エルザ自然保護の会」など国内の3つの動物保護団体が8月18日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開き、狭い入り江にイルカを追い込んで捕獲する「追い込み漁」は残酷な方法だとして、そのような漁法を中止すべきだと訴えた。エルザ自然保護の会の辺見栄氏は、和歌山県太地町でおこなわれている追い込み漁について、「湾内に追い込むことがイルカにとって大きなストレスになる」と強調した。

太地町イルカ追い込み漁は、米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」がきっかけとなって、世界的に注目が集まっている。水面を叩いて大きな音を出し、イルカの群れを入江や湾に追い込んでいく漁法で、海外の動物保護団体などから非難の声があがっている。

今年1月には、キャロラインケネディ米駐日大使がツイッターに「米国政府はイルカ追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」と投稿して、話題になっていた。

太地町追い込み漁は「文化」「伝統」ではない?

イルカ追い込み漁への批判に対しては、「数百年続いてきた日本の文化、伝統だ」と反発する意見がある。しかし辺見氏は、太地町については、この認識があてはまらないと主張する。

辺見氏は、太地町の歴史が記された「太地町史」という本の記述を根拠にする。「太地町史」では、イルカ追い込み漁が本格的に始まったのが1969年と記されているという。1930年代1940年代にも追い込み漁はあったが、今のように大規模なものではなかったのだそうだ。

太地町1970年イルカ40頭を水族館に売り、ビジネスが始まった。日本の文化や伝統ではなくて、利益を目的としたビジネスだ」と批判する。

●「追い込み漁で捕獲されたイルカの売買が黙認されている」

エルザ自然保護の会によると、動物の福祉を掲げる「世界動物園水族館協会」(WAZA)は10年前から、追い込み漁で捕らえたイルカを水族館が買い取って飼育することを禁じる「倫理規範」を設けている。しかし、WAZAに加盟する「日本動物園水族館協会」(JAZA)は、国内の水族館が追い込み漁で捕まえたイルカを購入することを黙認している状態だという。

エルザ自然保護の会などの動物保護団体は、WAZAの「倫理規範」を守らせることができないならば、JAZAを除名するようWAZAに求めている。しかし、今月10日に開かれたWAZAとJAZA、エルザ自然保護の会などの合同会議で議題としたが、WAZAはJAZAの除名に積極的ではないという。

辺見氏は会見で、「WAZAがあいまいな基準で追い込み漁を認めることは、結果的に野生動物を絶滅させることになる」と苦言を呈した。

(弁護士ドットコム トピックス)

和歌山県太地町「イルカの追い込み漁」は「残酷な方法」 日本の動物保護団体が批判