2022年、世界的な物価高に急激な円安と、私たちの生活を直撃するニュースが相次ぎ、暮らし向きは下降線の一途を辿りました。2023年を迎える前に、いま一度、今年1年を振り返ってみましょう。

2022年、給与アップも物価上昇が上回り、生活は苦しくなるばかり

2022年、日本人の給与を振り返ってみましょう。

厚生労働省が毎月発表する『毎月勤労統計調査』によると、最新の2022年10月の一般労働者の現金給与総額は35万6,142円で、手取りにすると、27万円ほど。前年同月比1.9%増となりました。その内訳をみると、所定内給与は32万0,747円で前年同月比1.3%増、残業代等の所定外給与が1万9,490円で前年同月比7.7%増、特別に支払われた給与が6,399円で前年同月比2.9%増。

*同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、または、1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者である「短時間労働者」以外のもの。

コロナ禍2年目だった昨年よりも、残業時間等が増えたことで、給与総額の増加に貢献するカタチになりました。しかし、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いて算出した実質賃金は、前年同月比2.9%ダウン。ロシアによるウクライナ侵攻による世界的な物価高は、日本でも。生鮮食品を 除く総合指数は、2022年1月に前年同月比0.5%、2月に0.9%、3月に1.2%と推移していましたが、4月以降は2%台、8月以降は3%台となり、最新11月は3.8%と40年ぶりの高水準を記録。給与額は増えたものの、物価の上昇がはるかにそれを上回り、2022年、日本人の生活はいっそう厳しさを増しました。

【2022年の現金給与総額と実質賃金】

2022年1月:357,120円(86.0/0.5 %)

2022年2月:357,495円(83.8/0.0 %)

2022年3月:362,821円(89.5/0.6 %)

2022年4月:499,779円(87.1/▲1.7 %)

2022年5月:608,627円(85.2/▲1.8 %)

2022年6月:357,658円(139.0/▲0.6 %)

2022年7月:365,254円(115.0/▲1.8 %)

2022年8月:375,255円(85.1/▲1.7 %)

2022年9月:348,256円(83.7/▲1.2 %)

2022年10月:356,142円(82.8/▲2.9 %)

出所:厚生労働省『毎月勤労統計調査』より

※常用雇用労働者数5人以上、一般労働者。数値左より、現金給与総額、実質賃金指数(令和2年=100)、実質賃金前年同月比

2023年、8割の企業が賃上げ意向も水を差す「法人税増税」

米国をはじめとして物価上昇がピークアウトした可能性もあり、日本でも2023年の夏頃には物価上昇が一段落するという見方が強くなっています。また急激な円安もひと段落した感がありますが、2023年4月に日銀の黒田総裁の任期が満了し後任へと引き継がれるのを機に、さらに円高へと向かうのではないかという見方も。そうなると輸入品を中心に物価高を実感する毎日もひと段落するかもしれません。

また東京商工リサーチによるアンケート調査では、81.6%の企業が2023年度に賃上げを実施するという回答もあり、賃金アップも期待せずにはいられません。ただし連合による2023年春闘の賃上げ要求水準は物価高などを踏まえて「5%程度」が見込まれていますが、「5%以上の引き上げ」の予定は4.2%に留まります。さらにここにきて、防衛費を増やすため法人税増税のニュースが、賃上げに水を指すと心配されています。

このような流れも察知し、私たちのマインドも下降傾向。内閣府が2022年11月から12月にかけて行った『消費者マインドアンケート調査』によると、半年後の暮らし向きが「やや悪くなる」と「悪くなる」を合わせると7割にも達し、「良くなる」「やや良くなる」と希望を持っている人はわずか5%ほど。物価についても「上昇する」「やや上昇する」が9割と、悲観的な声が目立ちます。

できることなら、明るいニュースで聞いて新しい年を迎えたいものですが、2023年、そうはいかない予感にあふれています。そんな厳しい予想にあふれるなか、逆説的に捉える専門家も。

――円安は国内回帰を加速させ、日本の国力アップにつながる

――チャイナリスクも高まっているなか、海外企業誘致に弾みがつく

――コロナ禍からの回復で、インバウンド需要が再び復活する

逆境を逆手に取れば「日本復活」のストーリーも描ける、そんな予測です。そうなれば、私たちの給与も上昇し、暮らし向きも一気に変わるかもしれません。世界における存在感が小さくなる日本。2023年、そんな逆転劇も期待したいところです。

(※写真はイメージです/PIXTA)