米ネットフリックスNetflix)が新たに始めた広告付き動画配信サービスの出足が鈍いと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが12月20日報じた

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広告付き比率9%にとどまる

 ネットフリックスは2022年11月、広告を付けて料金を抑えた新プラン「広告付きベーシック」の提供を米国や日本、韓国、英国、ドイツフランスオーストラリアなどで開始した。

 米調査会社のアンテナによると、米国では11月の新規加入者数に占める「広告付きベーシック」の比率がわずか9%にとどまった。また、「広告付きベーシック」を選んだ人のうち、57%がネットフリックスに再加入した人、もしくは新規加入者だった。一方で、43%が「スタンダード」や「プレミアム」などの上位プランから広告付きに乗り換えた。

 米ワーナー・ブラザースディスカバリーの動画配信「HBO Max」は21年6月に広告付きプランを始めたが、その初月の、新規加入者数に占める同プラン加入比率は15%に上った。上位プランからの乗り換え比率はわずか14%にとどまった。

 「通常、低コストの広告付きプランを開始する際に目指すのは、可能な限り多くの新規加入者を獲得すると同時に、上位プランからの乗り換えを最小限に抑えることだが、ネットフリックスはこれがうまくいっていないようだ」と、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

DisneyやNBCUniversa、Warnerなど参入

 ネットフリックスの「広告付きベーシック」の米国料金は月6.99ドル(日本では790円)。広告なしプランは、「ベーシック」が月9.99ドル(日本は990円)、「スタンダード」が月15.49ドル(日本は1490円)、「プレミアム」が19.99ドル(日本は1980円)。これらは利用可能な端末数や画質などに違いがある。これによって同社は収益源の多様化と加入者数の拡大を狙っている。

 米ウォルト・ディズニーの「Disney+」も22年12月に米国で広告付きプランを導入した。Disney+の米国での料金はそれまで月7.99ドルだったが、22年12月8日に10.99ドルに値上げし、新たな広告付きプランを月7.99ドルとした。

 米国では、ディズニーの「Disney+」と同社傘下の「Hulu」、米コムキャスト傘下NBCユニバーサルの「Peacock」、米パラマウント・グローバルの「Paramount+」、ワーナー・ブラザースディスカバリーの「HBO Max」、そして、ネットフリックスなどが広告付きプランを提供しており、この分野での競争が激化している。

 アンテナによると、ネットフリックスの米国加入者数に占める広告付きプランの比率は22年11月末時点で0.2%。この比率は「HBO Max」で21%、「Hulu」で57%、「Peacock」では90%と、高い水準だ。

 こうした状況について、ネットフリックステッドサランドス共同CEO(最高経営責任者)は、我々の広告事業は「crawl-walk-run(ハイハイ - 歩く - 走る)」を経て成長するが、現在は「crawl」の段階だと、説明している。広告付きプランによって新規加入者を増やしながら、解約件数の減少につなげたい考えだ。

米国の主な動画配信サービス

ネットフリックスNetflix

ウォルト・ディズニーの「Disney+
  傘下に「Hulu」、「ESPN」、映画・テレビの「21世紀フォックス

アマゾンの「Prime Video
  22年3月に米映画製作大手メトロ・ゴールドウィンメイヤー(MGM)買収完了

○アップルの「Apple TV+」
  22年3月に配信作品がアカデミー作品賞(動画配信サービスの映画で初授賞)

ワーナー・ブラザースディスカバリーの「HBO Max」と「discovery+」
  22年4月にAT&T傘下ワーナーメディアとディスカバリーが合併   傘下にワーナー・ブラザース

○コムキャスト(米CATV最大手)傘下NBCユニバーサルの「Peacock」
  傘下にユニバーサル・ピクチャーズ

パラマウント・グローバル(旧バイアコムCBS)の「Paramount+」
  傘下にパラマウント・ピクチャーズ、CATV局「Showtime」

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(写真:ロイター/アフロ)