本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供するデイリーマーケットレポートを転載したものです。

主要国の利上げの影響でリート指数は下落

■2022年のリート市場は、現地通貨ベースでは世界的に下落しました。ロシアウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰などによって、世界的にインフレが高進し、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする多くの主要中央銀行が急ピッチで政策金利を引き上げました。このため長期金利が上昇し、各国の現地通貨ベースのリート指数は下落しました。年初から12月23日までで、東証リート指数(配当込み)は▲7.0%の下落、そのほかの国・地域では二桁の下落となりました。

■日本を除く国・地域の円ベースの騰落率は、円安が進行したことから下落幅はやや抑えられました。今年のドル円レートは、FRBの利上げなどを背景に、10月には一時151円台まで円安が進行しました。しかしその後は、米国の消費者物価指数の上昇度合いが鈍化してきたことなどによりFRBが利上げ速度を緩め始めたことや、日銀が大規模な金融緩和政策を修正したことなどから、12月20日には一時130円台をつけるなど、急速に円高方向への揺り戻しが起こっています。

国・地域別では、アジアが比較的下落幅が小さかった

■国・地域別で見ると、欧米に比べてアジアのリート市場では下落幅が相対的に小さくなりました。アジアでは、シンガポールや豪州で、新型コロナウイルスの感染抑制が奏功し、コロナ規制が撤廃されたことで経済が回復してきています。シンガポールでは、外国人訪問者数の回復に伴って需要が回復しているホテルや、景気回復によってオフィスなどが堅調に持ち直しています。豪州では、コロナ規制の緩和から消費などが回復基調にあるほか、豪州準備銀行(RBA)が継続的に利上げを実施しつつも景気に配慮する姿勢を見せていることからも、底堅く推移しています。一方、香港では、中国リスクによって軟調な局面もありましたが、利上げペースが緩やかになるとの期待から金利が低下する中で、持ち直してきています。

今後の展開:景気悪化を織り込みつつ、今後の利上げ減速が下支えとなるだろう

■世界経済は、これまでの主要国での利上げの影響から、2023年は弱含むと見られ、リートの業績や配当の逆風となりそうです。ただし、長期金利は上昇局面から横ばい・低下局面に移行しつつあると見られ、リート市場を下支えすることになりそうです。一方、日本では日銀が12月に大規模な金融緩和を修正したことで、今後の金融政策動向については見方が分かれるところであり、リート市場は不透明な状況が続く可能性もあります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【リート市場の振り返り】利上げの影響で軒並み下落…今後の展開は?』を参照)。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

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