●成田山新勝寺へ初詣に行ったら、ぜひ食べて欲しいのが成田名物の「うなぎ」。 圧倒的人気を誇る「老舗の絶品うな重」3品を食べ比べしてみた

 2023年、新たな年の幕開けです。人気の神社仏閣には、今年一年の無事を祈願しに、多くの人が訪れることでしょう。

 都心から1時間半ほどで行ける成田には、お正月の参拝客数ランキング2位を誇る「成田山新勝寺」があります。お正月のみならず、多くの観光客が訪れますが、その理由は神社巡りだけでなく、参道グルメが楽しめるから。

 江戸時代から門前町として栄えた歴史深きこの表参道には、当時の面影を残す建物(店舗)が点在し、古き良き参道の雰囲気が感じられる街並みに整えられています。

観光としても楽しめる、風情あふれる成田山表参道

成田山新勝寺に続くメインの表参道
成田山新勝寺に続くメインの表参道

 成田駅前から約800m続く表参道には、成田名物のグルメ、おしゃれなカフェや甘味処など、150店以上の飲食店や土産物屋が軒を連ねています。中でも“成田を語る上で欠かせないグルメ”が「うなぎ」です。

 成田はその昔、利根川や印旛沼の川魚が豊富に採れる地域でした。江戸時代から観光の地として栄えたこともあり、おもてなしの一品として「うなぎ」を振舞っていたそう。そのため、参道には約60店もの鰻店が並び、昔と変わらぬおいしい「うな重」を提供しているのです。

 ということで、成田に来たら絶対外さない3つの「うなぎの名店」を食べ歩いてみたので、ご紹介しましょう。

※観光の際に役立つ! こちらの記事もチェックしよう

成田山新勝寺の参道は食べ歩き天国だった! 成田出身ライターがすすめる「名物グルメ」10選

並んで食べる価値あり! 老舗『駿河屋』の「うな重」に行列ができる理由とは?

 成田山表参道の中で、特に行列ができる老舗のうなぎ専門店が2つ、あります。それは風情あふれる建物に魅了される『川豊』と、こちらの『駿河屋』です。

 江戸時代創業の『駿河屋』は成田山新勝寺総門脇にお店を構えています。元は旅籠から始まり、中食屋へと商いを変えていきました。店内の2階へと続く趣のある階段や、いくつかに区切られたお座敷を見ると、その面影が感じられます。

行列必至の人気店、その攻略方法は?

 この日は平日の11時半頃に訪れましたが、すでに店内はいっぱい。整理券を渡され、「30分後あたりに来てください」と案内されました。ですので、早めにお店に行き整理券を受け取って、参拝したり、あたりを観光して待つのがおすすめ。戻ったら番号を伝え、何番から何番までという感じで順番に案内されます。

 店先ではうなぎをさばく様子を見ることができます。鮮度と質にこだわっており、熟練の職人が一匹一匹うなぎを見極め、裂き、串打ちし、蒸す、備長炭で焼くことで、うなぎ本来のおいしさを引き出しています。

 うなぎ静岡県産のほか、幻のうなぎと言われる「共水うなぎ」を使った絶品のうな重が味わえるのも人気の秘訣でしょう。今回は普通の「うな重」(肝吸付き、3960円)を味わってみました。

人気の「だし巻き玉子」を食べながら、うな重を待つ楽しみ

「だし巻き玉子」605円
「だし巻き玉子」605

 今回通されたのは2階の窓際。座敷にゆったりと設けられたテーブル席には日が差し込み、ポカポカと暖かい。参道が見えるのも魅力です。

うな重」ができるまで少々時間がかかるので、密かに人気の「だし巻き玉子」を注文しました。大きく美しい風情で出されたこの一品はまず、何もつけずにいただきましょう。蒸し焼かれたプルッとした食感は喉越しがよく、関東らしい甘めの味わいが広がり、なんとも口福。

 大根おろしと合わせて味わうと一層、大根の苦味に上品な甘さが際立ちます。ビールのお供にもぴったりですね。

『駿河屋』のうなぎの旨さの秘訣は “秘伝のタレ”にあり!

