莫大な資産を保有する日本の富裕層は、近年大きく変わった……海外移住のサポートを行い、これまで2万人を超える富裕層をみてきた大森健史氏は、そう実感しているといいます。いまどきの“シン富裕層”の実態とは? 今回は、富裕層のなかでも「ビジネスオーナー」に焦点をあててみていきます。

シン「経営型」富裕層は“どんどん起業”で生き残る

【最近の富裕層にみられる5タイプ】 ①ビジネスオーナー型 ②資本投資型 ③ネット情報ビジネス型 ④暗号資産ドリーム型 ⑤相続型 (参照記事『普通の人に見えて大金持ち…現代の富裕層、5つのタイプ』

最後に紹介するのが「①ビジネスオーナー型」、すなわち企業経営者です。筆者は「シン富裕層の中ではやや古いタイプ。自分の実力で企業を経営してきた。移住の準備に時間をかける。ロジック好きであり、参考になる資産形成術や生き方は、このタイプから学べる。目に見えるモノが好きで、不動産投資をするタイプが多い。自分自身はあまり目立ちたくないタイプが多い」という規定をしています。

ビジネスオーナーは、「シン富裕層」の中ではある意味昔からいるタイプともいえるでしょう。他のシン富裕層のタイプと比べて、成功や欲望に強い関心をもつ人が多いです。

いいモノを買う、いいサービスを受ける、いい家に住むなどの欲求が原動力になっている方が多いです。不動産投資に積極的なのも特徴です。目に見えるモノを好む傾向はもっとも顕著かもしれません。

明治維新後、武士や刀が不要とされても軍隊は必要なので陸軍に入って武士道精神を受け継いでいったように、時代が変わっても前時代の流れを汲んで生き残っているタイプなのです。

仕事のやり方についても、ユーチューバーなどのネット情報ビジネス型の人が、タレントのように自分自身を露出して広告塔になるのとは違って、自身が表に出てこなくてもビジネスが回っていく状態を、集団で目指します。そのためには、人材に投資をし、ビジョンを語り、組織をつくって人を動かすなど、人と金と時間をかけて仕事を進めます。

しかし、経営者とひと口でいっても、やはりシン富裕層として成功をおさめる人の特徴は、前時代の常識とは違う点があります。

それはつくった会社を巨大化し続けるというベクトルではなく、アメーバのように新規事業を多角的に手がけるという点にあります。既存のビジネスは人に任せてフットワーク軽く新しい分野を開拓していく、という起業に特化するタイプです。

そうしたことから、ビジネスマンとして示唆に富む教えを与えてくれるのは①ビジネスオーナー型で、個性的で面白い人が多いなと感じるのは、③ネット情報ビジネス型や④暗号資産ドリーム型のタイプです。

「上場企業を経営しながら海外移住」の選択肢も

最近は日本でも若くして大きな資産を築く、スタートアップ企業のオーナーも増えてきました。

以前、40代男性で、IT分野の上場企業のビジネスオーナー本人から、秘書を通さずに直接「海外移住に興味がある」とお問い合わせをいただいたことがありました。

マザーズ市場上場数年目で、時価総額で数百億円相当の自社株も保有し、キャッシュでは億円ほど保有していました。「ひとりっ子の教育のために、海外移住をしたい」とのことでした。

ただし上場企業のビジネスオーナーともなると、海外移住は少々難しくなります。オーナーが日本の非居住者になると、借入金をしている日本の銀行や幹事証券会社、ステークホルダー(利害関係者)、特に投資家への影響を考えると直ぐに実行に移すことは難しいようです。そのため、結局家族だけが移住するというケースもよくあります。

ただ、彼が希望したニュージーランドの場合は、永住権取得後の滞在義務はありません。そのため、仕事に余裕ができてから移住をするという選択も可能になります。

ちなみに教育熱心なのは奥さんのほうで、社長本人は、子どもの教育にはあまり興味がなさそうでした。

自分自身が高学歴で有能だからか、「日本でも普通の公立小学校に行かせているし、ニュージーランドでものびのびと自由に育ってくれればいい。勉強は、本人のやる気が出たときにすれば、成績なんてすぐ伸びるから」と言っていました。

親が優秀すぎると、「子どもは公立でいい、塾にも行く必要はない」というケースがよくあります。

教育目的で海外移住をしたいというシン富裕層の人たちを見てみると、教育熱心なのは親自身の学歴が比較的高くない方が多く、ご自身が悔しい思いをしたり、英語が苦手だったりで、苦労した、あるいはコンプレックスがあった、というケースがほとんどです。

収入や所得は関係なく、どうしても親自身の経験が投影されてしまうのが、子どもの教育問題と言えるでしょう。

最近は日本でも若くして大きな資産を築く、スタートアップ企業のオーナーも増えてきました。

以前、40代男性で、IT分野の上場企業のビジネスオーナー本人から、秘書を通さずに直接「海外移住に興味がある」とお問い合わせをいただいたことがありました。

マザーズ市場上場数年目で、時価総額で数百億円相当の自社株も保有し、キャッシュでは10億円ほど保有していました。「ひとりっ子の教育のために、海外移住をしたい」とのことでした。

ただし上場企業のビジネスオーナーともなると、海外移住は少々難しくなります。オーナーが日本の非居住者になると、借入金をしている日本の銀行や幹事証券会社、ステークホルダー(利害関係者)、特に投資家への影響を考えると直ぐに実行に移すことは難しいようです。そのため、結局家族だけが移住するというケースもよくあります。

ただ、彼が希望したニュージーランドの場合は、永住権取得後の滞在義務はありません。そのため、仕事に余裕ができてから移住をするという選択も可能になります。

ちなみに教育熱心なのは奥さんのほうで、社長本人は、子どもの教育にはあまり興味がなさそうでした。

自分自身が高学歴で有能だからか、「日本でも普通の公立小学校に行かせているし、ニュージーランドでものびのびと自由に育ってくれればいい。勉強は、本人のやる気が出たときにすれば、成績なんてすぐ伸びるから」と言っていました。

親が優秀すぎると、「子どもは公立でいい、塾にも行く必要はない」というケースがよくあります。

教育目的で海外移住をしたいというシン富裕層の人たちを見てみると、教育熱心なのは親自身の学歴が比較的高くない方が多く、ご自身が悔しい思いをしたり、英語が苦手だったりで、苦労した、あるいはコンプレックスがあった、というケースがほとんどです。

収入や所得は関係なく、どうしても親自身の経験が投影されてしまうのが、子どもの教育問題と言えるでしょう。

大森 健史

株式会社アエルワールド

代表取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)