ライフプランを考えるうえで欠かせない、「子どもの教育費」。その資金繰りに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。今回は、FP Officeの石井悠己也氏が子ども教育資金についてシミュレーション。そのうえで、もっとも効果的な積立方法について考察します。

子どもにかかる教育費は「大学進学」から急増

今日は、お子様の教育資金について考えていきましょう。特にライフプラン相談会などではよく聞かれる項目になります。

「教育とはお子様に残してあげられる最大の財産」ともいわれます。大学卒業までに、いったいどれくらいの費用がかかるのか考えてみましょう。

まずは教育資金の総額について見ていきましょう。

左側が幼稚園~高校までの資金、右側が大学の教育資金になります。それぞれ公立(国立)私立の場合で色を分けてあります。 ※ 学校外活動費も含む。

あたりまえですが、教育資金に関しては「私立>公立」となっています。特に私立の小学校が突出して高い教育費となりました。その後、中学、高校と進学するほど私立学校と公立学校の差は小さくなっていきます。

[図表1]の右側が大学資金となります。大学進学の場合、お子様は実家を離れて下宿するという選択肢も可能性としては出てきます。下宿させる場合は、教育資金+仕送り等の費用がかかるため、高校までと比べて年間にかかるお金が急増します。

[図表2]は、お子様の教育資金が何歳のときにいくら、累計でいくら必要になるかを表した図になります。(お子様は2人。中学までは公立で高校から私立。大学は1人目が私立理系。2人目が私立文系での試算になります。)

ピーク時には「年間500万以上」

ライフプランシミュレーションでは一般的に、末子が大学入学時のタイミングが教育資金の(年間の)支出ピークになるケースが多いです。

[図表2]のパターンだと、52歳のときには教育資金だけで年間550万以上かかる計算になります。なにも、特別なパターンではなく、子供2人を私立の大学に行かせるだけでこれくらいのお金がかかってきます

※ 私立の医科歯科大などは別次元の費用のため、今回は割愛します。

教育資金準備に効果的な「積立方法」とは

[前掲図表1]からは、それぞれの段階でかかる教育資金の累計がオール国公立卒で約1,000万円、オール私立卒で約2,500万円ほどかかることがわかります。

また、[前掲図表2]を見ると、各年の教育資金の金額は大学進学後に最大となり、約500万円が年間にかかっていることがわかります。

では、教育資金を短期と長期の視点から考えてみましょう。

高校までの資金に関しては、私立か公立かによって、年毎にかかる資金に開きがありますが、大学以降に関してはいずれにしても100万円以上が年間にかかってきます。

資金を準備するという点でポイントになるのは、高校までの教育資金に関しては手元の資金で用意できるかをチェックし、大学資金に関しては、計画的な積立を行う必要があるということです

お子様が生まれてから、大学までの年数はおよそ18年あります。この間にどのような仕組みが効果的か検証してみましょう。

教育資金を準備する方法として、月2万円の積み立てを行うと想定し、代表的な3つを例にそれぞれ検証してみました

※ 資料の学資保険の利率が1.5%(2017年時点)のものなので、いまから加入する場合積立額はもうすこし少なくなります。

リスクの大きさに比例して、収益性が高くなるという結果になりました。

収益を重視するとリスクが大きい…回避のポイントは?

教育資金準備には「つみたてNISA」が有効か

積立期間が18年の長期投資となると、つみたてNISAが期間的にもしっくりくるのかなという感じです。つみたてNISAの場合、どの投資信託で運用するかが重要ですが、長くなるためその部分は割愛します。

外貨建ての生命保険を学資として利用するというパターンも、最近ではポピュラーな手法です。

いずれにせよ、学資として取り崩しを想定したタイミングで急な円高や株式の暴落などのリスクは考慮する必要があります。

収益性の高い外貨建て保険や投資信託を利用するか、安心感のある預貯金で用意するか、なかなか悩ましい問題ではありますが、リスクに関しては内容をよく理解すれば回避することは可能です。

リスクについて少し考えてみましょう。

リスク回避のポイントは万が一のための「手元の資金」

たとえば、外貨で積み立てた場合、取り崩すタイミングで円高になると資産価値は目減りします。※株式も同様に取り崩しのタイミングで暴落すると資産価値は目減りします。

学資を想定したタイミングでこのような状況に陥った場合は、状況が落ち着くまで取り崩しを控え、そのかわりに手元の資金で賄う必要が出てきます。

この、手元の資金で賄えるかどうかがリスクを回避するためのポイントになります。

収益性が高いからと、本来手元に置いておく必要のある資金まで投資に回してしまうと、このリスク回避を行うことができず円高のタイミングで外貨を取り崩すというような状況に陥ってしまいますので注意してください。

まとめ

積み立てた資産が目減りしたタイミングでの取り崩しを避けるためには、手元の資金も重要になってきます。大切なのは家計全体での資産のバランス(現金、債券、外貨、株式資産等)です。

適正なバランスは各家庭の収入や支出の状況で違いがあるため、「これがベスト!」だと一概にはいえませんが、収益性の高い投資を行いつつ、リスクは回避できるこのような状態を目指しましょう。

教育資金について、これからかかるお金のことを考えると、頭が痛くなる方も多くいらっしゃるかと思います。

しかし、冒頭でも述べましたが「教育とはお子様に残してあげられる最大の財産」ともいわれます。教育で得た知識や教養などは一生モノですし、誰かに取られることもなく、知識は人に分け与えることができます。今回はあえて触れませんでしたが、行政の補助や教育ローンなども、状況によっては選択肢となります。

教育にかかるお金は決して小さくはありませんが、準備期間をしっかり有効活用し、来るべき出費に備えるために、我々FPという職業を活用していただければ幸いです。

石井 悠己也

FP Office

ファイナンシャルプランナー

(※写真はイメージです/PIXTA)