「うな重」肝吸、香物付き 3960円。香物はあっさりした浅漬け
うな重」肝吸、香物付き 3960円。香物はあっさりした浅漬け

 お目当ての「うな重」がやってきました。蓋のデザインも風情があり、中をのぞく気分があがります。

 そして、なんとも香ばしそうなうなぎがお目見え。一口味わえば、外は香ばしく、中はふっくら、ジューシー。うなぎ自体の旨さを引き出す秘伝のタレの奥深い風味もいい。さらに著者が気に入った点が、ごはんの固さ。少しかために炊き上げているようで、粒立ったごはんがうなぎのトロける食感を引き出していました。

 追いタレをしてみると、秘伝のタレの素晴らしさに気づきます。このタレは下総醤油と三河味醂の白九重味醂という高級素材を厳選して作られており、醤油の風味が立った香ばしい味が感じられます。

肝吸もセット。追いタレ
肝吸もセットなのが嬉しい

 さらに、山椒の美味しさもポイントが高い。ピリ辛さが際立ち、味変が楽しめます。

 味の評価が高い『駿河屋』。うなぎ本来のおいしさと、タレの風味を絶妙に両立した「うな重」は食べる人によっては忘れられなくなる逸品でした。次回はぜひ、「大井川共水うな重」(6600円)を味わってみたいです。

●SHOP INFO

駿河屋 外観

駿河屋

住:千葉県成田市仲町359
TEL:0476-22-1133
営:11:00~17:00
休:木曜
http://www.surugaya-unagi.net/

成田山表参道の賑わいを守る、純日本家屋の風情あふれる名店『川豊』

 行列ができる人気店の筆頭にあがるのが、明治43年創業の『川豊(かわとよ) 本店』です。平日の昼時でも1時間待ちになる日も珍しくないほど、客足が途絶えません。

 表参道に漂う香ばしい香りに誘われ足を止めると、純日本家屋の建物の入り口で、職人が手際よくうなぎを捌き、丹念に焼きあげる姿が……思わず、この空間に吸い込まれてしまう魅力に溢れているのです。趣のある建物はその昔、旅籠として活用されていたもので、門前町の風情を印象付けています。

行列時には整理券を配布。HPで順番をチェックしよう

左:参道の名物、鰻職人の大将が鰻を捌く様子。右:表面を香ばしく焼き上げる姿も見られる
左:参道の名物、鰻職人の大将が鰻を捌く様子。右:表面を香ばしく焼き上げる姿も見られる

 基本、団体ではない限り、予約はできません。『駿河屋』同様、整理券を配っているので、観光は後回しにしていち早くお店へ向かいましょう。ホームページには現在の呼び出し番号と待ち状況が更新されていくので、随時チェックしながら、成田山詣や観光を楽しめます。これはありがたいシステム!

 店内は1階と2階に客席があり、名物の急な階段を登って2階に行くと、広々としたお座敷が広がっています。参道が見える窓際は特等席。純日本家屋らしい風情に心が躍り、ついビールを頼んで、ゆったりとした気分に浸ってしまいました。

 常に行列ができているせいか、『川豊』ではそんなに待たずに「うな重」がテーブルに出されます。こちらのうなぎはその時の最高のものを目利きが仕入れており、現在は鹿児島県大隅産や愛知県三河産のものを主に使用しているのだとか。

[食楽web]
[食楽web]

 見るからにふっくらとしたうなぎは箸でスッと切れて、口の中でほろほろとほぐれていきます。ごはんもふっくら炊き上げてあることで、全てがとろける食感。これはウマい! 創業から継ぎ足し続けた伝統のタレは甘すぎず、コクがあり、全体に「上品」さを漂わせています。

