車田正美原作のアニメ「聖闘士星矢Knights of the Zodiac バトル・サンクチュアリ」が、2023年1月1日(日)より国内配信開始する。白銀聖闘士との激闘を経て、今回は主人公・星矢たち青銅聖闘士黄金聖闘士が死闘を繰り広げる“黄金十二宮編”が描かれる。1985年12月からの連載当時、週刊少年ジャンプで絶大な人気を誇り、少年たちのハートを掴んだ本作。世代であるペガサス星矢役の森田成一フェニックス一輝役の小西克幸も夢中になり読んでいたという。3DCGによって再アニメ化された「十二宮編」への熱い想いから、ペガサス流星拳を真似して「音速が見えた」と振り返る少年時代ファミコン版「聖闘士星矢」まで、2人のファントークが繰り広げられた。

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■記念受験の気持ちで受けたオーディション

──「十二宮編」の配信間近となりました。今のお気持ちからお願いします。

森田:個人的に一番燃え上がる「十二宮編」。「聖闘士星矢」のイチファンとしては一番観たい場所にやっと到達したという気持ちでとても嬉しく思います。自分自身の小宇宙(コスモ)も、ものすごく燃え上がっています。

小西:やっぱり「聖闘士星矢」というと、黄金聖闘士たちが出てくる十二宮の戦いですよね。皆さんも経験があるかもしれないけど、子どもの頃は「お前は何座だから何とかだな」「俺、何座だから」とか言いながら盛り上がったところなので、配信を非常に楽しみにしています。

──前回のアニメ化「冥王ハーデス編」でキャストが変更になり、森田さん、小西さんはそこから役を受け継ぎました。原作ファンであるというところで、オーディションを受けたときの思いはどのようなものでしたか?

森田:僕は同じ車田先生の「リングにかけろ」で高嶺竜二役をやっているので、当時の事務所からは、今回、受けるのは無理じゃないのかと言われたんですよ。でも、「どうしてもマイクの前でペガサス流星拳を叫びたいんだ」って必死にお願いして。それで受けさせてもらったんです。

小西:一緒! 僕もスケジュール的に無理だからって、オーディションに入ってなかったんですよ。いやでも、ここをどうにかすれば行けるでしょって。それで一輝を受けたんです。

森田:僕ら世代はみんなあの台詞をマイクに叫びたいんだよね。落ちると分かっているから記念受験みたいな気分でペガサス流星拳を叫んできて(笑)。それがもう奇跡的に受かって今に至るわけです。星矢たちって、ただひたすら真っすぐに、とにかく真っすぐ前に進むことだけを考える。そういう熱き血潮の少年たちなわけです。それもあって星矢を演じているときは余計なことを考えず、真っすぐ前だけを見てできるのがとても気持ちいいですね。正義とはこうなんだ、友情とはこうなんだとかを真っすぐに考えられる瞬間って、人生においてなかなかないですから。心がすごく気持ちよくなります。

小西:僕は本当にオーディション日にスケジュールが合わなくて、途中のスタジオオーディションから入れてもらったんですよ。どうしても一輝役を受けたくて。それで「一輝です」と言われたときはめちゃくちゃ嬉しかったですね。他の作品と比べる気は一切ないですが、やっぱり原作ファンなので。今まで先輩たちが作ってきた世界もあるし、それを観てくださっていたファン、制作のスタッフの皆さんの思いも強いので、それを全部背負ってこの役に向き合っていこうという気持ちでアフレコに臨んでいます。台詞はちょっと省エネな感じですけど(笑)、一番好きなキャラクターだったので嬉しすぎましたね。

ペガサス流星拳の強さは敵との関係性で変えている

──小宇宙が燃えるというところで、アフレコ中、一番たぎった瞬間はどこになりますか?

