あの守備一辺倒のサッカーでベスト8以上を目指すのは相当難しいと語るセルジオ越後氏
あの守備一辺倒のサッカーでベスト8以上を目指すのは相当難しいと語るセルジオ越後

守りを固めてカウンターを狙う。5人交代をフル活用してプレスをかけ続ける。昨年のカタールW杯では日本に限らず、そうした守備的なサッカーをやるチームが多く、幅を利かせた。守備優先だからなのか、延長戦やPK戦も多かった。

アフリカ勢として初めてベスト4に進出したモロッコにしてもそう。飛び抜けたスター選手はいないけど、大勢のサポーターの声援をアドバンテージにして、しっかり走って、粘り強く守って、時にはPK戦まで持ち込むなどしてジャイアントキリングを繰り返した。

ベスト8までの5試合で失点はわずかに1。今大会を象徴するチームだったね。

何が起こるかわからないのがサッカーの魅力のひとつ。モロッコ以外にも日本がドイツスペインに勝ったり、サウジアラビアアルゼンチンに勝ったり、韓国がポルトガルに勝ったり、サプライズの相次いだ大会だった。

ただ、そうした中でもアルゼンチンフランスメッシエムバペという強烈な個の力を持った選手を擁する両チームが決勝に勝ち上がったのは、示唆に富んでいる。フィジカル重視、システマチックな負けないためのサッカーがどんなにはやっても、結局、最後にモノをいうのは個の力。そういうことだと思う。

メッシなんてほとんど守備をしていなかった。相手がボールを保持しているときはプレスに行くこともなく、歩いて体力を温存している。でも、ここぞという場面では一気にギアを入れて決定的な仕事をする。

もちろん、ほかの選手がメッシの分まで必死に守備を頑張るからこそ成立するプレースタイルだけど、そうやってひとりで試合を決められる選手にあらためて強い魅力を感じた。

ただ、そうした選手は今や希少で、35歳のメッシをはじめ、ロナウド(37歳)、モドリッチ(37歳)、ネイマール(30歳)とベテランが多いのは気になった。次の大会でも活躍を期待できるのはエムバペ(24歳)くらいかな。新たなスターが出てこなかったことには少し物足りなさも感じたね。

日本に当てはめて考えても、選手たちはよく頑張ってドイツスペインに勝って、それは評価すべきだと思うけど、一方であの守備一辺倒のサッカーでベスト8以上を目指すのは相当難しい。選手たちもコメントしていたように、今後はもっと個の力を伸ばす必要がある。

昔に比べればレベルが上がったのは間違いないし、また、メッシエムバペ級のスターが簡単に出てくるわけはないんだけど、それでもアルゼンチンフランスのハイレベルな決勝を見た後では個の力という部分を意識せざるをえない。

積極的な仕掛けで期待を持たせてくれた三笘にしても結局スタメンではなく、絶対的な存在とまでは言えなかった。その意味で、2023年は三笘をはじめ鎌田、堂安、久保といった攻撃的なポジションの選手が所属クラブでどこまで活躍できるかに注目したいし、ステップアップに期待したい。

3月には国際Aマッチウイークがある。吉田や長友ら長くチームを支えてくれたベテランが退き、招集されるメンバーの顔触れはガラッと変わるはず。パリ五輪世代も含めて3年後の北米W杯に向けて誰が頭角を現すのか。カタールW杯は終わったばかりだけど、目が離せないね。

構成/渡辺達也

あの守備一辺倒のサッカーでベスト8以上を目指すのは相当難しいと語るセルジオ越後氏