「将来、自民党を背負って立つ男」と目されていた衆院議員・薗浦健太郎氏が「裏金捻出疑惑」などで東京地検特捜部のターゲットとなり、議員辞職に追い込まれた。この騒動で最も大きな打撃を被っているのが、麻生太郎副総裁だという。自民党関係者が言う。

「薗浦氏は、久々に現れた自民党の若手の大物と言われていました。一方で麻生氏の腹心としても有名で、近い将来は麻生派を率いる派閥長候補としても名前が挙がっていて、次は入閣間違いなしとの声も出始めていた。そんな矢先の疑惑噴出だったのです」

 薗浦氏は東大法学部を卒業後、小泉政権時代などは読売新聞で政治部記者として活躍した。

「180センチ近くある大柄で見た目も際立ち、ズバズバ切り込む姿勢は他の記者を圧倒していました。そんな彼に目をつけたのが麻生氏で、政治家への転身を勧めたのです。それを受け、薗浦氏は読売を退職し、03年の総選挙自民党公認で出馬(千葉5区)。結果は落選となりましたが、麻生氏が秘書にして経験を積ませ、05年の衆院選に再チャレンジし、初当選を果たしたのです」(政治部記者)

 以降、当選は5回を数え、この間、安倍内閣で外務副大臣、総理大臣補佐官に抜擢されるなど順調に階段を駆け上がってきた。それだけに今回の議員辞職は手塩にかけて育ててきた麻生氏にとって大きな痛手であることは間違いないだろう。だが、問題は他にもあるという。

麻生派(志公会)のお家事情、つまり麻生氏の高齢に伴う後継者問題です。82歳になる麻生氏は、次の選挙で息子(長男・将豊氏=日本青年会議所会頭)に選挙区を譲るとも言われている。しかし、その息子が仮に議員になってもいきなり『派閥ボス』とはいきません。麻生氏の後、少なくとも5年は誰かが派を引っ張るしかないのです。その筆頭が、松本純元国家公安委員長だったのですが…」(前出・政治部記者)

 ところが、その松本氏は2021年2月、緊急事態宣言下に東京・銀座のクラブに深夜まで滞在していた問題で離党し、その後の衆院選で落選してしまった。次にリーダー候補になってもおかしくはない甘利明氏も、都市再生機構(UR)の口利き疑惑以来パッとしていない。また、一時、志公会の会長代理を務め、麻生氏の跡目と目されていた佐藤勉元総務会長は、朋友の菅義偉元総理に引き抜かれた。

「その他、麻生派では山際大志郎前経済再生担当相も期待されていたものの、旧統一教会問題で閣僚辞任に追い込まれてしまった。ポスト岸田を狙う河野太郎デジタル相は、派内では麻生氏と距離を置き、流れによっては麻生派を割って自ら派閥を立ち上げる気配もある」(自民党関係者)

 そうした中、腹心の薗浦氏が突然消えてしまったことで、さしもの麻生氏も頭を抱えているはず。この負の流れを止めるのは、麻生派岸田派が合流する「大宏池会構想」とも言われるが、その光はいまだ見えない状況だ。

 麻生氏の苦悩の日々は今しばらく続きそうなのである。

(田村建光)

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