株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、商用車の世界市場の調査を実施し、主要国の市場概況、主要メーカー動向を明らかにした。ここでは、2035年までの世界販売台数、商用車の電動化比率予測について公表する。

1.市場概況

2021年の商用車の世界販売台数は2,573万1,000台で、前年比で7.3%増となった。2022年は、新型コロナウイルス禍による都市封鎖の影響、ウクライナ侵攻などの影響からサプライチェーンの混乱により、生産に制約を受けており、販売台数は減少に転じるとみられる。2023年以降は、こうした制約が緩和され徐々に販売台数が回復、中長期的には経済成長が期待される新興国が商用車市場の牽引役になるとみられる。

2021年における電動商用車の販売台数は29万9,000台で、世界販売台数全体に占める電動化比率は1.2%となっている。現在は、中国、欧州が中心となって市場を牽引しており、各国の補助金などの普及促進策を受け、販売台数を伸ばしてきた。また、商用車特有の課題として挙げられる積載量、航続距離に関する対策も各国で進んでいる。積載量に関しては、欧州がZEV(Zero Emission Vechile:BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車))に限り、積載量の緩和を実施しており、米国でも同様の動きがみられる。航続距離においては、現在急速充電のほか、バッテリ交換方式、架線充電方式など様々な充電方式が検討されており、貨物旅客輸送事業者が安心して電動車を運用できるインフラ整備を進めている。

このように、貨物旅客輸送事業者が車両を購入する際の基準とする積載率、稼働率に関する問題解決に向けた取り組みが進んでおり、電動車の普及に伴い各国で同様の動きが加速するとみられる。



2.注目トピック~商用車の電動化が進む背景

運輸部門におけるCO?総排出量は乗用車と貨物車が多くを占めており、乗用車及び貨物車の脱炭素化の実現は非常に効果が高い。そのため、CO?削減に向けて化石燃料を使用しないモータのみで走行する電動車やE-fuel(水素と二酸化炭素を原料として製造される合成燃料)、水素エンジンなどの普及が有効である。また、貨物輸送手段としてCO?の排出量が自動車より少ない船舶や鉄道を利用する、いわゆるモーダルシフトを推し進めることも効果的といわれている。

また、企業はサプライチェーン全体においても脱炭素化が求められ、製品の製造時に限らず、流通時にもCO?の排出を削減する必要がある。実際に、自社の製品配達をBEV(電気自動車)のみで運用するという目標を掲げる企業も出てきており、荷主から貨物輸送事業者へBEVの導入を強く要望する流れが強まることも予測される。一方で、貨物輸送事業者にとっては、荷主の脱炭素化戦略に貢献するという新たな企業価値を生み出せる局面となっている。

このように、環境問題、企業の社会的責任という観点からも、電動車の普及は今後も促進されるとみられ、BEVを中心に電動商用車の販売台数は増加していくものと考える。

3.将来展望

今後、中国や欧州が中心となって電動商用車市場を形成していく見通しであり、インドなど新興国においても大気汚染問題からラストワンマイル、旅客輸送領域で電動車の普及が進むとみられる。

中国では、NEV(New Energy Vehicle:PHEVプラグインハイブリッド車)・BEV(電気自動車)・FCEV(燃料電池車))向けの補助金など各種優遇策を受けて、電動商用車の販売台数は増加傾向にある。特に、大型バスはBEVの新車販売台数に占める割合が高く、宇通客車などが台頭している。バスに関しては海外への輸出、ノックダウン生産などが進んでおり、中国は電動商用車市場で中心的な存在になっている。

欧州では、小型商用車を中心に電動化が進んでいるが、主要商用車メーカーが2022年になってラインアップを拡充しており、電動化が遅れている大型トラックの領域でも電動車の販売台数が増加していくとみられる。

電動商用車の中でも多くの構成比を占めるBEVは、バスや小型商用車を中心に導入が進んでいるが、航続距離や積載率低下などの問題を抱えている。HEV(ハイブリッド車)は、代替燃料や水素エンジンとの組み合わせで脱炭素化を目指す動きもあり、商用車においてもBEV一本化ではなく、長距離輸送は、HEV、FCEV、代替燃料を活用するなど、パワートレインごとの適材適所が進むとみられる。

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調査要綱
1.調査期間: 2022年10月~12月
2.調査対象: 商用車メーカー、システムサプライヤー、業界団体等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2022年12月28日

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