株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は信越化学工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:斉藤 恭彦)との共同開発により、こすれや汗に耐える強靭さと撥水性を持ちながらも、表情の動きにもヨレない柔軟な皮膜を形成することのできる樹脂素材「架橋型MQレジン」(※1)を開発しました。この研究成果は2023年3月16日発売の化粧下地「エスプリーク トリプル ラスティング プライマー」(※2)に応用されます。
(※1)MQ構造と呼ばれる強靭なシリコーン骨格をもつ樹脂で、それぞれのMQ構造を繋いだ(架橋した)構造をもつ
(※2)2023年1月16日発行ニュースリリース 
 https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2023/01/2023011603.pdf

図1 開発した「架橋型MQレジン」の動きに対するヨレ評価

(動画:https://youtu.be/jl7bmneFzuk

  • 研究の背景
 化粧直後の仕上がりが長時間持続する「化粧もち」は多くのメイクユーザーが求め続ける機能です。特にファンデーションや化粧下地といったベースメイク商品では、昨今のマスクの着け外しが多い社会環境もあって、そのニーズはさらに高まっています。一方で、例えば化粧下地においては、高い化粧もち機能を有する商品は皮膜が強靭であるがゆえに硬さがあり、表情などの顔の動きで化粧膜が片寄ったり、部分的に剥がれるといった「ヨレ」が生じやすいという課題がありました。そこで本研究では、こすれや汗などに耐える強靭な皮膜を形成することで知られている「MQレジン」という樹脂素材に着目し、この課題を解消する素材の開発に取り組みました。
  • 架橋型MQレジン開発 ~強靭さと柔軟性の両立~
図2 「架橋型MQレジン」の分子構造
 MQレジンはMQ構造と呼ばれる強靭な皮膜を形成する部分がありますが、これまでの研究からこれらは塗布した皮膜の中で凝集傾向にあり、その凝集部分が皮膜の硬さや肌への負担感に繋がっていると考えました。そこで、この凝集を抑制すべく、MQ構造の間に「スペーサー」と呼ばれる柔軟な紐状構造を設けた「架橋型MQレジン」を開発しました(図2)。


 効果検証として、メイクの仕上がり評価に用いる「鼻モデル」の上に本開発品と元のMQレジンを半顔ずつ塗布して皮膜としたのち、鼻モデルを笑った時のように大きく伸縮運動をさせたところ、MQレジンがひび割れたのに対して本開発品はひび割れることはありませんでした(図1)。このことから、今回開発した「架橋型MQレジン」は表情の動きに対してもヨレない高い柔軟性を付与できることが確認できました。
  • 架橋型MQレジン皮膜特性 ~高い均一性と向上した撥水性~
図3 「架橋型MQレジン」の皮膜形成のイメージ
 「架橋型MQレジン」の柔軟性はスペーサー部分が凝集を抑制し、均一性な皮膜を形成するためだと考えました(図3)。これを検証すべく、操作型プローブ顕微鏡を用いて「架橋型MQレジン」と元のMQレジンの皮膜表面を比較しました。その結果、「架橋型MQレジン」はMQレジンよりも表面の凹凸が細かく、規則的な周期構造をもっていることが分かりました(図4)。このことから、「架橋型MQレジン」による皮膜は図3のような均一性の高い構造をとっていることが裏付けられました。
 また、MQレジンが本来持っていた強靭さが維持されていることを確認すべく、皮膜の強靭さの指標となる粘弾性を測定したところ、「架橋型MQレジン」は元のMQレジンと同等の強靭さを維持していることが確認できました。さらに、汗に対する化粧もちに求められる機能である撥水性の評価を行いました。これには、水に対する接触角の測定を用い、水を弾く性質であるほど接触角が大きくなります。その結果、「架橋型MQレジン」は元のMQレジンよりも接触角が大きく、高い撥水性を示すことが分かりました(図5)。これは、「架橋型MQレジン」の皮膜のもつ細かく均一な微細構造が、まるで蓮の葉が表面の微細な凹凸で水を弾くように作用していることが示唆されます。このことから、「架橋型MQレジン」はMQレジンが持っていた強靭さを維持したまま、柔軟性と撥水性を付与できていることが分かりました。
図4 「架橋型MQレジン」による皮膜の均一性             図5 「架橋型MQレジン」の撥水性
  • 今後の展望
 本研究により開発した「架橋型MQレジン」は、皮膜の強靭さと柔軟さの両立という化粧もち機能に有用な素材であり、化粧下地以外にもファンデーションなど他のアイテムへの応用を検討していきます。今後も、お客さまのニーズに応える化粧品の機能向上に向けて、素材開発と製品開発を推進していきます。

配信元企業:株式会社コーセー

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