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年の瀬もせまり、今年の振り返りや新年への決意を新たにする人も多い。

そんなリセットリスタートのタイミングで取り入れたい“脳と心にやさしい習慣”を、東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授に教わった。

何かの「香り」を感じたときに、ふと昔の記憶がよみがえってくる経験はないでしょうか?

私は雨上がりの草むらを歩いていたときに、幼い頃に昆虫採集に入った林の様子が突然、頭の中に思い浮かんできて、それから気分が晴れやかになったことがありました。もののにおいを捉える鼻の末梢神経は、においを判断する脳の領域だけでなく、記憶をつかさどる海馬にもつながっていると言われています。生きるために大切なもの、反対に有害になるものをしっかりと記憶させるためにそうなっていると考えられています。

自宅でリフレッシュする方法として「回想脳ワーク」をやってみましょう。例えば、若い頃に使っていた香水やオーデコロンなどの香りを楽しみながら、昔を思い出すだけでいいのです。懐かしい記憶が蘇ると、自然とリラックスしてきますよ。

もう一つ、手軽にできる「回想脳ワーク」は、昔のアルバムや旅行のお土産などを見ることです。子どものころに家族で出かけたときのことを思い出してみると、脳が活動してきます。お正月の帰省時などに、久しぶりにアルバムをめくって昔を思い出してみてはいかがでしょうか。

旅行に出かけたときなどにキーホルダーや置物などを記念に買ったのはいいけれど、置き場所がなくて捨てよう、と思う人も多いでしょう。でも、捨てないで手の届くところに置いておくことを私は勧めています。家事や仕事の合間に、「ちょっと疲れた」と思ったら少し手を休めて、わずかな時間でもいい思い出と結びついたアイテムを眺めてみると、楽しい思い出がよみがえってきてリラックスしてきます。

昔を振り返りながら、今の自分と昔の自分がつながっていることを認識できます。幸せだった時代をなつかしみ、それが今の自分の基礎につながっていると思うと、考えがポジティブになってきます。

脳の老化が始まる40代あたりから、積極的に過去を振り返る「回想脳ワーク」を行い、ポジティブ脳にすることで、心も体も健康をキープできると言われています。

PROFILE

瀧靖之

東北大学加齢医学研究所機能が増医学研究分野教授。16万人を超える脳のMRI画像を読影、解析し、多くの論文を発表。脳の発達や加齢のメカニズムの解明に取り組んでいる