいいるわけじゃないですか。
「そうですね」

――「楽しくやっていたら入っちゃいましたぁ」なんて、すごい話です。
「だからそういう人も中にはいるって事ですね(笑)。いろんな人に話を聞きましたけど、小さい時から野球選手になりたいと思って努力してきた人がほとんどだと思うので。僕は自分の才能をそこまで評価していなかったというか、無理だろうって思っていたので、そこを運でカバーしていた感じですね、正直」

[文:Show大谷泰顕]

「契約金7千万円が振り込まれた通帳を見て? 本当に振り込まれたって思いました」元西武の投手でキックボクサー・相内誠が激白【2022回顧録】