2022年中の全国における交通事故死者数が公表。26人減少するも、半分の地域で前年より増加しました。都道府県別でワーストは大阪府でしたが、増減に着目すると、取組みが功を奏した県や、不名誉記録を出した県が明らかになってきます。

2022年中の交通事故死者2610人、前年比26人減少

警察庁が2023年1月4日、2022年中の全国の交通事故死者数などを公表しました。事故発生から24時間以内の交通事故死者は2610人。外出制限のあった2021年より26人減少しました。減少を歓迎したいところですが、上位を占める地域では、高止まりや増加が見られます。楽観はできないようです。

警察庁が保有する1948年からの統計で、6年連続で最少を更新した」。谷 公一国家公安委員長はこう話します。

交通死亡事故は、昼間の時間が短くなる秋口から年末にかけて増加。その勢いが新年1月まで続き、2月から夏にかけて緩やかに減少するうねりを繰り返します。2022年の月別死亡事故年数は、1月の事故が例年より少なく、12月に向けて増加傾向を描いていたものの、通年では減少になりました。

これが行動制限などによる一過性のものか、それとも事故トレンドが根本的に減少傾向にあるのかは、現時点では不明です。仮にコロナ禍の行動制限による影響であれば、再び死者数が上向くことも考えられます。

気になることは、もう1つあります。23の府県で、2021年より死亡事故が増えているのです。ほぼ半数の地域で増えているのに、全国的には減少に転じているのは不思議です。

その理由は神奈川県福岡県での取り組みにありました。神奈川県では前年比で29人、福岡県で26人と大幅に死者数を減らすことに成功しています。この減少数は、奈良県山形県などの1年間の死者数と同じです。

特に神奈川県は2021年に142人の事故死者を出し、全国ワーストを記録しました。2022年は29人減少させて、8番目まで後退しています。全国で最多の減少数でした。

現状維持では、死亡事故の上位になってしまう現実

神奈川県に代わり全国ワーストになったのが大阪府です。2021年、大阪府の被害は神奈川県に隠れていただけで、差はほとんどありませんでした。2022年の大阪府の死者数は141人、大阪府としては前年よりたった1人増えただけですが、それでも全国ワーストです。

愛知県は逆に増加数が全国最多でした。前年比で20人死亡事故を増やし137人。大阪府に続くワースト2位の不名誉な記録です。

上位5都県をみると、東京都を除き4県で、死者数は前年より増えています。仮に神奈川県福岡県の取り組みがなければ、総数で減少に転じることは難しかったかもしれません。

全国の事故死者数を最少から見ると、下位5県で前年より死者が増えているのは1県だけ。上位5都県とは真逆です。また、最少の鳥取県は年間14人、大阪府の10分の1です。

日本は2025年度までに事故から24時間以内の死者数を2000人以下、30日以内の死者数を2400人以下に抑えて、世界一安全な道路交通の実現を目指すことを決めています。

谷 公一国家公安委員長が2023年の対策を説明します。

「こどもや高齢者をはじめとする歩行者の安全の確保、自転車の交通ルール順守の徹底、飲酒運転等の悪質・危険な交通違反の取締り等の多角的な取り組みを効果的かつ強力に推進するよう警察を指導する」

運転者の注意や先進安全技術の向上で事故死者は減少傾向にありますが、油断はできません。

写真はイメージ(画像:写真AC)。