東京都内のホームレス支援団体が8月14日、記者会見を開き、野宿者(ホームレス状態の人)に対する襲撃の実態に関する調査結果を公表した。それによると、約4割の野宿者が襲撃を受けた経験があることが分かった。支援団体は同日、東京都に対策を求める要望書を提出した。

調査は「NPO法人自立生活サポートセンター・もやい」などの支援団体が6月28日から7月14日にかけて、共同で実施。新宿や渋谷、池袋など、都内の野宿者に対して聞き取り調査を行い、347人から回答を得た。男性が97.4%を占めており、平均年齢は59.8歳だった。

調査結果によると、襲撃の経験について、「よくある」と回答したのが22人、「たまにある」が63人、「ほとんどない」が41人、「まったくない」が192人だった。「よくある」「たまにある」「ほとんどない」を合計すると126人で、無効回答を除いた全体の39.6%が一度は襲撃を経験していることが分かった。

また、襲撃した加害者のうち、「大人」が22%、「子ども・若者」が38%、「その他・不明」が40%で、子どもを含めた若者が多いことが分かった。また、襲撃者の人数は「1人」が25%、「2〜4人」が47.5%、「5人以上」が27.5%で、複数人の集団で襲撃しているケースが75%を占めていた。

襲撃の内容としては、「物を使った暴力」が37%で最も多く、「暴言・脅迫」が25%、蹴る、殴るといった「身体を使った暴力」が25%、その他13%だった。

具体的な事例としては「言いがかりや因縁をつけられる」「段ボールを蹴られる、殴られる」「ペットボトルを投げられる、空き缶や石を投げられる、鉄パイプでたたかれる」「タバコの火を投げられる、荷物に火をつけられる、花火を打ち込まれる」などの被害が判明した。

●調査担当者「人をモノとして見るのはゆゆしきこと」

記者会見で、「NPO法人自立生活サポートセンター」の大西連理事長は「この結果をより多くの人に知ってほしい。背景には野宿者に対する社会的な差別や偏見がある」と指摘した。

また、聞き取り調査を担当した「社会事業委員会ひとさじの会」の吉水岳彦氏は、「川沿いをまわって、出会った人たちから話を聞いた。(野宿者たちは)『たいしたことはされていない』と言うが、実際は暴力行為や嫌がらせ日常茶飯事に受けている。

若い人たちが、花火を使って襲撃しているという話も聞いた。(野宿者は)『俺らのことをモノとしてしか見ていない』と話していた。人をモノとして見るのはゆゆしきことだ。時として命を奪うこともあるという認識がないのがおそろしい」と語った。

学校で野宿者に対する理解を深めるための教育活動に取り組んでいる「山谷労働者福祉会館活動委員会」の向井宏一郎氏は「この調査結果を具体的な手がかりとして、教育現場での取り組みが進んでほしい」と期待を込めた。

●野宿者「ロケット花火を打ち込まれた」「5人以上でやってくる」

記者会見では、襲撃の被害を受けたことのある野宿者たちも発言した。

台東区の60代男性は「ここ3カ月は花火の被害が大半だ。22時から4時くらいが多い。鉄パイプを持った中学生くらいの3人組が向かってきたこともあった。爆竹を投げられたこともあった。(子どもたちは)ずっといて、こっちの隙をうかがっている」と襲撃の恐怖を語った。

墨田区の60代男性は「0時くらいにロケット花火を打ち込まれたことがあった。彼らは5人以上でやってくる。『乞食野郎』『泥棒野郎』『死ね』と言われることもある。今晩来るのではないか不安になる」と述べた。

(弁護士ドットコムニュース)

「花火を打ち込まれた」「鉄パイプで襲われた」 東京・野宿者の4割「襲撃被害」経験