2022年12月、『クライシスコア ファイナルファンタジーVIIユニオン』(以下、CCFF7R)が発売された。本作は2007年に発売されたPSP用ソフト『クライシスコア ファイナルファンタジーVII』(以下、CCFF7)のリマスターで、物語を忠実に再現しつつも、フルHD化やフルボイス化、バスターソードを用いた新たなアクションなどの新要素が複数盛り込まれている。

参考:【画像】GACKTが声を演じるジェネシス

 本作でもっとも重要なのは、なんといってもストーリーだろう。“男たちは己の悲運より、友のために涙を流した”というキャッチコピーが示すように、『CCFF7R』の物語では主人公のザックスを中心に、彼の師匠であるアンジール、劣等感にさいなまれるジェネシス、英雄とうたわれるセフィロスといった男たちが、世界に翻弄されながら闘う姿が描かれていた。本作は『ファイナルファンタジーVII』(以下、FF7)の7年前を舞台にしていることもあり、シリーズの世界観を読み解くうえでも欠かせないタイトルだ。

 筆者は『CCFF7』をリアルタイムで遊んでいたので、当時を振り返りつつ楽しく進めていたが、『CCFF7R』をクリアしたとき、ひとつの疑問が残った。それは登場人物のひとり、ジェネシス・ラプソードス(以下、ジェネシス)の今後についてだ。

 そこで本稿ではジェネシスのことや、今後のリメイク版 「FF7」シリーズで彼が登場する可能性などを解説したい。

※本稿には、『CCFF7』『CCFF7R』に関するネタバレを含みます。

■『CCFF7』のジェネシスについて

 ジェネシスは、“魔晄都市ミッドガル”を牛耳っている巨大企業神羅カンパニーが抱える「ソルジャー」の一員。ソルジャーには強さに応じて3段階の階級が与えられるが、彼はもっとも上の1stに就いている。これはアンジールやセフィロス、のちのザックスと同じランクだ。外見としては茶髪に深紅のコートが特徴で、“LOVELESS”という本を愛読している。

 アンジールとセフィロスは友人同士なのだが、面倒見のいい兄貴分のアンジール、英雄としてのカリスマをもつセフィロスと比べると、ジェネシスは複雑な立ち位置にいる。”実験の失敗作”という出自をはじめ、とくにセフィロスという圧倒的な存在に対する劣等感などが影響して、物語における彼の言動には、一般人がソルジャーに憧れるような儚さや悲壮感に似たものがつきまとっていた。

 『CCFF7R』の物語の発端となる“ソルジャー大量脱走事件”を引き起こしたのもジェネシスで、首謀者を追うザックスセフィロスとは物語中で何度も衝突する。

 ザックス返り討ちにされたり、セフィロスに対抗意識を燃やして突っかかっても軽く一蹴されたりと、散々な目にあってはいたが、作中で事あるごとに探し求めていた“女神の贈り物”をついに見つけだし、さらに“英雄にバノーラホワイト(作中に出てくるリンゴ)を食べてほしい”という夢も叶えた。不遇ではあったものの、同時に報われたキャラクターとも言える。物語終盤では、バノーラ村を出ていくザックスたちを見送り、その後現れたヴァイスとネロというキャラクターによって、どこかへ連れ去られてしまった。

■『DCFF7』ではヴァイスとネロが本格的に登場

 『CCFF7R』の終盤に少しだけ登場したヴァイスとネロは、『FF7』シリーズの時系列ではもっとも新しい物語を描いたタイトル『ダージュ オブ ケルベロス -ファイナルファンタジーVII-』(以下、DCFF7)の重要人物である。神羅カンパニーの地下施設“ディープグラウンド”の実験で生み出されたソルジャーヴァイスとネロで、ふたりは実験体のなかでもとくに強力な“ツヴィエート”と呼ばれるエリートだ。作中では、本作の主人公であるヴィンセント・バレンタインと激闘をくり広げた。

 ツヴィエートに限らず、ディープグラウンドのソルジャーの誕生にはジェネシスの因子が深く関与している。ジェネシスが彼らを生んだようなものなのだから、ヴァイスやネロたちとは、ある意味血縁ともいえる関係なのかもしれない。

 当のジェネシスは『DCFF7』の物語にほぼ出番はなく、エンディング中に少しだけ出てくる程度。その際、ヴィンセントとの戦いに敗れたヴァイスを抱え、「眠りにつくのはまだ早い。ともに終焉を奏でよう、弟よ」と言い、象徴的な黒い片翼を羽ばたかせヴァイスとともに空へと消えていく。状況を見る限り、“弟”とはヴァイスのことを指しているので、ジェネシス本人もディープグラウンドのことは知っているのだろう。

■『FF7 リメイク インターグレード』にはヴァイスとネロが登場

 2020年に発売された『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』(以下、FF7RIG)では『ファイナルファンタジーVII(以下、FF7)』に登場したユフィ・キサラギが主人公を務め、『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FF7R)の物語を補完するかたちで、クラウドたちとは別視点の戦いを体験できた。そして『FF7RIG』では、ディープグラウンドのソルジャーたちとともに、ヴァイスとネロが登場したのだ。

 厳密に言うとストーリーに深く関わるのはネロのみで、神羅の施設に潜り込んできたユフィと彼女の相棒ソノン・クサカベを迎え撃つため、神羅側がネロを投入するという流れだった。一方ヴァイスはどこかの部屋におり、作中では仮想空間を舞台に、彼の再現データと戦える程度にとどめられていた。

 すでに説明したように、『CCFF7R』以降の物語を描いた作品でディープグラウンドが関わってくるのは『DCFF7』くらいであり、『FF7』に彼らは出てこなかった。とはいえ、オリジナル版と違う展開は『FF7 リメイク』の終盤にもあったものなので、彼らの登場も、その一環なのだと思われる。

 ”原作通りには進まない”という前例ができたからには、今後のリメイク版「FF7」シリーズでは物語の展開が変わるだけでなく、ヴァイスやネロのように、シリーズの垣根を越えてほかのキャラクターが登場する可能性も十分にある。

 また、『FF7』リメイクの第2弾である『ファイナルファンタジーVII リバース』の発売を控えた状態で、『CCFF7R』が出たことも興味深い。『FF7』にも関わりのあるザックスの認知度をより高めるという開発の狙いもありそうだが、のちのシリーズにつながるという点では、ジェネシスも同じである。

 そして、彼と関りが深いディープグラウンドが『FF7R IG』にも出てきた。つまり、『FF7』のリメイクにディープグラウンドが絡んできた以上、その生みの親とも言えるジェネシスの出番があってもおかしくはないだろう。なにより、彼はセフィロスを古くから知る貴重な存在なのだから、このままリメイクの続編で活躍しないのは、シナリオの展開的にも惜しい。

 『ファイナルファンタジーVII リバース』のトレイラーには、クラウドがセフィロスと行動をともにしているシーンなど、気になる場面も描かれていた(『FF7』にもあった、クラウドが過去のニブルヘイムについて語るシーンかもしれないが)。新たな展開がありえる以上、セフィロスジェネシスが邂逅する、そんなシーンを見てみたいものだ。
(夏無内好)

『FINAL FANTASY VII REBIRTH』より