 店先で捌きたての鰻に串を打ち、サッと白焼きしてから蒸し器で蒸して余分な脂を落とし、旨みだけを残して蒲焼にする……。すべては職人の経験による絶妙なタイミングでなされるからこそ、この食感、旨さが生きているのでしょう。

 お店の風情や賑わいの中でいただくうな重のおいしさは格別。思い出に残るひとときと味わいを堪能できますよ。

●SHOP INFO

川豊 本店 外観

川豊 本店

住:千葉県成田市仲町386
TEL:0476-22-2711
営:10:00~17:00(L.O.)
休:なし(不定休あり)

名代「うなぎ」と合わせて、様々な日本料理とお酒を楽しめる『日本料理 菊屋』

『川豊』の隣にある『日本料理 菊屋』は、創業280年とも言われる老舗中の老舗で、門前にて飲食業(古くは煮売屋と呼ばれていた)を営んできました。なんと現在、11代目。成田グルメを伝え続ける、希少な名店の一つとなっています。

 今ではうなぎが有名になりましたが、元来は日本料理店。うなぎと合わせて、他の料理を楽しむならこちらを訪れるといいでしょう。天ぷらや刺身、ご当地グルメの「鯉こく」、白焼きなどの一品料理のほか、天丼などのごはんものや、鰻重と天ぷら、刺身などがセットになった「鰻重御膳」など、バラエティ豊かなメニューが揃っています。

「鰻重(半身)」吸物、香物付き 2500円(1尾の場合は3800円)。肝吸にする場合は+350円
「鰻重(半身)」吸物、香物付き 2500円(1尾の場合は3800円)。肝吸にする場合は+350円

 今回、いただいたのは所謂うな丼の「鰻重(半身)」と、一品料理の「天ぷら」。効果な鰻重をお得に味わえるサイズがあるのは嬉しいですよね。お酒も進むメニューです。

『菊屋』の「鰻重」は静岡や九州産のうなぎを使っており、串打ちせずに、丁寧に焼き上げています。継ぎ足し続けてきたタレは成田らしい濃い目の醤油と甘さが際立ち、パリッと焼いたうなぎ香ばしい風味と絶妙に絡み合います。他の2店に比べ、パンチのあるコクと甘さを感じました。

[食楽web]
[食楽web]

 うなぎは串打ちしていないため、身が厚く、ふっくらしているのも特徴。半身の「鰻重」ながら、お腹も満たされているのを感じました。ちなみに、香物には大根の皮の醤油漬けも添えられているのが他とは違うところ。成田らしい漬物をさりげなく楽しめます。

「天ぷら」2000円
天ぷら」2000円

 車海老や2種類の白身魚、野菜など9種類ほどが盛り合わされた「天ぷら」は、さっくりとした衣と具のバランスがいい。これは、ビールが進む、進む。さらに白焼きや鯉こくを味わえば、かなり満足の行く食事が楽しめるでしょう。

 ちなみに、130年は経つ建物の風情もよし。ほんのり薄暗くなった店内は居心地が良く、ついつい長居してしまいそうです。お正月だけじゃなく、ゆっくり成田散策に来た際に立ち寄るのもおすすめですよ。

●SHOP INFO

日本料理 菊屋 外観

日本料理 菊屋

住:千葉県成田市仲町385
TEL:0476-22-0236
営:10:00~21:00(L.O.20:00)
休:年中無休
http://www.kikuya.site/

調査結果

 成田山表参道には成田名物の「うなぎ」を味わえるお店がひしめき合っています。こちらにあげた『駿河屋』、『川豊』、『菊屋』は古くから地元人のみならず、多くの人に愛されてきた名店ばかり。味わいや店の風情がまったく異なるので、気に入った店へ訪れるもよし、梯子するもよし。うなぎを代表とする成田山表参道グルメを満喫してください。

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