1月16日(金)より始動したDMM×2.5次元の新プロジェクト「2.5次元的世界」第一弾作品として、オリジナルドラマ「ナナシ-第七特別死因処理課-」が配信開始した。2.5次元舞台で活躍する俳優陣が多数出演し、個性豊かな7人の死神たちを描く本作。主人公となるスナオ役を務めるのは、ミュージカルテニスの王子様」3rdシーズンの白石蔵ノ介役や、「機界戦隊ゼンカイジャー」のゾックス・ゴールドツイカー役などで知られる増子敦貴だ。増子にインタビューを行い、本作の見どころや共演者との撮影秘話、2.5次元というジャンルへの思い、映像と舞台の両軸で活躍する俳優として目指すところなどたっぷり聞いた。

【写真】彼氏感…爽やかに手を差し伸べる増子敦貴

■演じるスナオとは「たぶん仲良くなれない(笑)」

──最初にドラマ「ナナシ-第七特別死因処理課-」に出演が決まったと聞いたときはどう感じましたか?

設定自体に興味が湧いて、いち視聴者としても見てみたいなという気持ちでいっぱいでした。脚本を読んでみると、個性あふれるキャラクターばっかりで、シリアスな物語だけど、コメディ要素も入っていて面白そうだなと思いました。

──確かに設定だけ聞いて、シリアスなドラマなのかなと勝手に想像していました。

意外とポップなんですよ。それがこのドラマの良さなのかなと思います。

──増子さんが演じるのは、“エリート死神”のスナオ。このスナオという役を、どのようなキャラクターだと捉えて演じましたか?

任された仕事は何でもこなすエリート。ぱっと見、仕事が早くて自分に厳しくて後輩からの信頼の厚いタイプの人間なんですけど……あ、「人間」じゃなくて、死神ですね(笑)。そんな死神なんですけど、一つ欠けているところがあって。楽しむことを忘れている、真面目すぎて大事なことを見失っている少年なのかなと思っていて。だから、最初は淡々とした死神として演じています。そこからナナシたちに影響を受けて変わっていけばいいなと。

──ご自身とは近い?

いや、だいぶ遠いですね。僕はどちらかと言えばマイペースだし、笑いたい時に笑いたいし、何事も楽しむタイプなので。スナオみたいなキャラとはたぶん仲良くなれないな(笑)。

■「仲良くなるスピードが異常」だった撮影現場

──スナオをはじめ、第七特別死因処理課の死神たちは個性的なキャラクターですが、スナオ以外で、増子さんが好きなキャラクターはいますか?

(相澤莉多演じる)ブコツ(即答)。面白さもあるし、カッコいいし、ブコツから目を離したくなくなります。ブコツはたぶんみんな好きになりますね。

──では、そんな個性的なキャラクターを演じた共演者とは、現場でどのような雰囲気でしたか?

初めましての人もいたんですけど、仲良くなるスピードが異常でした。最初は「主演だからみんなを引っ張らなきゃ」と思っていたんですけど、皆さんが温かくて、やりやすい環境づくりをしてくれて。このメンツで救われたなと思う場面が多くありましたね。

──お芝居の面で特に印象的なやりとりを挙げるなら?

(福澤)侑くんとは、面識はあったのですがお芝居をするのは初めてで。侑くんのお芝居はすごく勉強になりました。目線とか感情の作り方が多彩で、いつもはふわふわした印象の侑くんですが、いっぱい考えてるんだなぁって。あと(田中)涼星くんはこれまで二度舞台で共演していて、そのたびにいろいろ教えてくれた先輩なので、また一緒にできるのはうれしかったですね。やっぱり涼星くんとはお芝居しやすいなとも思いました。

──そのほか撮影中の印象的なエピソードがあれば教えてください。

撮影場所まで毎日みんな同じ車で移動していたんですが、撮影終盤、帰りにビールを飲みたいねという話になり。高速道路サービスエリアで下ろしてもらって、「ダッシュで買ってきます」ってナナシ全員でお店に向かったんです。でも飲み物売り場に行ったらビールがないんですよ。店員さんに「ビールないんですか?」と聞いたら「飲酒運転ダメだから、高速道路には売ってないよ」と言われて。「確かに」ってみんなで落ち込んで帰りました(笑)。7人もいて誰も気付かなかったの?というのも含めて面白かったです。仕方ないので、みんなコーラとかサイダーとかの刺激的なものを買って乾杯しました(笑)。

■今までより監督とディスカッションする場面が多かった

──総合演出はMANKAI STAGE「A3!」、「BANANA FISH」The Stageなどで知られる松崎史也さん、監督は映画「左様なら今晩は」、ドラマ「メンタル強め美女白川さん」(テレビ東京)などを手掛ける高橋名月さんですが、お二方の演出はいかがでしたか?

