自らの境遇を呪い、他人を怖がらせるのが趣味の幽霊。公園にたたずむ少女を驚かせようとしたところ、彼女は平気な顔で「あたしも幽霊なんだ」と答え――。優輝光太朗(@duke0069)さんのオリジナル漫画「幽霊が怖がらせようとした少女は……」は、幽霊と少女の交流が胸を打つ短編作品だ。

【漫画】本編を読む

■“幽霊”を名乗る少女の言葉に『幽霊』が返す、心温まる“呪いの言葉”

学校でも家庭でも疎まれ、自ら命を絶った少女。幽霊となった彼女は、腹いせに人を怖がらせることを繰り返していた。

ある日、セーラー服姿でブランコに腰かける少女をターゲットに選んだ幽霊。「私のことみえる?」といかにも恐ろしい姿で現れてみせたものの、セーラー服の少女は「よくここらへんにいるよね」と予想外の返答。霊感が強いから見慣れていると話す彼女はさらに、「あたしも幽霊なんだ」と告げる。

どう見ても生きている彼女の言葉に動揺した幽霊に、少女は自らの身の上を語る。彼女も親に無視される日々を過ごしていて、持久走で1位をとっても、テストで100点をとっても、両親は褒めるどころか邪険にするというのだ。

「誰からも見てもらえないなら幽霊と同じだよ」。そううつむいて話す少女が、自らの生前と重なった幽霊。「次に会った時はお前を怖がらせてやるから」と、幽霊らしい言い回しで思いを伝えると、少女は「またね!」と、話しかけてくれたことへの感謝とともに再会を約束。

それから幽霊の趣味は、人を怖がらせることから、大切な友達を笑顔にすることに変わったのだった。

■作品が届かない…自分のさびしさを託した作品

作者の優輝光太朗さんは、『怪獣列島少女隊』(新潮社)や『シリーズ怪獣区 ディスカルゴ』(東映特撮ファンクラブ)、『終末世界の守護者』(めちゃコミック)など商業作品を発表するプロの漫画家。そのかたわら個人制作の作品も数々発表しており、“エビ怪人”への変身能力を身につけてしまったギャルの日々を描く「ロブスターガール」など、商業・個人制作ともに怪獣やクリーチャーが登場する作品が多い。

そんな優輝さんが、二人の少女だけを登場人物に描いたのが「幽霊が怖がらせようとした少女は……」だ。優輝さんは本作を振り返り、「かなり気持ちを乗っけて描いた作品」と話す。

「恥ずかしい話ですが、これを描こうとした時期、思うように自分の作品が人に行き届かないことに頭を抱えてまして……。人に気付いてもらえない寂しさを、幽霊と、親に相手にされてない女の子のキャラに変換しました」

そうして描かれた本作は、重なる境遇で、幽霊だからこそ手を差し伸べられる二人の出会いが胸を打つ。

「同じように自分を見てほしくても上手くいかず悔しい思いを抱えている人はきっと他にもいるし、決して見てくれている人がゼロではないよと、自分で自分を慰めるかのような思いがあった気がします」と、優輝さんは作品に込めた想いを明かす。

現在は新連載の準備中だという優輝さん。「普段は特撮系の作品が好きで、主に怪獣を題材とした作品をよく描きます。現在、発売・配信中の商業漫画がいくつかあるので、Twitterのリンクからチェックしていただけるとありがたいです。新連載も怪獣ものですので、Twitterなどで新情報をチェックしていただけたら嬉しいです」と、今後の展望を語ってくれた。

取材協力:優輝 光太朗(@duke0069)

幽霊が驚かそうとした少女は、平然と「あたしも幽霊」と答え…“幽霊”2人のつながりが胸を打つ/画像:優輝 光太朗(@duke0069)