北米の映画興行でも最大級の書き入れ時であるクリスマスの週末となった先週末(12月23日から25日)の北米興収ランキングだが、3日間の総興収は1億ドルに届かず。まだコロナの影響が残っているのか、コロナ禍を経て映画を観る国民的習慣に変化が訪れたのか、それとも『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(日本公開中)が思いのほか弾けなかったからか、ほかの新作タイトルが伸び悩んだからか。考えられる様々な要因が複合した結果であろう。

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アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の2週目末の興収は6333万ドルと、前週からはほぼ半減でも危なげなく1位をキープ。参考までに2009年に公開された前作と比較してみると、そちらもクリスマスのタイミングに2週目末を迎えていたがオープニング週末対比98.2%とほぼ変わらぬ興収を維持していた。もっとも今作ではオープニングのダッシュが前作の倍近く。まだ“期待を裏切る結果になった”と結論付けるのは時期尚早だろう。

公開から10日間の累計興収は2億6100万ドル。27日に公開から12日目で興収3億ドルを突破しており、これは前作の15日目よりも3日ほど早い。このぐらいのペースで興収3億ドルを超える作品は、概ね4億〜4億5000万ドルあたりで着地する傾向があるが、ジェームズ・キャメロン作品の持続力を考えると最終的には5億ドルまで届くことも充分に考えられる。ちなみに全世界興収も、この平日のうちに10億ドルを突破した模様。

そんな『アバター』に真っ向勝負を挑むようにクリスマス公開された拡大公開の新作は3つ。そのなかで最上位の2位にランクインしたのは「シュレック」シリーズのスピンオフとなる『長ぐつをはいたネコと9つの命』(2023年3月17日日本公開)。初日から3日間で1242万ドルと、前作『長ぐつをはいたネコ』(11)のオープニング興収3400万ドルをかなり下回る滑りだし。もっとも、「シュレック」関連作自体がしばらく作られてなかった(アニメシリーズでも2018年が最後だ)ことを考えれば仕方あるまい。

それでも先日発表されたゴールデン・グローブ賞ではアニメーション映画賞にノミネート。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば批評家の95%から好意的評価を集める絶賛ムード一色。例年にも増して激戦となっているアニメーション映画の賞レースに一躍名乗りをあげ、前作に続くアカデミー賞長編アニメーション賞ノミネートも狙えるラインにまで急上昇。根強い人気を誇るドリームワークス・アニメーションは、この作品で本格的に復活するのかもしれない。

3位には歌姫ホイットニー・ヒューストンの伝記映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』(日本公開中)が、4位には『ラ・ラ・ランド』(16)のデイミアン・チャゼル監督がブラッド・ピットやマーゴット・ロビーを迎えた3時間超の大作『バビロン』(2023年2月10日日本公開)がランクイン。いずれも興行的にも伸び悩み、批評家からの評判もいま一つ。とりわけ後者の方は、7800万ドルと言われる製作費を回収するのも絶望的との見方が強まっている。

また年末といえば、アカデミー賞へのエントリー資格を得るために滑り込みで公開される有力作品も少なくない。サラ・ポーリーが監督を務めた『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(2023年初夏日本公開)と、黒澤明監督の名作をイギリスでリメイクした『生きる LIVING』(2023年3月31日日本公開)がそれぞれ限定公開を迎え、興行成績はまずまず。「ロッテン・トマト」での批評家からの高評価の割合は前者が90%で後者が94%。どちらもオスカーへの最終切符を手にするには充分だ。

文/久保田 和馬

北米のクリスマス週末を制したのは『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』!/[c]Everett Collection/AFLO