舞台を多く演出されている松崎さんと、それとは対照的に映像作品を多く手がけ、リアルさを追求していく高橋さんのバランスがすごく良かったんじゃないかなと思っています。現場では高橋さんが監督をしてくださったのですが、今回主演ということもあり、一緒に作っていくなかで、今までの作品よりも監督とディスカッションする場面が多かったんです。そういう意味では楽しかったし、苦しかったし、勉強になりました。

──今までよりディスカッションする場面が多かったとのことですが、それはどうしてですか?

高橋さんが、僕が意見を言いやすいように聞いてくださって。今回は原作のないオリジナル作品だから、僕もこだわっていきたいという気持ちが強かったのもあります。

──先ほどから「主演だから」という発言も飛び出していますが、座長としての意気込みはどのようなものだったのでしょうか?

初めての主演だからという気持ちはそこまで大きくなかったですが、物語を引っ張っていくのはスナオなので、そういう意味で貢献できたらとは思っていて。

──スナオとして、引っ張っていく姿勢が必要だったと。

はい。自分が出演している作品すべてに言えることですが、いろんな人に楽しんでもらいたいと思っているので、その部分で、スナオとして物語を引っ張っていけたらと思っていました。

──改めて「ナナシ-第七特別死因処理課-」の見どころを教えてください。

皆さんが思っている10倍、いい話なんですよ。キャラクターには一人一人個性があるし、展開も早くて見やすい。終わり方も綺麗なので、スッキリするし心に残ると思います。笑って感動できる作品です。

2.5次元作品は「自分とキャラクターがマッチした瞬間が面白い」

──今回のドラマはDMM TVのオリジナル番組「2.5次元的世界」の第一弾作品となりますが、「2.5次元的世界」の第一弾作品ということで特に意識したことはありますか?

第一弾だからこそたくさんの方に見てもらいたいし、一人でも多くの方の心に残ってくれたらうれしいですね。スナオ風に言うと……いい成績を残したい。

──増子さんの思う2.5次元作品の面白さや魅力はどのようなところでしょうか?

あれほどすごいエンタテインメントはないなと思います。見ている側からすると、好きなキャラクターが目の前に出てくるわけですから。コンテンツとして僕は大好きで、素晴らしいものだなと思っています。それに、演じる役者さんたちもすごい。実際、とても厳しいものじゃないですか。キャラクターと合っていなかったらファンの方に「合ってない」と言われてしまうので。そのぶん忠実さも求められますし。でも逆に、2.5次元舞台で、そのキャラクターを好きになってもらえる可能性もある。だからこそ、僕もテニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)に出たときはすごく緊張しました。

──そんな中で、演じる側として2.5次元作品の面白さはどこに感じますか?

自分とそのキャラクターがマッチしたときが面白いですね。公演数を重ねることで、逆に役のことをわからなくなっていくというか、どんどん自分に近づいていってしまうこともあるのですが、それがまたキャラクターと近づいていって、完成される瞬間というのが絶対にあるんですよ。僕はテニミュ白石蔵ノ介という役を演じたのですが、「自分がこう思って動いたことが、白石のやり方だった」みたいなことが起こるんです。その瞬間に面白さを感じます。あとは現実世界では絶対にありえないことができるのも2.5次元の面白さ。テニミュでいったら、あの光が本当にテニスボールに見えましたもん。作品の世界に実際に入って、その役として生きられることが楽しいです。

■芝居の難しさを感じた1年、役の振り幅をもっと増やしたい

──2022年は「機界戦隊ゼンカイジャー」(テレビ朝日系)、「合コンに行ったら女がいなかった話」(カンテレほか)、ミュージカル「東京ラブストーリー」と俳優としての活躍が目覚ましかったですが、この1年で俳優として学んだことはありましたか?

経験を重ねるたびに思うのですが、芝居に正解がないということに難しさを覚えた1年でした。難しさにぶち当たって考えることも役者の仕事なんだろうなとも思いますけど。

──難しさを感じる中でも、俳優業を続けている理由は何なのでしょうか?

やっぱり、それが楽しいんですよね。稽古とか撮影とか、お芝居の空間やお芝居をしている時間が好きなので。緊張もするし、うまくいかないことも多いんですけど、楽しいなと感じているので全然苦じゃないんですよ。やればやるほど振り幅も多くなっていくでしょうし。好きだから続けられているんだと思います。

──では最後に、俳優としての今後の目標を教えてください。

役の振り幅をもっと増やしたいです。“今の年齢だからこれができてこれができない”みたいなのものも取り除けるような、何でもできる役者になりたいなと思っています。何よりも見ている人が共感できるお芝居ができる役者になりたい。リアルさを追求するべきなのか、ファンタジーさがあったのほうがいいのか。今はまだそこがわからなくなってしまうことが多いのですが、全部に対応できる、映像でも舞台でもどちらでも評価されるような役者になりたいです。

■取材・文/小林千絵

撮影/友野雄

「ナナシ-第七特別死因処理課-」で主演を務める増子敦貴/撮影=友野雄