韓国の情報機関・国家情報院(国情院)は5日、国会情報委員会で北朝鮮情勢に関する報告を行い、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)元外相について「粛清は確認されたが処刑されたかは確認されなかった」と説明した。

この説明は、読売新聞の4日付の報道を受けたものだ。北京総局発の同紙報道は「同国(北朝鮮)の内情に詳しい複数の関係筋」からの情報として、李氏が「昨年処刑された模様だ」とし、また「同国の外務省関係者4~5人も相次ぎ処刑されたとの情報もある。北朝鮮当局は、国外勤務の外交官らが動揺して亡命に走らないよう、引き締めを強めているという」ともしている。

読売も国情院も、李氏粛清の理由や背景については明らかにしていない。主要メディアは「李氏は、2018年から19年にかけて正恩氏とトランプ米大統領(当時)の米朝首脳会談で重要な役割を果たした。19年のベトナムでの首脳会談が物別れに終わった後、公の場に姿を見せていなかった」(ロイター)などとして、米朝首脳会談が決裂したことの責任を問われた可能性を匂わせている。

北朝鮮では近年、最高幹部が忽然と姿を消し、その動静が不明のままとなる例が多数見られる。

その筆頭と言えるのが、かつて金正恩総書記に次ぐ「ナンバー2」と言われたこともある黄炳瑞(ファン・ビョンソ)元軍総政治局長だ。同氏は2017年10月以降、公式の場から消えたり復活したりを繰り返し、翌年12月3日付の北朝鮮メディアの報道を最後に姿を消した。

その後、韓国紙・東亜日報の敏腕記者で、脱北者でもあるチュ・ソンハ氏が「処刑された」との情報を公開したが、韓国当局などは見解を明らかにしていない。

チュ・ソンハ氏によれば、黄氏の転落のきっかけは2017年10月12日に行われた平壌万景台革命学院創立70周年行事での不手際で、金正恩氏は顔を真っ赤にして激怒したという。チュ氏はさらに、「軍をしっかり統率できない黄炳瑞への積もり積もった不満が爆発した」ことが処刑につながったとの見方を伝えている。

金正恩氏は以前、高官の粛清でも公開処刑をよく行っていた。しかし国際社会の目を気にしてか、最近ではそうした例は見られなくなった。そしてそのことが、北朝鮮の権力中枢の動静を読みにくくしている部分があるのも事実ではある。

平壌総合病院の建設現場で激怒する金正恩(朝鮮中央テレビ)