森田:僕はもう断然ペガサス流星拳になるんですけど、そこに至るまでの会話にも胸アツな台詞があって、結局「聖闘士星矢」って名台詞ばかりなんですよ。どんなものでも名台詞決め台詞でなくても名台詞。それを入れるときは小宇宙が本当にたぎってくるんですけど、そこを介して最終的にペガサス流星拳をどれだけの強さで出すのかっていうのが、収録時の僕の肝になっています。状況や敵との関係性次第でペガサス流星拳の(声の)強さ、出し方を変えていて、1つだけではないんですよ。一定のベースはあるんですが、そこで上に行ったり、下に行ったり。普通に出していると音速までなんですけど、気合が入ってくると何発か光速が入ってきて、そういうときですよね。小宇宙が爆発するのは。ここは光速を入れようっていうときは、ペガサス流星拳の力の入り方が変わってきますね。

小西:僕も全部と言ったら全部なんですが、その中で挙げるとしたら「シャカの目が開いた」を言えたのがとても気持ちよかったですね。あれは名台詞中の名台詞。あれを機に状況が大きく変わっていくシャカとの戦いの肝だと思うから、大事にしていきたいというのもあって好きなんですよ。

──必殺技ではないんですね。

小西:それももちろん好きで、基本は全部が好き。そうするとあえてどこを切り出すかという話になって、それが個人的に好きじゃないんですよ。キャラクターが生きてきた道があって、全て一輝が経験したことだから。全てを観ていただきたい。難しいですね。必殺技はゲームとかで幾度となく言っているので、ちょっとライフワークみたいになっています。

■小宇宙を燃やせば俺も聖闘士になれるかも

──連載当時から好きだったという「聖闘士星矢」。原作ではどんなところに惹かれましたか?

森田:子どもって神々の力とかオーパーツのような不思議な話が大好物じゃないですか。でもジャンプ漫画みたいな中でそういうのがまだなかった頃、「聖闘士星矢」はギリシャ神話っていうファンタジーを真っ正面から捉えてきたわけですよ。子どもの森田成一からしたら衝撃でしたし、少年が小宇宙を燃焼することで聖闘士という特別な存在になれて、聖衣という伝説的なアーマーをまとうことができるというのに夢を感じましたね。最初から超能力を持っているわけではなくて、修行をして聖闘士になれるというところは、自分たちにも可能性があるんじゃないか?みたいなことを信じさせてくれる。そういう夢中になれる要素満載の作品でした。

小西:やっぱり子どもは「ジャンプ」の「勝利、友情、努力」の三大要素に惹かれるっていうのがまずありますよね。特に「聖闘士星矢」には小宇宙や聖衣とかのワクワクする要素がとにかく多くて。88の星座っていうのがまたいいんですよ。「次は何座が出てくるんだ?」というのもすごくワクワクしたし。森田さんみたいに、俺たちだって修行して小宇宙を燃やしたら聖闘士になれるんじゃないかって思ってしまう子ども脳を刺激してくれるのがね。最高じゃないですか。

──やっぱりペガサス流星拳は出していた?

小西:俺、音速見えたと思うんですよ、多分(笑)。岩なんかあったら、「これ、小宇宙を燃やしたら割れるんじゃないか」って、チョップしてたもん(笑)。

──聖闘士(クロス)、女神(アテナ)とかの読ませ方がまた新しかったんですよね。

小西:聖域(サンクチュアリ)とかね。技名覚えるの大変だったけど(笑)。ああいうの、「聖闘士星矢」が最初じゃないのかな。それでまた、全員美しいじゃないですか。「リングにかけろ」や「風魔の小次郎」もそうだけど、車田先生の描く少年ってすごく美しいんですよね。その少年たちが聖衣(クロス)というものに彩られてさらに美しくなっていくっていうのは、少年漫画の域を超えた美しさ。だから当時、女性ファンもものすごく多かったというのがジャンプ漫画では珍しい現象だったんじゃないのかな。

■胸がたぎった射手座アイオロスからのメッセージ

──今回は「十二宮編」ということで。原作の方ではどんなところに燃えましたか?

