年収が1,200万円を超える、誰もが認める「完全なる勝ち組」のサラリーマン。誰もが羨望の眼差しを向けるエリートですが、意外にも破綻の危機に直面しているケースも多いといいます。みていきましょう。

日本のサラリーマン「勝ち組」「負け組」のラインは?

会社員であれば、一度は人と給与を比べたことがあるでしょう。人の評価はお金じゃないと否定しても、できれば「勝ち組」の中に入りたい、と少なからず願うものです。

厚生労働省の調査によると、日本のサラリーマン(正社員、平均年齢43.1歳、平均勤続年数14.0年)の平均給与(所定内給与額)は平均34.8万円。賞与等含めた年収は571.1万円です。まずはこのラインを上回っているかどうか、気になるところではないでしょうか。

さらに同条件で給与の分布をみていくと、中央値で月30.8万円、上位25%となると月40.8万円、上位10%となると月53.6万円。賞与も含めた年収(推定)はそれぞれ、476.6万円、631.7万円、830.4万円となります。

10人に1人であれば十分「勝ち組」と呼べそうですが、さらに数が絞られてくると「完全な勝ち組」と呼べそうです。給与月60万円、推定年収1,000万円を超えるのは6.5%。月給与70万円、推定年収1,200万円を超えるのは3.3%。日本のサラリーマンの上位3%。さすがにここまでくると、「勝ち組」であることを否定する人は、ほんのひと握りになるはずです。

2020年の国勢調査によると、男性会社員(雇用者)は2,458万1,181人。そのうち正社員は2,006万5,078人です。そのうちの3.3%ですから、年収1,200万円超えの「勝ち組」は66万人ほどいるという計算になります。数にすると結構多く感じるかもしれませんが、日本のサラリーマンの上位3%強に君臨する「勝ち組」であることは確かです。

そんな「勝ち組サラリーマン」。さぞ、不自由のない暮らしをしていて将来も安泰かといえば、そうは言い切れないようです。人よりも豪華な住まいに、持ち物はどれもブランドもの。車は高級外車で、子どもたちは幼少より私立に通う……そんな勝ち組サラリーマンの暮らし。しかし、生活費はギリギリというケースも珍しくないというのです。

年収1,200万円超えでも…高給取りの意外な姿

金融広報中央委員会『令和3年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』によると、金融資産を「保有している」世帯は78.0%、「保有していない」が22・0%。ここでいう「金融資産」とは、「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または 将来に備えて蓄えている部分とする。ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している 金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えてい る部分は除く」としています。つまり「金融資産がある」ということは「将来に対して備えている」ということになります。

さらに年収ごとにみていくと、年収があがるごとほど「金融資産あり世帯」は増加。年収1,200万円以上世帯になると、9割を超えます。

【年収別「金融資産」の有無】

300万~500万円未満:75.8%/24.2%

500万~750万円未満:83.1%/16.9%

750万~1,000万円未満:88.0%/12.0%

1,000万~1,200万円未満:89.2%/10.8%

1,200万円以上:91.1%/8.9%

出所:金融広報中央委員会『令和3年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』より

ただ100%ではありません。年収1,200万円以上世帯の9%は「将来への蓄えなし」という状況です。先ほどの結果から考えると、およそ6万人の勝ち組サラリーマンがそんな不安定な状況にいるということになります。高給だからといって、貯蓄があるわけではないのです。

そうなると、些細なことであっという間に家計は破綻します。会社員である以上、会社の業績によって減給ということは珍しくありませんし、家族が急な病気で、住まいのトラブルで修繕費が……そんなことも当たり前のように考えられます。減給や突発的な出費に応えることができず、あっという間に破綻を迎えてしまうわけです。

高給取りなのに、現役バリバリの中年で家計破綻。その発端となるのは、身の丈以上に良く見せたいという「見栄」であることが多いと専門家は警鐘を鳴らします。「勝ち組」らしい住まい、「勝ち組」らしい車、「勝ち組」らしい暮らし、「勝ち組」らしい子どもの教育……勝ち組ではない、その他大勢からみれば、なんともお粗末な理由ですが、家計破綻のリスクが高い「勝ち組」が意外にも多い、というのが現実。どんなに収入が多かろうが、将来を見据えたマネープランは必須なのです。

(※写真はイメージです/PIXTA)