1月10日放送スタートのドラマ10「大奥」(毎週火曜夜10:00-10:45、NHK総合)。同作は男女が逆転した江戸パラレルワールドを描いたよしながふみ氏の人気コミック「大奥」をドラマ化した作品だ。

【写真】堀田真由が“苦心した”と語る、“家光”が福士蒼汰“有功”と出会うシーン

今回は、初の“女将軍”となった3代将軍・徳川家光を演じる堀田真由にインタビュー。女性として生まれながらも徳川の世を存続させるため、男性のように生きることになるという難しいキャラクターを演じるための役作りや、共演した福士蒼汰斉藤由貴とのエピソードなどについて話を聞いた。

■“男女逆転”という発想がとても面白い

ーー同作は“男女逆転”した江戸の世を描いた作品ですが、ストーリーをどう感じましたか?

まずは“男女逆転”という発想がとても面白いなと思いました。そして、女性が将軍になっているのに、史実は踏まえて描かれていて、読んでいく中で「ここにつながるんだ」という発見があったりして、よしながさんの頭はどうなっているんだろう、本当にすごいなと思いながら楽しく読ませていただきました。

例えば、徳川家光は参勤交代の制度化や田畑売買禁止令の発布、キリスト教の禁止や鎖国など、いろんな政策を実施した将軍ですが、作中でも「田畑の売買を禁止し、百姓どもをその地に縛り付けてしまうというのはどうじゃ?」といったセリフが出てきます。

私も時代劇を演じるようになってから「もっと歴史を楽しんで勉強すればよかったな」「日本の良さをもっと学んでおけばよかったな」と思うようになったので、歴史を楽しいと思ってもらえるきっかけにもしていただけたらなと思います。

■よしながふみさんともお会いできました

ーーよしながふみさんの同名人気コミックが原作ですね。

本当に原作ファンの方がたくさんいらっしゃる作品ですよね。

実は現場で、実際によしながさんにお会いすることができたのですが、その時「難しい役だよね、でも楽しくない?」と言っていただいて。「楽しいです」とお答えしたのですが、本当にその通りです。

家光編は特に、有功と家光というお互いに傷を抱えた2人が寄り添って何か温かいものが生まれ、人間の本質的な部分が揺さぶられるエピソードになっていると思うので、「難しい」と思ってがんじがらめにならず、感覚を意識しながら大事に演じたいと思っています。

ドラマとしての演出があるので全て原作通りにはいかないですし、逆にそれがいい部分だと思うのですが、現場には台本と漫画を持っていって、「このシーンはどういった描かれ方をしているのか」と都度確認するようにしています。

ーー今回、家光役に決定した時のお気持ちはいかがでしたか?

喜怒哀楽が激しく、心の機微をていねいに表現していかないといけない役柄だと思いました。こんなすてきで挑戦的な役どころを託していただけたことがうれしく、そしてしっかりとプレッシャーを感じながら収録に挑んでいます。

■役作りには「鎌倉殿の13人」での経験も活かして

ーー家光は女性でありながら男性のように生きるという非常に難しい役どころですが、どのように役作りを?

クランクインする前に男性の立ち座りや歩き方などの基本の所作は教えていただきました。1日の収録の中でも女将軍をやっていたかと思ったら次のシーンでは小姓になっていたりなど、扮装替えが多いのですが、小姓のヘアメイクをしていただいているときにはわざと足を開いて、そこから気持ちを作っていったりしています。

あとは、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2022年、NHK総合ほか)でご一緒した男性の皆さんの所作から「立つときは手をついたらいけないんだな」などといった細かい部分を思い出したりもしています。

■間違いなく代表作になったと確信

ーー家光とご自分の似ている点や、共感できる部分を教えてください。

似ている部分は...なさそうです(笑)。私は普段あまり怒ることがないのですが、家光は突発的に怒りのメーターが0から100に動く性格です。

とはいえ、根本的な悩みや人間の弱さみたいなところでは共通する部分があると思います。私はこれまで役とプライベートの切り替えができるタイプだったのですが、今回は日常生活にも支障があるほどに結構引きずっていて。泣きの芝居でも、これまでは「明日泣かなきゃいけないんだな」と少し憂鬱になることもあったのですが、今回は勝手に涙が出てきたりするほどなので、これまでになく自分の存在を役に近づけられているんじゃないかと感じています。

これは受け取ってくださった方が感じるものではありますが、自分にとっては間違いなく代表作になったと確信しているので、本当に多くの方に見ていただきたいです。

ーー演じる上で気をつけていることを教えてください。

ドラマの収録だと順撮りができないので、収録シーンの前後でどういうことが起きたのか、家光が誰と出会って、どう心が動いて変わっていったのか、皆さんと共通認識を持ちながら収録するようにしています。

それこそ、私がクランクインしたのは「移りゆくの、世は」というセリフからだったのですが、家光がいろんなことを見て行った上で時代の変化を感じた、という言葉なので、逆算して演じる必要がありました。

福士蒼汰演じる万里小路有功は「家光にとってかけがえのない存在」

ーー家光は福士蒼汰さん演じる公家出身の美しい僧・万里小路有功と心を通わせて行きます。有功をどのような人物だと捉えていらっしゃいますか?

私から見て有功は、完璧に見えるけれど彼自身も弱さを持ち合わせている人であり、美青年であり、家光を優しく包み込んでくれる人。家光にとってかけがえのない存在です。

完璧な人に見えますが、有功にも家光との関係や大奥に来た理由など、いろいろな背景があります。家光と一緒で、表面上だけではわからない何かを持ち合わせた人だと思います。人間誰しもそうだと思いますが、そういった“弱さ”のような部分も作中に出てくるので、そこは私も家光として一緒に表現できたらいいなと思っています。

ーー福士さんとの収録中のエピソードを教えてください。

家光編が始まる2話には、家光が扇子で有功の顔を何度も叩いてしまうという2人の出会いのシーンがあるのですが、家光の初登場のシーンとして、彼女の人となりを表現する必要があったこともあり、悩んでいたんです。

何度も有功の顔を叩かないといけないのですが、ずっと叩いていても怖く見えなかったり、流れが一緒になってしまったり...。

しかも本番1回目で、涙を流してしまって。家光の心情には合っていたと思うのですが、彼女は心で泣いていたとしても顔に出さない人であり、泣いてはいけないシーンなので「どうしよう、心で思っていることとちぐはぐなことをやっていかないといけないから難しいな」と思っていたのですが、監督と相談している時に、福士さんも常に横に来てくださって。

「こういうふうにやってみたらどう?」「有功のことをもっと適当な扱いをするように見て、叩くときにちょっと強弱をつけた方がいいかもしれないね」などと優しく助け舟を出してくださって。それも全く押し付けのようではなく、「真由ちゃんの中でやりやすいポイントを探してみたらどう?」と。本当に一緒に作品を作っていけてよかったなというふうに思います。

ーー斉藤由貴さん演じる春日局と関わるシーンも多いですが、斉藤さんとご共演されていかがでしたか?

春日局は大奥を仕切っている役どころなのですが、とあるシーンで「わかっておろうな」というセリフがあって。このセリフは声を張り上げて言われるのかな? と思っていたら、収録では淡々と言われていて、怖い、本当の春日局だ...! と感じました。

実際の斎藤さんはとても優しくて、先日の収録の合間でも卵かけご飯の話をされていたりとチャーミングでかわいらしい方なんです。でも役に入られると急にスイッチが入って、本当に春日局がそこにいるという感じです。ご一緒させていただけて本当にうれしいです。

堀田真由/(C)NHK