森田:僕はやっぱり人馬宮でアイオロスからのメッセージを読むところかな。「君たちにアテナを託す」っていう。あそこは「十二宮編」の中で一番泣いたところで、想いというものにものすごく胸がたぎったんですよね。ちょうど「十二宮編」の折り返しあたりで、そこでの盛り上げ方はさすがですよ。ぐっと魂を持ち上げてくれる瞬間でしたね。

小西:アイオロスはもう亡くなっているキャラなのに、あそこまで印象深く物語に立てるっていうのが胸に刺さるんですよ。

──小西さんは原作の「十二宮編」、どうでしたか?

小西:僕は一輝が大好きだったから、やっぱりシャカとの対決かな。一輝が自分の命を燃やしてシャカを倒すというのが最高に格好よかったです。それ以外では双魚宮での薔薇の道。あれは絵としてはすごく綺麗なんだけど、美しい薔薇にはトゲがあるっていうので実は毒薔薇になっていて、「怖えなあ」って思ったところです。昔、ファミコンで「聖闘士聖矢」のゲームがあったんですけど、双魚宮のところにやっぱり薔薇の道があって、進んでいくとどんどん体力が減っていくんですよ。

森田:あれね! 俺もやってた。懐かしいな。

小西:あのゲーム、ただでさえボス戦が難しいのに、体力が減った状態で戦うハメになるからシャレにならなかったんだよね。

森田:削りがひどい。当時の子どもって、よくああいうゲームを文句言わずやってたよね(笑)。

小西:だいぶ先の話なのでネタバレになっちゃうところだけど、「十二宮編」は原作もゲームも夢中になっていましたね。これを読んで思い出す人、相当いるんじゃないですか(笑)。

──「Knights of the Zodiac」シリーズは大筋原作を踏襲しつつ、暗黒聖闘士が違う形で出てくるなど幾つかのオリジナル要素があります。アフレコを通して、「十二宮編」のここは面白いなと思ったところはありましたか?

小西:僕、今回の内容、全く知らないんですよ。自分以外のパートは台本も読んでいない。原作通りなので言っていいと思うんですけど、今のところ一輝はシャカとしか戦っていないから。だから視聴者の皆さんと同じ立場です。というわけなので、森田さん。どうですか?

森田:基本は原作の流れのままですよ。ただ幾つかの新しいところがあって、僕の言葉でいうなら、原作で言及していなかった箇所が描かれている印象ですね。創作で付け加えたというより、原作を元に考えると「こういう背景があったのではないか」というような補完になっていると僕は思いました。

小西:へえ。どんなシーンなのか気になりますね。

森田:実はそういうことだったのかと納得できる作り方。米国のスタッフが入っていることで過去のアニメ化と違うところはあって、そこは当然好き嫌いがあると思うんですけど、「聖闘士星矢」の面白さは変わっていない。根っからのファンである僕的には完全にありの世界ですね。

──「バトル・サンクチュアリ」の国内配信は1月1日から。待ち遠しくしているファンにメッセージをお願いします。

森田:「Knights of the Zodiac」シリーズは配信作品なので「聖闘士星矢」のファンでもまだ観ていない方はいると思いますが、まずオープニングで涙がこぼれます。昔のあのオープニングをCGにするとこうなるのかって、感動ですよ。シャイナさんのクローもちゃんとあるし、ツボをおさえているんですよ。今まで「聖闘士星矢」に触れたことのない方が観たら世界観に驚くと思うし、こんなにも緻密に考えられて1つの作品が出来上がっているというのを感じられる作品です。ぜひご覧になっていただきたいと思います。

小西:リスペクト感が半端ないんですよ。特に「十二宮編」は全編の中でも1、2を争う人気の箇所なので、絶対に盛り上がることは間違いないです。だからこそ若い方々、「聖闘士星矢」という作品は知っているけど手に取ったことがないという方にはファーストシーズンから観ていただきたい。セカンドシーズンはその上で観ると面白さが倍増する物語なので、星矢たちの走り出しから観ることをお勧めします。

■取材・撮影・文/鈴木康道

ペガサス星矢役の森田成一(右)、フェニックス一輝役の小西克幸(左)/撮影=鈴木康道