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 スイスの採石場で働く世界最大のEV(電気自動車)の「eDumper」はただ単に巨大なだけではない。環境にやさしいゼロ エネルギー車両の期待をになうダンプカーだ。

 産業界も注目の「 eDumper (イーダンパー)」は現場の坂を上手に利用。必要なエネルギーのほとんどを自らのブレーキングシステムで生成するため最小限の充電で仕事をこなせるという。

 EV史上最大かつ最強のバッテリーで可能な限りの自給自足へ。大型の働くクルマの脱ディーゼル化を後押しする eDumper をみてみよう。

【画像】 コマツのダンプカーを電動に。世界最大のEV「eDumper」

eMining AG - eDumper

 世界最大のEVで知られる「eDumper」。この車両はかつて日本の産業機械メーカー、コマツ製のディーゼルダンプカーHD 605-7だった。それを改造し、エンジンを電気モーターと巨大なバッテリーに置き換えている。

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 スイスの機械装置施工請負業者 eMining AG、スイス連邦材料試験研究所Empa、スイスのベルン応用科学大学などの合弁事業として始まったそのプロジェクトは18カ月もかかったが、2018 年にはスイスのベルン州の採石場で初の運転をお披露目できた。

 Empaによると、eDumperはEV史上最大となる重さ4.5トンのバッテリーを搭載。その重さは乗用車2台分の重量に相当する。

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 なお車両自体の重量は58トン、最大積載量は65トン。石を限界まで積めば合わせて123トンという途方もない重量になるが、その重さのおかげで eDumper が発電ができるのだ。

採石場の下り坂で生じたエネルギーを変換して充電

 「こんなにでっかい作業車に燃料の持続可能性を問うなど無意味」という声もありそうだが、このプロジェクトの焦点の一つはまさにそこだった。

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 世界最大のEVの設計に取り組んだチームは、初めから高所の採掘場から掘り出された石灰や泥灰岩を低所の加工場まで運搬する状況を想定していた。

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 丘の上の採掘場で大量の石を積んだ時の位置エネルギーをブレーキを通じて変換し、坂を上るときのエネルギーに利用することを考えていたのだ。

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 eDumperは荷物を積んで下るとき、回生ブレーキでエネルギーを生み出し、そのエネルギーを巨大なバッテリーに蓄える。

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image credit:Empa

 重量が増せば増すほど発電量も増加し、最大123トンで採石場の斜面を上るのに十分なエネルギーを発電できる。

完全自給自足は困難。冬は毎日数時間の充電が必要

 Empaによると、この巨大EVダンプは年間30万トン以上の石を運搬し、10年間で1,300トンのCO2と50万リットルのガソリンを節約できる。

 一方で毎日使うエネルギーすべてを発電でまかなうのは難しいそうだ。

 当初から自給自足を目指していたeDumperだが、現実は理想どおりとはいかず、さすがに充電不要の域には達していない。

 特に冬場はバッテリー駆動にむかないため、短時間の充電を毎日行う必要がある。

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 またコストの問題もある。実は eDumper 自体のコストはもともとのディーゼルコマツ605-7 HDダンプトラックのおよそ2.5倍と高価で、投資目的なら割に合わないと考える企業も多そうだ。

 電動ダンプカーとしての費用対効果は決して高くない eDumper。だがこの車は採石場で働くような大型車両でもEV化が可能という証でもある。

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 坂を行き来するお仕事ならではのエネルギー節約システム。にしてもこんな大きなダンプカーが電動でしかもほとんど充電しなくていいなんてほんとすごいや。

References:odditycentralなど /written by D/ edited by parumo

 
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世界最大の電気トラック「eDumper」車両重量は58トン、最大積載量は65トン