多くの人が、他人とのコミュニケーションに関して「自分から声をかけられない」「声が通らない」「人前で話すのが苦手」といった悩みを抱えています。本連載では、元アナウンサーでスピーチコンサルタントの阿部恵氏が、著書『1日1トレで「声」も「話し方」も感動的に良くなる』から、声や話し方を改善するための、誰でもできる簡単なトレーニングについて解説します。
1フレーズを50字以内、時間は10秒以内にする
「話がつい長くなってしまうのですが、何文字くらいで話すのがよいですか?」と、よく文字数で尋ねられます。
「つい話が長くなる」対処法の1つとして、第3章では「句点(マル)を多くしましょう」とお伝えしました。この項では、実際に1文(1フレーズ)をどれくらいの文字数と時間におさめればよいのかについてお教えします。
話がつい長くなってしまう理由としては、次のような理由が挙げられます。
- 時系列で話す
- 状況説明が長い
- 自分の感情を盛り込みすぎ
- 謝罪と言い訳が長い
- 自慢話が多い
などです。
たとえば、部署内の忘年会の幹事を任された担当者が、どこのお店で開催するかをメンバーに報告したときの内容です。
「今年も恒例となりました営業企画部の忘年会ですが、昨年はポルトガル料理、一昨年はベトナム料理、その前はインド料理とインターナショナルだったので、今年はどこか? と楽しみにしてくれている方も多くてですね、実際に私のところに『今年のお店はどこですか? 毎年楽しみにしているんですよ』と言ってくださった方もいらっしゃいます。ありがとうございます! さて、今年のお店は、ミシュラン1つ星を取ったクロアチア料理店にしようかと…」
ご本人は盛り上げようとして丁寧に話してくれているのですが、これは過去にさかのぼっての逆時系列(?)と状況説明が長いケースですね。
これを短くスッキリとさせましょう。
「今年の忘年会のお店を発表します! ミシュラン1つ星、クロアチア料理店です」
と、まず結論を言えばスッキリします。その上で、状況説明をすればよいのです。
簡単ですね。
1文は50文字以内が話しやすい
では、1文は何文字がよいのか。文章を書くプロである新聞記者の友人に聞いてみました。新聞原稿の場合は「1文、40~60文字で書く」というルールがあるそうです。ためしに、私も新聞2紙を広げ、1文の文字数を数えてみましたが、見事にどのニュースも、60文字以内で書かれていました。
ただ、新聞原稿を声に出して読んでみたところ、少々息継ぎが苦しい場面に遭遇しました。「話す」場合はもう少し短いほうがよいと感じました。
話す場合の一文は何文字がよいのでしょうか。TVのニュースを参考にしてみます。TVのニュースは、1文は50文字くらいが目安となっています。
50文字ですと、息継ぎをしなくても、一息で読みやすいのです。
話を短くまとめることで伝わりやすくなる
TVのニュースは、冒頭に「リード文」というニュース全体を短く要約したものがあり、その後にニュースの詳しい内容を説明する構成となっています。
リード文:「今日未明、神奈川県川崎市の東名高速道路下り線で、乗用車10台がからむ事故がありました」
〈画面が東名高速の映像へと変わり〉
本文:「事故があったのは、…」
と続きます。
ニュースキャスターがカメラに映っている冒頭部分「今日未明、神奈川県川崎市の東名高速道路下り線で、乗用車10台がからむ事故がありました」が「リード文」です。
そして、リード文が終わると画面はニュースキャスターの顔から東名高速の映像へと変わり、ここからがニュースの本文となります。
このニュースのリード文は、私が読む速度で8~9秒、文字数にして42文字です。
だいぶスッキリした文章ですので、聞いていても理解できますし、読む場合も読みやすくなります。
もう1つ。実際にあった、ある日のニュース原稿を見てみましょう。
「3年ぶりに行動制限がない今年の大型連休。5日はふるさとや行楽地で過ごした人たちのUターンラッシュで、各地の高速道路や空港が混雑しました」
(2022・5・5 NHK webニュースより引用)
最初の「3年ぶりに行動制限がない今年の大型連休」が19文字。次の「5日はふるさとや~」が47文字です。この2つの文で構成されるリード文を読むと、私の読む速度ですと13秒です。
どちらもスッキリとした文章で、読みやすいですね。
一文は短いほうがよいとは言いましたが、10文字とか極端に短すぎる場合は、文章の流れが悪くなり、稚拙な文章になりますので、短すぎることにも注意が必要です。
話が長くなるのを防ぐための1文(1フレーズ)の文字数は50文字まで、時間にすると10秒以内におさめるのがよいです。
■今日の1トレ
1フレーズを50字以内、時間は10秒以内にする
阿部 恵
合同会社Confill
代表
コメント