独特のファンタジーと特徴ある猫のキャラクター、そして宮沢賢治作品の漫画化で知られる漫画家・ますむらひろし。『銀河鉄道の夜』を題材とした現在進行中の大作漫画全4巻のうち、既刊の2巻を「前編」として紹介する展覧会が、東京の八王子市夢美術館で、2023年1月28日(土) から3月26日(日) まで開催される。

1952年山形県米沢市に生まれたますむらひろしは、東京のデザイン学校で学び、1973年に初めて描いた漫画『霧にむせぶ夜』で第5回手塚賞準入選をはたす。心の安息地であるアタゴオルを舞台に、猫のヒデヨシと個性豊かな仲間たちが繰り広げる空想世界の物語「アタゴオル」シリーズで有名だが、この初期の代表作は、詩人で童話作家の宮沢賢治が提唱した心の中の理想郷「イーハトーブ」の精神を、ますむら独自の感性で展開させたものだという。

風の又三郎』や『グスコーブドリの伝記』など、宮沢賢治の数々の物語を漫画化してきたますむらは、なかでもひときわ謎めいた名作『銀河鉄道の夜』には1980年代から2度にわたって取り組み、1985年には映画の原案も提供している。こうした一連の功績により、2001年には宮沢賢治学会イーハトーブ賞も受賞した。

そのますむらが、新たな研究成果も踏まえて取り組んでいるのが、『銀河鉄道の夜』の3度目の漫画化となる最新作『銀河鉄道の夜・四次稿編』。全4巻で約600頁に及ぶ大作だ。その制作の経過を紹介する今回の展覧会は、第1巻・第2巻の漫画の生原稿と創作資料、メモ、ラフスケッチなどを展示し、さらに深みを増したますむらひろしの『銀河鉄道の夜』の世界を明らかにするもの。

信仰と大地とともに生きた宮沢賢治と、独特の猫のキャラクターで詩情を生み出すますむらひろしのふたりの世界観が交錯し、新たに編まれた美しくも切ない物語を、ぜひ会場で原画とともに堪能したい。

なお、2月18日(土) にはますむらひろしの講演会、2月5日(日) と3月11日(土) にはサイン会も予定されている。応募方法については、美術館の公式サイトで確認を。

<開催情報>
ますむらひろし銀河鉄道の夜―前編』

会期:2023年1月28日(土)〜3月26日(日)
会場:八王子市夢美術館
時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)
休館日:月曜
料金:一般 700円/学生・65歳以上 350円
公式サイト:
https://www.yumebi.com

ますむらひろし『銀河鉄道の夜・四次稿編』より (C)ますむらひろし